架空の後宮を舞台に描かれる中華風ミステリー「薬屋のひとりごと」。
後宮内で最も格式が高い四人の上級妃の内、楼蘭妃は阿多妃と入れ替わりで入ってきた淑妃ですが、登場時点では楼蘭妃は謎が多い人物として描かれていました。
しかし、壬氏の正体に迫る「狩り」から「子一族」の謀反の問題で楼蘭妃の正体とその目的が発覚しることに。
今回は淑妃・楼蘭妃の正体・目的・最期についてご紹介したいと思います
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楼蘭(ロウラン)妃とは
引用元:原作・日向夏 / 作画・倉田三ノ路『薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜』 出版:小学館
楼蘭(ロウラン)妃は、阿多が後宮を去った後釜の新しい淑妃。先帝の母である女帝の寵愛を受けた名門「子」一族の当主・子昌の娘であり、高官の父親のごり押しで後宮入りしました。
年齢は猫猫と同じ18歳。
顔立ちは北寄り出身であるものの、眦を強調する濃い化粧を施しているため元の目の形を判断することは難しく、簪まで南国調で揃えた服は妃の中でも浮いています。一見して他の妃のような艶やかさや絢爛さはなく、何を考えているのか分からないのが特徴。
しかし、楼蘭妃が無口で容姿を着飾り似たような顔立ちと体型の侍女を囲っていたのには大きな理由がありました。
楼蘭(ロウラン)妃の正体
楼蘭の正体は小蘭と猫猫と親しくなった尚服の女官・子翠(シスイ)。
薬草のことになると目がない猫猫に対し楼蘭は大の虫好きであることからある種猫猫とは似た者同士。本来の楼蘭=子翠は笑いながら虫を捕まえて研究したり、年相応に仲の良い友達と笑顔で話す普通の少女のようでした。
尚服でありながら子翠が神出鬼没なのは普段は楼蘭として過ごしているためであり、下女でありながら貴重な紙の帳面を使い絵を描いて字も読めるなど高等な教育を修めている節があるのはその正体が名門「子」一族の娘の楼蘭であるため。
楼蘭や侍女たちの恰好が普段から派手で、楼蘭が主上が通うたびに化粧や衣装を変えていたのは子翠として動き回る際に侍女と入れ替わっても不振に思われないためです。
楼蘭の出自
楼蘭の父親は名門「子」一族の当主・子昌ですが、子昌自身は入り婿。子昌は元は子一族の傍流に過ぎなかったものの才覚を見込まれて本家の養子に入り、翠苓の母と結婚し翠苓が誕生しました。
楼蘭の母親である神美(シャンメイ)は「子」一族本家出身の娘で先帝の代に後宮に召し上げられた人物ですが、後に下賜という形で「子」一族当主となった子昌のもとに戻ってきた後妻になります。したがって、楼蘭は子昌と神美の一人娘にあたり、翠苓とは異母姉妹(翠苓が姉、楼蘭が妹)になります。
しかし、楼蘭が生まれる以前、神美が後宮から戻ってきた時点ですでに翠苓とその母親がいたため、神美は翠苓と母親を屋敷から追い出し使用人としてこき使い、やがていじめぬかれた母親は死亡。神美は母親を死なせただけには留まらず、翠苓の名前に一族の文字が入っていることを嫌い翠苓から本当の名前を奪います。
翠苓の本当の名前は「子翠」。翠苓の祖母は先帝の最初の犠牲者で死んだ子どもと引き離された女官・大宝であり、大宝の娘が後に子昌と結婚し子翠=翠苓を産みました。
つまり、楼蘭が下女としての偽名に名乗っていた「子翠」という名前は翠苓が神美に取り上げられた本当の名前。同じ父親を持ちながら楼蘭は蝶よ花よと育てられ後宮の妃として献上され、翠苓は後宮に入り込み暗躍する役割を与えられていますが、何れも神美の指示になります。
