【薬屋のひとりごと】猫猫の両親の正体とは?羅漢と鳳仙の関係と身請けの結末|鳳仙の死亡と羅漢のその後

囲碁をする羅漢と鳳仙 薬屋のひとりごと

漫画『薬屋のひとりごと』の主人公・猫猫。

猫猫の父と母については羅漢初登場から中祀編・鳳仙花と片喰編でようやく判明しますが、羅漢と鳳仙とはどのような人物で、猫猫はどういった経緯で生まれたのでしょうか。

今回は猫猫の両親・羅漢と鳳仙についてご紹介したいと思います。

この記事で紹介する内容は?

  1. 猫猫の両親の正体
  2. 漢羅漢について
  3. 鳳仙について
  4. 羅漢と鳳仙の関係と身請けの結末について
  5. 猫猫と両親の関係について
  6. 鳳仙の死亡について
  7. 羅漢のその後について
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猫猫の両親の正体

猫猫の両親は羅漢初登場から中祀編・鳳仙花と片喰編で描かれた通り、

  • 父親は軍師と名高い大尉・漢羅漢(カン・ラカン)
  • 母親は緑青館の妓女・鳳仙(フォンシェン)

です。

軍師『羅漢(らかん)』とは?

漢羅漢

引用元:原作・日向夏 / 作画・ねこクラゲ『薬屋のひとりごと』 出版:スクウェア・エニックス

※声優:桐本拓哉

羅漢は、茘の国の軍部の最高幹部にあたる高官で位は大尉。片眼鏡を付けた狐目の軍師、または変人軍師と呼ばれています。

彼の放つ言葉が難しい、暇になると周囲にちょっかいをかける、仕事をさぼるなどの所作から奇抜な変人として奇異の目でみられており、仮に羅漢を敵に回すとこちらが何かする前にやられてしまうという理由から宮中ではどの派閥からも避けられる(厳密には関わりたくない、嫌われている)立場。

その異常性は皇帝直々に敵に回したくないと言われるほど。

羅漢は昔から人の顔の区別がつかず母と乳母を間違えるどころか男女の区別すら分からなかったことから、出世を望めないという理由で父にも見限られていました。

しかし、叔父だけは根気強く接してくれたようで、人の顔が区別できなくとも人を体格や声で見分けること、そして将棋に見立てて覚えることを教えたのです。

叔父の教えと名家の長子という立場、そして将棋が得意なことが幸いし羅漢はそのまま出世していきましたが、大人になったある時『緑青館という妓楼に囲碁将棋の得意な妓女がいる』という話を持ち掛けられました。

妓楼に興味の無かった羅漢はその妓女を酔っ払い相手に勝つだけの井の中の蛙と侮って勝負してみることにしましたが、結果は囲碁で完敗

ただ、聡明な羅漢は自分の侮りに妓女が気付いていたことを悟り「負けたのなんて何年ぶりだか……」と腹を抱えて笑うと、不意に容赦なく鼻っ柱を折ってきた妓女がどんな顔をしているのか気になり顔を上げました。

これまで人の顔が区別できなかった羅漢の目の前の妓女の顔が鮮明に映り込むと、まるで人を寄せ付けない鳳仙花の実のように触れたら弾けそうな眼を見て「──人とはこういう顔をしているのか」と羅漢は釘付けになったのです。

思わず狼狽しつつも名前を訊ねると妓女は『──鳳仙(ふぉんしぇん)』と答えました。

羅漢はとある妓女の価値を下げた

羅漢は壬氏との話の中でとある妓女の話をしており、その際にその妓女の価値を下げるために汚い手を使ったと述べています。

羅漢はその妓女をいつか押し倒して我が物にしたいと思っていたものの、彼女を好む物好き連中が値を吊り上げたため、おいそれと手が出せなくなった──そのため、羅漢はは希少価値を下げる行為を行ったのです。

また、猫猫曰くどこぞの女を口説くために青い色水を白薔薇に吸わせて青い薔薇を育てたという男はおそらく羅漢。

妓女の希少価値を下げる方法

妓女は見た目が良く芸の立つ者は簡単に身を売らせません。また、純潔な花ほど価値が上がります。

そういった妓女の希少価値を下げるには、

  1. 花を手折る
  2. 子を孕ませる

などの方法があり、花を手折れば価値は半減、妊娠すれば価値が無いに等しくなるのです。

妓女『鳳仙(ふぉんしぇん)』とは?

