国民的人気アニメ・ドラえもんには、子供たちの記憶に残るようなトラウマ回が定期的に放送されます。
今回紹介するのは「ゴルゴンの首」。ドラえもんのエピソードの中で、特に子供達に強烈な印象を残したこの回は、放送当時からトラウマ回として現在まで語り継がれることに。
今回は石化の恐怖を描いた「ゴルゴンの首」についてご紹介したいと思います。
ドラえもんのトラウマ回「ゴルゴンの首」とは?
引用元:藤子・F・不二雄「ドラえもん」 出版:小学館
「ゴルゴンの首」の首とは、ドラえもんが保有する未来のひみつ道具の一つ。
原作ではてんとう虫コミックス20巻・大全集7巻に収録。TVアニメの大山のぶ代版では1980年3月24日に「恐怖!!ゴルゴンの首」のサブタイトルが放送され、1990年2月16日に「ゴルゴンの首」のサブタイトルで二回目の放送。わさび版では2005年11月4日に「ゴルゴンの首」のサブタイトルで一回目の放送が、2013年11月1日に同タイトルで二回目の放送。大山版・わざび版で計4回の放送がされました。
大山版とわさび版の両方とも一回目の放送は原作通りに描かれていますが、二回目の放送の際には原作では登場しなかったしずかちゃんが登場するなどのリメイクがされています。
ひみつ道具「ゴルゴンの首」の解説
「ゴルゴンの首」は、ギリシャ神話に登場する蛇のように蠢く髪をした目を見た者を石化させる怪物ゴルゴン(メドゥーサなど)をモチーフにした道具。
四角い箱型から一本の蛇のような髪が飛び出した道具で、蓋を開けると光線を放つ仕組み。中に入れられているのは不気味な石像のような頭部であり、この石像から出る光線は生物の筋肉をこわばらせて石のように変えてしまうのです。
「ゴルゴンの首」の危険性
この道具の取り扱い方には注意が必要で、ドラえもんも道具を取り出した際に「こ、こ、これはとてもおそろしい機械だから、気をつけて、と、とりあつかわねばならない」と言い淀んでしまうほど。
箱に入れて正しく使用すれば脅威はありませんが、万が一、箱から本体を出してしまえば、本体に近づいた人は無差別に石化させられてしまうリスクが懸念されます。
一応、石化の解除方法としては蛇のような髪の毛を引っ張れば元に戻ると説明されていますが、逆に言えば、全員が石化されて蛇のような髪の毛を引っ張る者がいなくなれば、一生石化を解除できないことになります。
このことから、ドラえもんのひみつ道具の中ではトップクラスに扱いが難しい道具として知られています。
ストーリー展開 – ゴルゴンの首の恐怖 –
このエピソードの導入はいつものようにのび太の我儘から始まります。
学校でしょっちゅう立たされているのび太は、家に帰ると「足が疲れてしょうがない」と、長時間立たされた足の疲労に悩みます。のび太が気を付ければいいだけだと正論を言うドラえもんですが、のび太はこれからも宿題を忘れたり居眠りする自信があると宣うと、図々しく立たされても疲れない道具をせがみます。
こうしてドラえもんはのび太を甘やかすように「ゴルゴンの首」を取り出すのです。
のび太の日常から恐怖へ
引用元:藤子・F・不二雄「ドラえもん」 出版:小学館
さっそく「ゴルゴンの首」の性能を確かめるのび太。試しに足に光線を当てたところ足だけが石のように硬直。最初は慌てるのび太でしたが、石のように固まった足は全く疲労を感じさせず、何日でも立たされても平気だと知り喜びます。
そして翌日、のび太は今日も廊下に立たされてしまいますが「ゴルゴンの首」を使用して平然と授業の終わりまで立つことに。しかし、余裕を見せて笑っているところを先生に見られ、放課後もずっと立たされてしまいます。
その後、帰りが遅くなったのび太はタケコプターで飛んで帰っていると、箱の扉面を下に持っていたため、蓋が開いて中身を学校の裏山に落としてしまいます。
ドラえもんにそのことを伝えると「近づいた人がみんな石にされちゃうぞ」と慌てふためくドラえもん。ドラえもんはのび太を連れて裏山まで「ゴルゴンの首」を探しに赴くことに──。
ドラえもんの石化
引用元:藤子・F・不二雄「ドラえもん」 出版:小学館
のび太の案内で「ゴルゴンの首」を落としたであろう裏山までやってくるドラえもん。ゴルゴンの首本体は自由に這い回ることが可能のようですが、足並みは亀のように遅いため、気づかれないように背後からそっと箱を被せれば簡単に捕獲できると言います。
しかし、裏山で捜索中に先生を発見する二人。のび太は先生に話しかけにいきますが、よく見ると「ゴルゴンの首」を見たせいで先生は驚いた表情のまま石化していました。
この近辺に「ゴルゴンの首」が潜んでいると判断したドラえもんは、周囲を警戒しながら箱を構えて捜索。その時、小鳥が上空を通過すると、どこからか奇妙な声が。この声は「ゴルゴンの首」が光線を放つ際の効果音であり、光を浴びた小鳥は瞬く間に石化し落下。
それを目撃した二人は、茂みの中に「ゴルゴンの首」がいると睨みます。のび太が恐怖から足が竦み動けないでいると、一人で茂みに入っていくドラえもん。しかし、その直後に聞こえる効果音と重たい物が倒れる音が聞こえると、辺り一帯は静寂に。