一方で、翠苓は神美によって虐げられる立場に追いやられていましたが、楼蘭自身は翠苓のことを本当の姉のように慕っていました。
楼蘭は物心つく頃には神美に紅やおしろいを塗られ人形のように育てられていましたが、10歳になって異母姉の存在を知ると、楼蘭は子翠と仲良くなりたいがために何度も下女の姿で会いに行きます。しかし、神美に見つかったところ、神美は化粧を落とした娘に気づかず実娘の楼蘭を下働きとしてこき使い、失敗すれば団扇で叩き折檻しました。楼蘭がマッサージを得意とするのも、神美に下働きさせられた時に折檻を受けながら必死に覚えた賜物であり、神美は下女姿の楼蘭を娘と気づくことはありませんでした。
元々、下賜された神美が子昌と結婚した理由は王母の血が流れる子供を作りたかっただけであり、神美は楼蘭を新しい王母にするつもりでした。
楼蘭(ロウラン)の本当の目的
楼蘭は、茘の国を恨む神美の復讐の道具として後宮入りさせられており、国の崩壊を望む神美のコマとして動いていました。
しかし、本当の目的は腐敗した子一族の排除。
元々、子昌の目的がこの国の腐敗(宮廷内に巣食う膿)を一手に集める必要悪として存在し時期を見て一族郎党討伐されるという敵役を務めることであったため、楼蘭は神美に虐げられていた翠苓と腐敗に関係ない子一族の子供を救うために子昌の計画に乗っかり悪役を演じることにしました。
そして、事を起こす時期が訪れると自身の計画を実行するべく神美に従うフリをしながら猫猫を人質にして後宮から逃走。
その後、猫猫の行方不明を経て、子翠および天(ティエン)という下女や宦官が存在しないことが発覚したため、壬氏は調査の末に楼蘭と子昌の謀反に辿り着きます。
後宮からの逃走は極刑となる重罪であり、それが上級妃であればより深刻な状況に置かれます。また、子一族が数年前から新型の飛発を生産しており、飛発を用いた壬氏の暗殺未遂を企てたなどの謀反の証拠が出揃ったため、壬氏は羅漢の後押しを受けると皇族として国に対する反逆の罪で子昌を討つべく皇帝直轄の軍・禁軍を指揮し子一族の討伐に出撃しました。
子翠の怪談の元ネタ
以前、怪談回で子翠が話した「遠い東の国である僧侶の身に起こった」とされる怪談。
あれは皇太后安氏が登場した際、子翠が後宮で捕まえていた鈴虫が元ネタであり、作中でも東方の島国に生息する羽を震わせて音を出す虫であると子翠が説明しています。鈴虫については翠苓の薬師の師匠が残した書の中に詳しく書かれており、「音色が美しく籠に入れて飼うが秋になるとメスが子を産むため雄を食べ共食いをする」と説明されています。
怪談回に子翠が鈴虫を題材に話をした理由は自身のことを話していただけであり、籠は後宮、雌雄の虫は皇帝と妃を当てはめ、子翠は自分が皇帝の子を孕んだ場合の神美の動きを危惧して堕胎剤を常備していました。
猫猫を連れてきた理由
楼蘭が翠苓と共謀しわざわざ猫猫を連れてきた理由は、響迂を含めた子一族の子供たちを「蘇りの薬」で一度仮死状態にした後生き返らせる役割を頼むためです。
神美の謀略によって子一族は反逆の罪で一族郎党皆殺しにされるのが定例ですが、楼蘭は子一族討伐にやってきた壬氏と「一度死んだ者は見逃す」という約束を交わすことで翠苓と子供たちの命だけは救おうと画策していました。
つまり、翠苓が後宮で死を偽装したように「蘇りの薬」を使って一度死を偽装し蘇るという手法を子供たちに施し、子一族の問題が落ち着いた頃に蘇生を試みようと考えており、そのためには利口な薬師が必要だったという理由で、最も信頼し技術も申し分のない猫猫に頼ったというわけです。