鳳仙

引用元:原作・日向夏 / 作画・ねこクラゲ『薬屋のひとりごと』 出版:スクウェア・エニックス

鳳仙(ふぉんしぇん)は妓楼で生まれた妓女の誇りだけを固めた女と言われています。花街で妓女は母にはなれないと言われており、鳳仙は自身の母のことを聞かれると「母はいません。私を産んだ女ならおります」と回答するほど。

物語開始時点ではすでに病床に伏しており、緑青館の敷地内の離れ(病人部屋)に隔離されています。

彼女は梅毒に罹っており、症状の進行で鼻がなく痩せ細っています。

かつては猫猫を毛嫌いして看病に訪れた猫猫を追い払っていましたが、ここ数年は言葉を忘れてしまったのか喋る体力もなく、治療法がない状況の中気休めにもならない薬を服用している状態。

過去には緑青館の看板で蝶よ花よと謳われた妓女でしたが、とある事情で数年間客を取り続けた結果不幸にも梅毒をうつされて今に至ります。早期に病状を伝えていれば治療を施すことができたそうですが、当時、元宦官という素性の掴めない男(羅門)を信用する者はおらず、梅毒に罹った者は誰も申告しませんでした。

鳳仙もその一人であり、客を取らねば生きていけないという事情から梅毒に罹ったまま数年後には体に発疹が出始め腫瘍が瞬く間に広がったのです。

本来使い物にならなくなった妓女は追い出されてしまいますが、やり手婆は鳳仙に部屋を与えて隔離していました。

病に伏せ、記憶を忘れ、時折歌を歌い、童女のように碁石を並べる──そんな鳳仙を見て猫猫は『莫迦な女』と独白しています。

羅漢と鳳仙の関係

羅漢は同僚から、

  • 頭がいい変わり者
  • 碁や将棋が得意で芸は売っても身体は売らない
  • 客と接する際はまるで下賤の輩に施しをやるような尊大さを放つ

という緑青館の妓女が話題になっていることを聞き、実際にその妓女と囲碁を打って完敗しました。

しかし、羅漢は初めて人の顔と識別できる鳳仙と出会って以来、数ヵ月に一度羅漢は緑青館を訪れると鳳仙と囲碁将棋を打つようになりました。また、普段は定型の販促の文しか送らない鳳仙が「次はいつ来られますか?」と表情にこそ出さないものの羅漢に興味を抱いていきます。

羅漢は鳳仙に会うために緑青館に足しげく通いますが、才能ある妓女はある程度の人気が出ると売り惜しみされるほか、一部の好事家に受けていた鳳仙は値が吊り上がっていき、次第に当時の羅漢の階級では三月に一度会うのが精一杯でした。

しかし、数ヵ月ぶりに羅漢が緑青館を訪れると鳳仙から身請けの話が来ていることを聞かされます。妓女の身請けには妓女が負っている借金などを肩代わりするだけの額が必要であり、羅漢は異母弟に跡継ぎの座を奪われているため鳳仙の身請け代金を用意するには到底かないません。