のび太はドラえもんがやられたことを悟ると、血相を変えて裏山から逃げ出すのでした。
スネ夫とジャイアンの加勢と石化
引用元:藤子・F・不二雄「ドラえもん」 出版:小学館
裏山から逃げ出したのび太は、途中、スネ夫とジャイアンに遭遇。
詳細を話して二人に協力を求めると、ジャイアンは二つ返事で引き受け、スネ夫も一度は見捨てるものの放置すれば家にやってくるかもしれないと脅され仕方なく協力することに。ジャイアンが先導して問題の裏山までやってくると、おもむろに木に登り出すジャイアン。
どうやら、ジャイアンはのび太とスネ夫を囮に、二人に木の下まで「ゴルゴンの首」を誘い出させて上から箱を被せる作戦の様子。囮になれと言われた二人はその場から逃げ出しますが、スネ夫はのび太を押し倒して自分だけ颯爽と逃げていきます。
しかし、スネ夫は進行方向に何かを目撃してしまい慌てて戻ろうと反転しますが、効果音とともに光線を浴びてしまい、のび太の目の前で石化。茂みの奥から何かが這い回るようなカサコソという音を聞いたのび太は、腰が抜けてしまいますが、足を引きずるように逃げ出します。
一方で、木の上に登っていたジャイアンはのび太が下を通って逃げていく姿を見て標的が来たと思い身構えるも、捕獲用の箱をうっかり落としてしまうミス。そのタイミングで茂みから現れたのはゴルゴンの首の本体の頭部であり、その姿を正面から見たジャイアンは戦慄。
そして、ジャイアンは瞬く間に光線を浴びてしまい石化するのでした。
事態の収束 / 結末
引用元:藤子・F・不二雄「ドラえもん」 出版:小学館
先生、ドラえもん、スネ夫、ジャイアンと次々と石化する仲間たち。
残るはのび太だけとなり手詰まりの状態かと思われましたが、何と石化したジャイアンが木の上から落下すると真下にいた「ゴルゴンの首」に直撃。この衝撃によって「ゴルゴンの首」は地中に埋まってしまいます。
そして、その一部始終を見ていたのび太は箱を使って「ゴルゴンの首」を捕獲すると、蛇を引っ張り全員の石化を解除するのでした。
その後、「ゴルゴンの首」が入った箱を持つのび太に続いて、石化状態を解かれたドラえもんたちが歩いている姿で物語は終了。のび太はどこか得意げな表情ですが、ドラえもんたちはのび太が一人で「ゴルゴンの首」を捕まえられたことに懐疑的な様子で終わるというオチです。
原作とアニメの違い
最初に触れた通り、アニメでは大山版とわざび版で計4回(2回ずつ)放送されていますが、基本的には原作に忠実に描かれています。
同じ話をリメイクするにあたっては、昭和版と現代版で時代背景を変更したり、ゴルゴンの首を落としてしまってから捕獲に向かうまでの導入が多少変更されていたり、しずかちゃんが出るか出ないなどの違いはありますが、ストーリー展開や結末は大体同じです。
しかし、アニメはゴルゴンの首の「ウオーン」という効果音や石化の描写が強調されるので、聴覚的にも恐怖を膨らませる役割を果たしています。
なぜトラウマ回と呼ばれるのか
この話がトラウマとされる理由はいくつかあります。
まず、石化という概念自体が子供にとって抽象的で恐ろしいものであり、死とは違うが、動けなくなり無力化される様子がリアルに描かれています。ゴルゴンの不気味なデザインも合わさり、箱から這い出る様子や、裏山の暗い森で光線が飛ぶシーンはホラー要素満載です。
次々と仲間が石化し最後には自分一人だけになってしまう展開も、ホラー映画ならではの光景でしょう。とくに頼みの綱であるドラえもんがやられてしまうのは、劇場版に似た急展開でもあります。
また、仮に最後の一人となったのび太が石化した場合、ゴルゴンの首は町内を這い回り町全体を、町から街へと全ての生物を石化することが予想されます。もしひみつ道具の存在を知る現代人が潰えてしまえば、誰も石化を解除できないことになります。
一応、未来にドラミちゃんとセワシくんがいるため、いつかは異変に気付いて助けに来てもらえるとは思いますが、それまではほぼ確実に石化が続くため、軽いバッドエンドのような展開が予想できます。
こうした道具の危険性が日常回に突如として描かれたため、「ゴルゴンの首」はトラウマ回としての知名度が上がったようです。
まとめ
以上「ドラえもんのトラウマ回・ゴルゴンの首」についての紹介でした。
「ゴルゴンの首」は、ドラえもんのひみつ道具がもたらす恐怖と危険性を描いた傑作エピソードです。のび太の些細な悩みから始まる物語が、裏山でのサバイバルへと変わる展開は圧巻で、石化の不気味さと仲間たちの活躍が、子供たちに強い印象を残しました。
トラウマ回として語られる一方で、日常に訪れる非日常にワクワクした方もいるようで、面白いエピソードとしても語られています。
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ドラえもん (20) 藤子・F・不二雄(著) |
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