また、猫猫について調査する過程でその生い立ちが翠苓に似ていたのも楼蘭が猫猫を気に入った理由の一つでした。
楼蘭(ロウラン)の最後と死亡
壬氏が禁軍を率いて行軍する最中、楼蘭は動き出します。
楼蘭は壬氏が行軍する最中、子一族の砦に火をつけると関係のないものを逃がし、計画通り子供たちに「蘇りの薬」を飲ませ仮死状態に。すると、砦に連れてきた猫猫と遭遇すると猫猫に「後は頼むね」と特に説明もせずに子供たちを託し、自身は役割を果たすために神美のところへ向かおうとします。
その際、猫猫は願掛けとして壬氏に頂いた簪を楼蘭に預けると、楼蘭は簪を襟に取り付けます。
猫猫と別れた楼蘭は、神美の部屋で折檻を受けていた翠苓を解放。同じく対峙した子昌に向けて「最後くらい責任を持ってください」と煽ると、子昌の代わりに神美を見届ける約束を交わし、子昌には狐の里の狸として最後まで帝国を化かす責任を取れと鼓舞します。
そして、子一族の砦に壬氏と禁軍が到着すると、壬氏の隊が子昌を討伐。壬氏は神美の部屋に辿り着くと隠し通路を発見し侵入しますが、中に潜んでいた楼蘭に飛発を突きつけられてある場所に連れていかれます。
壬氏が連れて行かれた別の部屋には翠苓と神美がおり、楼蘭は神美と壬氏に向けて子一族の罪と女帝や先帝との取引の秘密を打ち明けるのでした。
神美下賜の真相、翠苓の母親の正体の暴露
一般的に子昌が女帝に取り入って気に入られたと壬氏や後宮の者は理解していますが、後宮が拡大した理由は子昌が女帝を唆したわけではなく、子昌が奴隷交易に代わる事業として後宮の拡大を提言したというのが真相でした。
当時、国内に限った奴隷制は健在だったものの子一族当主(楼蘭の祖父にあたる人物)が奴隷交易を行い他国へ奴婢を輸出していたため女帝に目をつけられてしまいます。神美が後宮に召し上げられたのは子一族の監視と人質の意味があり、娘を人質に取られた子一族は奴隷交易を縮小せざるをえなくなりました。
しかし、それでも奴隷流出がなくならなかったため子昌はその流出場所として後宮を示し拡大を提言。娘を売る親たちの罪悪感も、売られた娘たち自身も後宮女官としての働き口と二年間の奉公期間に技術や教育が身につけば奴隷に落ちる可能性が減ると考え、子昌が提言した策は女帝の思惑とも一致したため了承されます。
また、翠苓の母親──すなわち先帝が後宮から追い出した赤子を子昌が匿っていたこと、赤子が育ち適齢期になった頃に子昌が家督を継ぐと先帝自ら娘を娶って欲しいと頼んだこと、先帝にとって信頼できる理想の婿である子昌が子一族の家督を継いだため神美を後宮に置いておく必要がなくなったため下賜したというのが神美の後宮入りと下賜の真相でした。
こうして神美は自分が先帝のお手付きにならずに下賜された理由と、今まで妾の子として虐めていた翠苓の血筋およびその母親の出自を知ることになりました。
神美の最後
下賜された神美は先帝に虚仮にされた恨みから性格が豹変したと言われています。
一族に戻った神美は自身が気に入った者ばかりを集め、提言する者を一族から追い出すと、一族内には賄賂や横領を繰り返す愚か者ばかりが残り、神美にごまをする者だけが残留。そのため、当主である子昌は無視されてしまい、現在の子一族は甘言にのる阿呆ばかりの烏合の衆──膿の溜まり場になっていました。
しかし、今回の討伐によって子一族の腐敗者たちは皆殺しになり宮廷内の膿が一掃されたわけです。楼蘭の説明によって、壬氏は子昌がこの国の腐敗を一手に集める必要悪として存在し最後まで悪役を演じて討たれたと気付くことになります。