そんな中、鳳仙は羅漢に賭けをしないかと誘うと、『羅漢が勝てば好きなものを差し上げる。鳳仙が勝てば好きなものを頂く』という条件を提示し、二人は碁を打つことに。

そして、勝敗は不明ながら二人は勝負の後に行為に及ぶのでした(おそらくどちらの場合も同じ結果)。また、この時両者とも囲碁・将棋を打ちたいという願望を告げています。

その後、叔父が失脚すると父(羅漢の父)は一族に累が及ぶ可能性を危惧し叔父と親しかった羅漢にしばらく遊説するようにと命令。同じ頃、鳳仙から身請け話が破断になったと便りが届きますが、羅漢は半年程度で戻るという内容の文を妓楼に送るのがやっとで、実際に都に戻るまで三年の月日が掛かってしまい、結果的に約三年も音信不通(鳳仙からすれば無視、捨てられたという認識)となってしまったのです。

三年後、都に戻ってきた羅漢は鳳仙からの便りが溜まっていることに気付くと、さすがに三年も経てば鳳仙が身請けされていることを覚悟して文を開きました。

しかし、文には血の跡が滲んでおり、鳳仙の身を心配した羅漢が一緒に届けられた巾着に気付いて開くとそこには鳳仙の指と小さな指が包まれていたのです。羅漢は『ゆびきり』という呪いを想起しました。

鳳仙の便りに目を通した後はすぐに緑青館に足を運びますが、やり手婆に「誰のせいだと思ってんだい、この莫迦野郎」と箒であしらわれてしまいます。また、鳳仙はもう緑青館にはいない、信用を失くした妓女がどうなるか知らないのかと叱責されると、羅漢は自分の浅はかな行いが招いた後悔に泣き崩れるのでした。

この行き違いによって羅漢は17年間鳳仙と会っていません。

羅漢が猫猫の父親と判明したシーン

壬氏が猫猫を侍女に迎えたところ、やけに突っかかってくるようになったのが羅漢でした。

羅漢のせいで壬氏が緑青館から娼婦を身請けしたと軍部で噂になってしまうなど苦労はたえませんが、壬氏は羅漢が緑青館の身請け話から突っかかり昔のとある妓女の話をしたのか、なぜ妓女の希少価値を下げる方法を他人から聞けと促したのかを推察。

また、羅漢がやり手婆を説得するのに十年を費やしたにも関わらず横から掻っ攫われたと述べた際、壬氏が既にその妓女が自分のものと主張すると羅漢は「いくらでも出しましょう。昔と同じ轍は踏みたくないのでね」と発言。更に壬氏が断った場合でも「娘がそれをどう思うかなのですけど」と答えたため、壬氏は羅漢が猫猫の実の父親であるという一つの結論に至ります。

その後、『青い薔薇』を咲かせるという難題を頼まれた一件の後、猫猫は羅漢がやたら壬氏に無理難題を頼んでくるのは自分がいるせいだと感づくと、ようやく羅漢の挑発に乗って直接対決に打って出ました。

その際のゲームが将棋であり、賭け事として羅漢が勝てば『猫猫が羅漢の子になる』、猫猫が勝てば『緑青館の妓女を一人羅漢が身請けする』という約束のもと、壬氏と高順同伴で先に三回勝ったほうが勝者の五回勝負が開始されます。

※特別ルールとして『一回勝負がつくごとに勝者が一つ杯(酒)を選び敗者が飲む』『どんな理由があっても試合放棄したら敗け』

しかし、猫猫が二連敗すると、羅漢は将棋を指している最中にのことを思い出していると、気づけば猫猫に一回負けてしまったのです。

そして、羅漢の不注意で負けたにせよルール通り猫猫は杯を選んで羅漢に手渡すと羅漢は杯を受け取って飲み干しますが、羅漢は急に熱気を覚えると同時に盤上に頭突きする勢いで倒れてしまうのでした。

猫猫が渡した杯はただの酒に呼吸をよくする砂糖と塩を少し足したものでしたが、何と猫猫の口から羅漢が下戸であると告白。そのため、羅漢はたった一杯で倒れてしまったのだとか。

