小学2年生の男の子がある日突然女の子になった話を描く『オレが私になるまで』。
主人公である藤宮明(アキラ)は、自分が元男であることを隠している状況に少なからず罪悪感を抱くようになり、いつかは親友にそのことを告げなければならないが嫌われるのが怖くて言い出せないと葛藤していました。
しかし、中学2年生の折り返しの時期、アキラはようやく親友に秘密を打ち明ける決意を固めます。
今回はアキラが瑠海と葵に秘密を打ち明けた回についてご紹介したいと思います。
アキラが瑠海と葵に元男だと打ち明けたのは何巻何話?
引用元:佐藤はつき『オレが私になるまで』 出版:KADOKAWA
アキラが二人に秘密を打ち明けたのは以下の通りです。
- 瑠海:単行本5巻63話、64話(6巻収録範囲)
- 葵:65話(6巻収録範囲)
瑠海には水族館デートの際に、葵には後日瑠海とともに家を訪れて全てを打ち明けました。
藤宮明(アキラ)の秘密|病気といじめ
引用元:佐藤はつき『オレが私になるまで』 出版:KADOKAWA
アキラは小学2年生の頃に「突発性性転換症候群」に罹り目が覚めると女の子になっていました。
突発性性転換症候群とは、ある日突然性別が変わってしまう病気で原因は不明。現代でも治療法が見つかっていないという本作における架空の病気で、患者がそう多くないそうです。治療法が見つかっていない、つまり、アキラは小学2年生を境に一生を女の子として生きていくことになります。
一方で、男子小学生時代のアキラは自他共に認めるやんちゃな男の子。何かと注意してくる幼馴染の島崎奈々に対しスカートめくりをして泣かせるなど、所謂いじめを行ったことがあります。
それまでの行いのせいか突発性性転換症候群発症後、退院明けに初めて学校に戻ったアキラは男子友達から本当に女の子になったのか確かめるために服を脱がされる他、「気持ち悪い」と暴言を吐かれ、教科書に落書きされるなどのいじめの対象になりました。また、女の子になった当初のアキラに女子たちは歩み寄ろうとしますが、アキラは謝罪を拒み自ら手を振りほどいたため、女子とも仲良くなることはできませんでした。
その結果、アキラは次第に一人ぼっちになると、しまいには保護者からも病気が感染するのではないかと忌避される対象となり母方の祖母が住む地域へ引っ越すことを余儀なくされます。
しかし、転校後は男子が苦手になるほか、事あるごとに島崎奈々に言われた「あんたが私たちにしたこと忘れてないからね…」という言葉を引きずり、後悔と自罰の念を抱えながら日々を過ごしていくことになります。
また、アキラが元男であるという事実は当時の同級生たちを除けば、転校先の教師や病院関係者にしか伝えていません。
秘密を打ち明ける決心を固めた理由やきっかけ
アキラはこれまでに何度か瑠海に対して病気のことを伝えようと意識したことがあり、小学6年生の頃、瑠海が父親と喧嘩して泊まりにきた際にもアキラは『瑠海にはオレの病気のこと伝えないと…』といつかは伝えなければならないと明確に決意心したこともあります。
その一方で、中学2年生に進級するまで秘密を打ち明けることができないまま過ごしていましたが、それまでにさまざまな要因が絡んで決心を固めることができました。
①佐原の告白による変化
中学2年一学期の終業式前の夏祭りにて、アキラは佐原から告白されました。
しかし、アキラは自身が抱える秘密(病気やいじめ)の後ろめたさから佐原の告白を断ると、告白を断った気まずさから佐原や九十九と菊池とも妙な距離感ができてしまう他、断った理由(病気)を説明できないが災いして江梨花と不仲になるなど交友関係に支障が出てしまいます。