また、壬氏が今回の計画にうまくいく確証があったのかと楼蘭に訊ねれば、楼蘭は仮に失敗しても国を取るだけであり、それで傾く程度の国であれば滅んでも構わなかったと打ち明けます。
子昌と楼蘭の画策を聞かされた神美は二人に騙されていた怒りから楼蘭に飛び掛かり頬に傷をつけます。しかし、楼蘭は冷静に神美が握っていた飛発に注視。そして、神美に飛発を手放すように促しながらも、わざと神美を嘲るように笑い挑発すると神美は発砲。その瞬間、神美は飛発の暴発と金属片の被弾により重傷を負ってしまいます。これも楼蘭が事前に仕組んでいた細工によるもので、楼蘭は子昌の願いに反して神美を始末する腹積もりでした。
楼蘭は重傷を負った神美を寝かせて手を握ると子昌の死に対し涙の一つくらいは零して欲しいと述べると、先帝に娘を頼まれるまでは妾の一人も囲わず後宮に入れられた神美を待ち続けていた子昌を思います。
この時点では神美は死亡していませんが、会話もできずに絶命を待つ状態です。
楼蘭の頼み事
子昌と神美の最期を見届けることになった壬氏に対し、楼蘭は二つ頼みごとをします。
一つは、子一族の一部の人間の助命。
子一族の中でもまともな人間はすでに名を捨てて砦から去っており、翠苓もまた同じ境遇であることから「一度死んだものとみて見逃して欲しい」という嘆願でした。
もう一つは、壬氏の頬に傷をつけること。
楼蘭は神美のネイルキャップを自分の指につけると壬氏の頬に突き刺し皮膚と肉を削り取りました。この行為は、神美にとって憎い顔を傷つけるという楼蘭ができる精一杯の孝行でした。
楼蘭の死亡
楼蘭が壬氏の頬に傷をつけたのは母親である神美への精一杯の孝行ですが、一方で楼蘭が子昌のように「悪役」を演じ切る覚悟の現れでもありました。そのため、壬氏は自分がいないことに気づき近くまで探しにやってきていた馬閃たちの存在に気づきながらも、楼蘭の覚悟を汲み取って二つ目の願いを聞き入れていました。
楼蘭は壬氏の頬に傷を付けた後、馬閃たちが乗り込むと、楼蘭は馬閃たちとは反対側の部屋の扉を解放。そこは雪が降る砦の屋上に通じており、楼蘭は粉雪を浴びながら袖を振るい舞いを披露。馬閃たちの視線が自分に注目したのを確認した楼蘭は、途端自分の指につけたネイルキャップを掲げて高笑いします。
楼蘭の奇行を前に馬閃たちは彼女の爪についた血痕と壬氏の頬の傷を見比べると、楼蘭が壬氏に何をしたか一目瞭然。高笑いをする楼蘭に対し怒りを向けると、一斉に飛発を発砲します。楼蘭は高笑いを上げ舞いながら軽やかに雪の上を移動しますが、やがて一発の弾が胸に命中し動きが止まると、苦痛の表情を浮かべます。
しかし、馬閃たちが拘束に動こうとした刹那、楼蘭は屋上から倒れ込むように屋上から落下するのでした。
壬氏は楼蘭に託された書を握りながらも、動くことができませんでした。目の前に広がる光景が楼蘭の舞台であると確信しており、楼蘭が主役の舞台で、自分たちは脇役。後宮と国という舞台でそれを翻弄する一人の悪女というのが楼蘭の役割であり、世紀の悪女になろうとする楼蘭の一世一代の舞台を壬氏は壊すことも目を逸らすこともできなかったのです。
そのため、楼蘭の舞台は飛発を受けて屋上から落下するという結末を迎えるとともに、壬氏たちが屋上から転落する楼蘭の最期を見届けるという幕引きとなりました。
楼蘭は最後まで父親とともに国の転覆を企んだ「悪役」を演じて人生を全うしました。
楼蘭(ロウラン)のその後