そして、なぜそんなことを知っているのか壬氏は猫猫に訊ねます。問われた猫猫は「こんなんでも一応父親ですから」とあっさりと告げるのでした。

これにより羅漢が猫猫の実の父親だということが確定しました。

羅漢が猫猫を自分の娘と気づいた理由

昔、羅門の追放を受けて羅漢は父の命令で3年間遊説に出かけていますが、その間に鳳仙は羅漢に捨てられたと思い食べていくために無理に客を取り続け病に罹って倒れます。

結果的に羅漢のせいで妓女が台無しにされたため、当時の緑青館の信用は下がりやり手婆も羅漢に鳳仙のことを教えずに叩き返しており、羅漢は鳳仙に二度と会えなくなりました。

しかし、羅漢はやり手婆に殴られて追い返されてもしつこく何度も緑青館を訪れており、根気強く鳳仙との赤ちゃんがいるのでないか訊ねていたのです。もちろん、緑青館で育てられている猫猫に会わせるはずもなく、羅漢は何度もボコボコにされて追い返されます。

そんなある日、同じようにやり手婆にボコボコにされた羅漢は緑青館の近くの植え込みでしゃがんでいる幼女を見かけます。

何となく気になって「…嬢ちゃん、何やってるんだい?」と声を掛けた羅漢ですが、幼女がこちらを見上げた際に左手の小指の先が切断・または歪んでいるのに気づいたのです。

さらに、どういうわけかその幼女の顔が認識できたのです。

咄嗟に「き、君…」と歩み寄る羅漢ですが、直後に幼女を『猫猫マオマオ、おいで』と声をかける男性が出現。

猫猫と呼ばれた幼女が男性に駆け寄っていく様子を見届けながら声を掛けた男性に視線を移す羅漢。しかし、その男性の声は聞き覚えがあり、羅漢は視界に収めた男はかつて後宮を追放された叔父──羅門だと知るのでした。

こうして羅漢はその幼女が自分の娘だと確信すると、例えやり手婆にボコボコにされようとも血塗れになって猫猫に向かって笑顔で自分が父であることを伝え続けたのです。

なお、猫猫視点ではボコボコにされたおっさんが血だらけでニコニコしているのはかなりのトラウマになった模様。

羅漢の感情

羅漢は鳳仙と出会ってからというもの、

  • 他の妃を見ても美しさがよく分からない
  • どれも豪著な服を着た碁石
  • 記憶に残る爪紅はあんなけばけばしい赤じゃない
  • うっすら染まり、その指先に駒を持つ

という感情を抱いており、元々の人の顔の区別がつかないということに加えて、鳳仙の鳳仙花と片喰で染めた爪紅に執着しています。

また、他に唯一顔を区別できる鳳仙との娘を迎え入れるべく、羅漢は猫猫が妓女になれば金で買えるようになると考え緑青館の婆を十年にわたって説得し続けており、それ故に婆はやたらと猫猫を妓女にしたがっていました。

猫猫との将棋勝負の賭け事に『私が勝ったらうちの子になってもらう』と述べ、猫猫がその返しに「その場合猫猫が羅漢のもとにいくのは雇用の年季明けになる」と言っても羅漢が『これまで待ち続けた年数を考えたら大したことじゃない』と発言したのは上述の理由で待ち続けるのには慣れているからです。

羅漢の猫猫へ執着

猫猫は羅漢が絡むと意固地になり、羅漢は猫猫に妙なこだわりを持っています。

羅漢は自分の過ちで鳳仙の希少価値が下がり緑青館を追い出された罪悪感(17年間、羅漢は鳳仙が死んだと思っています)から、猫猫に恨まれても仕方がないと考えていました。

それでも猫猫が自分の娘であると確信すると、駒に囲まれた生活に嫌気をさしていたという思いから残った娘と共にいたいと痛感し、娘である猫猫を傍に置きたい一心で父から家督を奪い異母弟を排斥し甥っ子を養子に取り盤石にしました。

そのため、猫猫との賭け将棋は一緒に暮らす好機と考えていたのです。

猫猫曰く過去には「一緒に暮らしたい」とよく言われていたらしいので、一応父親としての情はあると認識しています。猫猫が羅漢に勝負を持ち掛けたのは、猫猫が三回勝負に負ける前に羅漢が情けでわざと一敗すると踏んでいたからであり、自分に害を与える気が無いと確信していたからでした。

一敗でもしてくれれば下戸の羅漢は瞬く間につぶれてくれるので、後は猫猫の賭けを羅漢に強いることができるという算段です。

ちなみに、羅漢の賭けだった『猫猫が羅漢の子になる』というのは、言葉通り父娘として一緒に暮らそうというもの。

なお、壬氏が猫猫の肩に手をかけた行動に関しては「それにしてもあの男触りすぎじゃないかね」と過保護な一面を見せています。

羅漢は目鼻立ちの違いを認識できませんが、鳳仙と出会う以前は叔父・羅門のことは強い駒として識別できていました。

しかし、鳳仙との間にできた子ども・猫猫の顔も識別できるらしく、それ故にやり手婆に殴られても緑青館に通い続けて猫猫に自分が父だと伝えていました。羅漢が猫猫に執着するのは自分の子どもであると同時に鳳仙と同じ理由でもあります。

羅漢は鳳仙を身請けする

羅漢は猫猫との勝負に敗れたため、猫猫の要望である『緑青館の妓女を一人身請けする』という約束を果たすべく緑青館に赴きます。

やり手婆が妓女の身請けは銀の一千二千では到底足りないと述べると、羅漢は十万はきついが一万や二万くらいなら支払えると話し、やり手婆は羅漢に好きな妓女を選ばせてやると言って緑青館の妓女を集めました。

しかし、人の顔が区別できない羅漢にとってどの妓女でも大した違いはなく、好きな妓女を選べと言われても困惑するだけでした。その対象は緑青館の三姫であっても例外ではありませんでしたが、かつて禿時代に鳳仙に付いていた梅梅は鳳仙と羅漢を一番近くで見守ってきた人物であり、共に囲碁と将棋を指した妹分でもあるため、羅漢は妓女の中から選ぶとすれば梅梅にしようと考えていました。

ですが、羅漢が梅梅に決めようとした直前に梅梅は妓女の矜持として選ばれるならちゃんと見定めてから選んで欲しいという理由で不意に窓を開け放つと、羅漢が聞き馴染みのある歌声が流れ込んでくるのです。

──その歌声は鳳仙がよく口遊んでいたもの。

昔、羅漢はこの歌は彼女を産んだ女性がよく歌っていたものだと鳳仙から聞いており、彼女が唯一持っている『母の記憶』と呼べるものだと覚えていました。

羅漢は歌声に誘われるように窓枠を乗り越えて離れにある建物に駆け出すと、狼狽で小石に躓いて転倒。それでも一秒でも早く歌声の人物を確かめたいと気持ちが逸り、起き上がって扉を開けるのでした。

そこには寝台に上体を起こして歌ってる鳳仙──左薬指が無く、梅毒で鼻が落ち痩せ細った姿──があり、お互いに時間が止まったように視線を交わします。羅漢は涙を流しながら彼女の下へ歩み寄ると、膝から崩れ落ちて嗚咽を漏らすのでした。

そして、追いついたやり手婆が「戻んな、ここは病人部屋だよ!さっさと相手を選んで──」と声を掛けると、羅漢は「この女だ…」と決意。

莫迦言ってんじゃないと怒鳴るやり手婆ですが、直後に羅漢が「誰でもいいと言ったのはアンタだろう」と一蹴すると、やり手婆も言葉が出ません。

羅漢は鳳仙の手を取ると巾着から碁石の山を渡します。記憶がなく、言葉が離せない鳳仙はこれまであまり反応はありませんでしたが、羅漢から碁石の束を渡されるとそれを懐かしむように指で擦り、紅潮。