壬氏は、子昌・神美・楼蘭の最期を見届けた後、後発部隊と合流。
また、子一族の子供の死体が安置された馬車内にて猫猫と再会すると楼蘭のことに言及。互いに楼蘭については「よく分からない人のまま終わってしまった」という印象を吐露することになり、猫猫も壬氏の反応から楼蘭が死んでしまったことを悟ります。
そんな中、子供たちの蘇生が始まると猫猫は楼蘭に頼まれた役割を果たすために子供たちの蘇生措置を開始。一方で、壬氏は楼蘭の最期の頼み事として「一度死んだ者」を助けるという願いを聞き入れたことを思い出し、その真意を理解して狐につままれたようだと笑い明かすのでした。
こうして楼蘭の目論見通り、猫猫は「蘇りの薬」で一度死んで蘇った子供たちの蘇生措置をすることになり、壬氏は楼蘭との約束通り一度死んだ者として子の一族の一部の人命を匿い助けることになったのです。
また、翠苓も先帝の血を引いているという事実から無下に扱うことができず、情状酌量の余地となり監視付きであるものの命を取られる罰は下されずに生存。蘇りの薬で蘇った五人の子供の内四人と翠苓は阿多の下で育てられることになりました。
なお、五人の子供の一人である趙迂は記憶喪失ということもあり猫猫が花街で面倒を見ています。
小蘭の手紙、猫猫の涙
子一族討伐後、壬氏は宦官でなくなり、宮廷には羅門を筆頭とした優秀な医官がいるという理由から猫猫が宮廷に留まる理由もなくなったため、猫猫は花街に戻りました。
そんな中、赤羽が小蘭からの手紙を渡しにやってきます。
赤羽曰く、表向き猫猫と子翠は引き抜かれて後宮を出たという扱いになっているらしく、小蘭は別れの挨拶ができずに落ち込んでいたとのこと。赤羽から渡された小蘭の手紙は猫猫宛と子翠宛の二通であり、猫猫は自分宛の手紙に目を通します。
拙い文で精一杯に自分の現状を伝える小蘭の文字を読み進めると、最後には『いつかまたあいたいな。また氷菓食べたいよ』と小蘭の気持ちが綴られていました。猫猫は子翠宛の手紙に目を通していませんがおそらく子翠宛の手紙にも最後に同じことが書かれているのだろうと容易に想像します。しかし、その途端、猫猫は涙を零して紙面を濡らすことに。
猫猫にとって楼蘭──子翠は少なくとも友人に等しい存在でした。そのため、砦で壬氏の頬の傷を見た際にそれが楼蘭の頼みであったことを聞いた猫猫は楼蘭の死を悟りぽっかりと気持ちに穴が開いた状態でしたが、小蘭の手紙が楽しかった後宮での日常を回想させるきっかけとなり堰を切る一押しとなったようです。
一方で、砦での掃討戦の際、楼蘭は撃たれて屋上から落下しましたが、その後に下に降りて雪をかき分けて遺体を捜索したところ楼蘭の死体は見つかりませんでした。そのため、楼蘭の遺体捜索は雪が解ける春ごろに再開することになったそうですが、猫猫は楼蘭の死体が見つからなければいいと思っています。
また、小蘭は下級妃の一人に気に入られて下級妃の実家の妹の下女という働き先を紹介してもらったらしく、奉公期間明けは後宮を出ています。そのため、子一族謀反と掃討戦の一件で、猫猫と小蘭と子翠(楼蘭)は別れの挨拶もできずに離れ離れになってしまったのです。
謎の娘・玉藻
子一族の謀反があった年の年明け、とある港町に一人の娘がいました。
娘は露店に並ぶ玉製の蝉の装飾を手に取ると手持ちの簪との物々交換を願います。露店商の店主が簪を確かめると、精巧で美しい細工とは裏腹に簪の平べったい飾り部分に穿ったような──何か丸いものが埋め込まれたような形の跡があることに気づきます。