そして、羅漢は鳳仙の頬に手をやると「私はこの妓女を身請けするよ。金なら十万でも二十万でも出してやる。彼女じゃないなら誰もいらない…」と述べ、鳳仙を抱きしめて泣き崩れるのでした。

宮中では緑青館の秘された花を変わり者の軍師が身請けしたという話題で持ち切りであり、七日七晩宴をするほどの大金で受けだされた妓女がどんな美女か一目見ようと大勢が押し寄せる事態になりました。

猫猫は羅漢と鳳仙を恨んでいない

鳳仙は羅漢が都を3年間離れた際に『ゆびきり』として自分の薬指と猫猫の左小指を切断して羅漢に送り付けたため、当時赤子の猫猫は鳳仙に小指を切断された時の記憶があります。

それは、ざんばらの髪から覗く血走った目の女が自分に覆い被さり刃を向けてきたと認識していたことから鳳仙のことを『化け物』だと思っていました。

また、後宮で羅漢の名前を放った際の猫猫の反応から壬氏は猫猫が羅漢に何かをされて嫌悪していると認識していましたが、猫猫は鳳仙の件に関しては羅漢を恨んでいないどころか、そもそも妓女は避妊薬や胎児薬を飲んでいるので出産という行為は妓女にその意志がないと成り立たないと言い、むしろ謀られたのは羅漢の方であると返しています。

猫猫曰く、鳳仙は身ごもることで羅漢を手にしようとしていたのです。

ただ、当時阿多と皇后の出産の件で羅門が処罰された反動で、親戚である羅漢は父の命令で遊説のために都を離れなければならなくなると、更に不運は重なり3年音信不通に。その不運の重なりが身請け話が破断し羅漢の子を出産した鳳仙の思惑と違い過ぎて、鳳仙は自分を傷つけるほどに我を忘れてしまったと猫猫は語ります。

心が壊れた鳳仙は自分と赤子の切り落とした指を送り付けたわけですが、猫猫はその不運な行き違いだけは理解しています。

そのため、猫猫は羅漢のことは嫌いではあるものの恨んではいませんし、鳳仙に関しても莫迦な女と他人事のように思っていますし、一応看病する程度には関りを続けていました。

猫猫が羅漢のことを嫌いな理由は幼少期に突然やり手婆に殴られて血塗れになりながらヘラヘラと自分が父であると近づいてきたトラウマから生理的に苦手なだけであり、表向きは「あの男に『爸爸パパって呼んで』と言われたら眼鏡をゾッとする」と言う理由で嫌っています。

なお、本当の理由は羅門が羅漢の才能を認めていたため嫉妬しているだけでした。

ちなみに赤子の頃に切断された猫猫の小指は現在伸びていますが、歪んだ形をしています。

鳳仙の死亡と羅漢の疑問

物語開始時点で、鳳仙の梅毒の症状は申告が遅かったということもあり羅門でさえ手の施しようがない状態です。

そのため、羅漢に身請けされたとしても長く持つ保障もない、ましてや羅漢が帰らないという当初の思惑の違いにより鳳仙は病に侵されると心が壊れ記憶もなくただ童女のように歌い碁石を並べることしかできません。

しかし、身請けされた後は羅漢は鳳仙と碁を打って過ごしており、羅漢は鳳仙を頭の切れる妻として各所で自慢。研ぎ澄まされた刃のような筋に碁を打っている間は何度もぞくぞくしたと語っており、鳳仙と打った碁の棋譜を持って上機嫌で語り尽くすほど。壬氏や子昌もドン引き。

ほとんど毎日碁や将棋を打っているため、羅漢は仕事に出かける時は棋譜を持って相手が一手打ったら伝令が屋敷と宮廷を往復して石を並べていたと羅半は語っています。人と人とも思わぬ義父が妓女が来てから恥ずかしいくらいに雰囲気が変わったとのこと。

ですが、やはり猫猫や羅門の見立て通り鳳仙の病の進行具合は末期であったため寿命を迎えて死亡してしまうのです。

猫猫は羅半から鳳仙の死を遠回しに聞かされますが、寿命ということで割り切っています。ただ、花街で過ごすよりは長生きできた最期だろうとどこか達観していました。

一方の羅漢は結局鳳仙を迎え入れてから半月程度仕事を休んで碁や将棋を打っていたそうで、鳳仙が亡くなった際には放心状態で中毒症状のようにぶつぶつとただ鳳仙と打った最期の基盤を見つめて口を動かすのみ。猫猫曰く魂魄が抜けたような姿だったとのこと。

しかし、鳳仙と碁をやっていた際の使いが記録していた紙を頼りに猫猫が途中まで鳳仙の手を再現してやると、そこには鳳仙らしからぬ悪手が浮かび上がり、どうやら羅漢はそれを最初から理解した様子で『鳳仙がこんな失敗をするわけがない』と念仏のように唱えるのです。羅漢がぶつぶつと基盤に向けて呟いていたのは、なぜ負けず嫌いの鳳仙が最期の碁でこのような手を打ったのかわからなかったからであり、猫猫が記録通りに鳳仙の手を再現した後は羅漢がその先を進めながら鳳仙がどんな手を打ちたかったのか分析していきます。

すると羅漢がある一手を境に何かを掴むと結果は黒の一目半勝ちに(つまり、このまま続けていれば鳳仙の勝ち)。

羅漢は鳳仙が悪手をした時点で打ち間違えたのだと考えていましたが、鳳仙が打とうとした手を再現することができて納得するとようやく現実に戻って来たのです。

羅漢には珍しく鳳仙の打ち筋を理解し始めてその場に猫猫がいることに気付くと、「一言だけくれないか?母さんに…」と神妙な顔で述べており、猫猫もこの時ばかりは無視をせずに頭を下げています。

なお、本来妓女を買うとすれば妾にすることを意味しますが、羅漢が漢一族の一件でなぜ羅漢が父の下を訪れたのかという疑問点に関して、羅半は──それは本来親の承諾は必要ないもののそれでも挨拶をしたかったという羅漢のロマンチストな性格ではないか、と読み取っていますが真実は分かりません。ちなみに羅漢は父に幽閉されている間も基盤と向き合いずっとぶつぶつ言っているだけでしたが、問題が解決すると思い出したかのように結婚報告をしています。

その後、羅漢は眠りながら碁の本を作ることを決意しており、猫猫曰くもう少し落ち込むと思っていたが亡霊のような姿はなく前に突き進む変人がそこにいると語っています。

鳳仙は不幸な女性でしたが、最期の期間は羅漢と思う存分囲碁ができて満たされたようですね。

羅漢は碁の本を制作

鳳仙の死後、羅漢は決意した通り作者・漢羅漢として碁の本を作り上げました。なお、猫猫の見解では羅漢が部下に代筆させたとのこと。

手書きの写本ではなく印刷しているため大量生産されているようで、猫猫にも何冊か配布されており、軽く読み進めたところ棋譜を載せて盤面の要所を説明した本格的な出来でした。ただ、初心者よりも碁打ちが楽しめるものである模様。

宮中では羅漢の言葉は解読困難というのが全体の総意ですが、国で一、二を争う囲碁の強者、ましてや将棋では無敗という実績から羅漢が出した譜面は『垂涎の品』として瞬く間に話題となり、碁の本を出した直後はブームを呼びました。

羅漢のギャグキャラ化

鳳仙を身請けし、猫猫がとある事情で女官の試験を受けて薬屋から医官付きの女官として宮廷に戻って来た頃、羅漢の変人ぶりはある意味で限界突破しています。

というのも、猫猫が外廷に来たのをいいことに羅漢は仕事をさぼって常に遠くから猫猫を覗き見しており、医官たちや猫猫の他の女官を監視。しかし、すぐに部下がやってきては引きずられていく変人軍師の様子は日常茶飯事となり、誰もが見て見ぬフリをしていました。