しかし、例え傷があっても簪自体は上等品であるため店主は物々交換に承諾。娘は玉の蝉を頂戴し太陽に照らして笑みを浮かべます。
店主は娘の顔立ちをよく確かめるとその美貌なら宮廷に入って贅沢できるだろうにと会話を始めると、現在の寵妃である玉葉妃の名前が話題に。すると、娘は玉葉妃の名前を反復すると、たまたま漁師が網についた魚と海藻を選り分けている様子が目に留まり「私の名前ね、玉藻(たまも)っていうんだよ」と自身の名前を名乗ります。
店主はまるで海の寵愛でも受けそうな名前だと褒めると、玉藻は店主の言葉から着想を得たのか海の向こう側に興味を示し、遠い島国からやってきた停泊中の船を見てにやりとします。そして、店主に輝くような笑顔で別れの挨拶を交わすと、元気よく港の方へと走っていくのでした。
楼蘭の生存
小説版では玉藻と名乗る娘の容姿は確認できませんが、漫画版では露店の店主と別れる際に楼蘭が下女に扮する子翠の姿が描かれています。
楼蘭は飛発に胸を撃たれて砦の屋上から落ちて死亡した──と壬氏や猫猫も思っていますが、玉藻が物々交換で差し出した簪の傷痕から、どうやら楼蘭を捉えたはずの弾を簪が受けたため助かったようです。また、屋上から落ちたものの、積雪が緩衝材となって一命をとりとめたと考えられます。
こうして子一族編のラストで楼蘭の生存が確定しましたが、悪役を演じ切った楼蘭は新たに「玉藻」と名前を変えて遠い島国へ旅立ったようです。そのため、楼蘭の再登場はほぼ期待できません。
なお、後宮で氷菓を作ることになった際、壬氏は氷菓の材料を揃える条件として猫猫に簪をつけるよう約束させますが、猫猫が楼蘭に貸し、楼蘭が店主に売ったため保留になりました。いつか巡り巡って猫猫の下に戻って来るのかは不明です。
まとめ
・ 猫猫を後宮から連れてきた理由は、子一族の子供たちを「蘇りの薬」で一度仮死状態にした後生き返らせる役割を頼むため
謎の上級妃・楼蘭は猫猫と小蘭と仲の良い下女の子翠であり、翠苓とは異母姉妹でした。
今回、楼蘭は腐敗した子一族の一掃と翠苓や無関係の子供たちを解放するために子昌の計画に乗っかり実母と一族を壬氏に討たせ、自身は「悪役」として舞台から退場する道を選び演じていましたが、猫猫が願掛けに預けた簪のおかげで一命をとりとめたようです。
楼蘭の生存は嬉しくもありますが、猫猫・小蘭・子翠の仲良し三人組が別れの挨拶も交わせずに離れ離れになってしまったのは切ないですね。いつかどこかで再会、あるいは互いの生存が分かる程度の救いがあるといいですが、楼蘭が茘を出た以上は期待できそうにありません。
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薬屋のひとりごと
漫画:ねこクラゲ
原作:日向夏 キャラクター原案:しのとうこ 出版社:スクウェア・エニックス 掲載誌:月刊ビッグガンガン |
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薬屋のひとりごと〜猫猫の後宮謎解き手帳〜
漫画:倉田三ノ路
原作:日向夏 キャラクター原案:しのとうこ 出版社:小学館 掲載誌:月刊サンデーGX |
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薬屋のひとりごと《ライトノベル》
作者 :日向夏
イラスト:しのとうこ 出版社 :主婦の友社 レーベル:ヒーロー文庫 |
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