なお、視線に耐えかねた医官が猫猫に羅漢との関りを訊ねても「他人です」の一点張りなので諦めた模様。

そのため、変人軍師は定期的に窓の外から覗いているようで、つねに猫猫に付きまとう性質上、猫猫が仕事で異国人の毒見役につけばもれなく変人軍師が突撃するため外交問題になる恐れが浮上するほどに傍迷惑な存在になりました。

しかし、次第に羅漢の暴走には羅門を連れてくることこそが鎮静剤になると知られていく模様。

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まとめ

  1. 猫猫の父親は軍師と名高い大尉・漢羅漢(カン・ラカン)
  2. 猫猫の母親は緑青館の妓女・鳳仙(フォンシェン)
  3. 漢羅漢は人の顔や男女の区別がわからない変人だが、緑青館で囲碁・将棋がめっぽう強いという噂の妓女・鳳仙と対局し囲碁で初めて完敗したのをきっかけに初めて人の顔を見ることができた
  4. 羅漢は定期的に緑青館に通って鳳仙と対局する楽しみを覚え、いつかは自分の物にしたいと思うようになるが、鳳仙の価値が上がり手を出せなくなる
  5. 鳳仙は囲碁を打ちたい一心で羅漢に賭けを持ち掛け、二人は一夜を過ごし、生娘でなくなった鳳仙の希少価値は下落。さらに鳳仙は子供を宿す
  6. 不運にも阿多と皇后の出産問題で羅門が処罰された時期、親族で関りの強い羅漢は父の命令で3年もの間遊説のために都を離れる
  7. 羅漢と音信不通になった鳳仙は思惑とは違う結末に心を病むほか、希少価値の下がった鳳仙は食べるために客を取り続け梅毒をうつされてしまう
  8. 3年後、鳳仙は梅毒に倒れて鼻が溶けて病床に伏せると、ようやく都に戻って来た羅漢が手紙を読み緑青館に駆け付けるが、やり手婆にボコボコにされ、自分のせいで鳳仙がその後悲惨な最期を迎えたことを知り後悔する
  9. 羅漢はその後も足繫く緑青館に通い自分と鳳仙の子どもがいるはずだと訊ねるがボコボコにされて追い返されるものの、鳳仙と同じく顔が区別できる幼女・猫猫と出会い、その義父が叔父・羅門だと知る
  10. 17年後、羅門は猫猫との賭け将棋で負けると『緑青館で妓女を一人身請けする』という約束を果たしに向かうが、緑青館にて梅梅の計らいで鳳仙が今も生きていることを知り、再会。
  11. 羅門は梅毒で病に伏せた鳳仙と再会すると猫猫との約束通り鳳仙を身請けすることを決意
  12. 羅漢は鳳仙を身請けした後は休みを取り、ほぼ毎日のように対局を楽しんでいた
  13. 鳳仙はその後病死しているが、猫猫曰く緑青館にいるよりは長生きできたと言われている

軍師と名高い羅漢は敵に回したくないキャラクターの筆頭ですが、そんな羅漢を人が変わったように弛緩させたのが妓女である鳳仙でした。

元々二人とも囲碁・将棋に没頭する変わり者同士でしたが、初めての対局を気に惹かれあっていたようで、鳳仙に至っては羅漢を利用して身請けされる予定でした。しかし、不幸が重なった結果、羅漢に捨てられたと思った鳳仙は自分と実の娘である猫猫の指を切り取って送り付けるほどに心が壊れていきました。

17年振りの身請けが叶った後にすぐに鳳仙は亡くなってしまいますが、最期の期間は羅漢とずっと対局できたので幸せだったと思いたいですね。

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薬屋のひとりごとライトノベル一巻表紙

薬屋のひとりごと

著者:日向夏
イラスト:しのとうこ
出版社:イマジカインフォス
レーベル:ヒーロー文庫

 
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