一方で、瑠海と葵が落ち込んでいるアキラを励ますために花火を持ってきた際、アキラが瑠海に『笑われるかもしれないけど、昔、ヒーローになりたかったんだ(強くて誰かを傷つける奴をやっつけるという理由から)』と打ち明けると、瑠海は『笑わないよ。アキラが思ってくれること知れるだけで私嬉しいもん。だからもし、言いたいことができたら教えて。どんなことでも嫌いにならないから』という言葉を投げかけてくれました。この時の言葉がアキラの脳裏に焼き付くことになります。
アキラは佐原の告白とそれによる周囲の反応をきっかけに、男だったこと・女子をいじめていたことを隠して周りに迷惑をかけている自分を『汚い』と自虐してしまいますが、その一方で今まで周りが自分に優しくしてくれた好意をどう返していけるかを悩むようになりました。
②秘密を打ち明けてくれた葵と瑠海
ある日、葵の家にお泊りするアキラと瑠海。
その際、ひょんなことから葵は『女物に興味ない』と生きてきた一方でアキラのようになれたらと思う気持ちがあることを打ち明けます。また、瑠海は将来美容やファッション系の仕事に就きたいという夢を打ち明けてくれたました。
しかし、二人が抱える秘密を打ち明けてくれた一方で、アキラは自分の秘密を打ち明けられないことにモヤモヤします。また、葵に『男っぽいところを共有できる女友達がいなかったからアキラに会えて良かった』と言われたのが胸に引っかかることに。
この出来事を機に、アキラは自室で二人に秘密を打ち明ける練習をするようになりますが、中々言えるタイミングが来ず。
③詩音と夏美の一件
夏休み明けからしばらくして、詩音は菊池の悪い噂を口実にアキラと親しくなろうと接触してきます。
菊池が昔女子に手をあげたという噂に関しては、アキラは過去の自分の境遇と菊池を重ねて何も言えないでいると、偶然横を通りかかった夏美が二人の雰囲気を察してか話し合いの場を設けるべく公園へ連れ出します。
こうして、詩音が菊池の噂を持ち出してアキラに接触したのをきっかけに、アキラ・詩音・夏美は放課後の公園で話し合うことになったわけですが、結果として、アキラは詩音と夏美の二人に『過去に女子をいじめていた』ことを打ち明けるのでした。
秘密を打ち明けた後は夏美が詩音を説得しその場は丸く収まりますが、アキラは話し合いの最中に詩音から言われた「(アキラがいつも普段周囲に気を使っているから)気使うの疲れない?」という言葉と、夏美に言われた「(胸を触っても)男子じゃないんだから(そんな気にするな)」が頭の中で引っかかるようになりました。
そのため、詩音と夏美の言葉が瑠海と葵に秘密を打ち明ける決心を固める要因となります。
アキラから渡井瑠海へ『秘密』を告白
引用元:佐藤はつき『オレが私になるまで』 出版:KADOKAWA
小学5年生の頃にいつか瑠海に秘密を打ち明けようと心に決めていたアキラは、中学2年生の夏休み明け頃に打ち明けることになりました。
秘密を打ち明けたのは、推しの人気俳優が逮捕されて落ち込んでいた瑠海を慰めるために誘った水族館デートの日。一通り海の生き物を見て回って元気を取り戻した瑠海は、結果としてアキラとこうしてデートできた喜びから「キズついてみるもんだね」と笑顔を浮かべます。
しかし、アキラは事前に岡部に『友達に秘密を打ち明ける』ことを相談しており、ついにこのタイミングで瑠海に秘密を打ち明ける決心をすると、繋いでいた瑠海の手を離し一瞬俯き加減に覚悟を決めた後、顔を上げて瑠海と向き合い「もっとキズつけていい?」と述べ、人気のない海岸べりへ誘い出します。
アキラはスマホ画面に性転換前(ランドセルを背負った男子小学生のアキラ)の画像を表示させて瑠海に見せると、小2までは男だったこと、女子をいじめていたこと、学校に馴染めず転校して瑠海たちと出会ったことを包み隠さず打ち明けていきます。
今まで本当のことを話せなかったことを謝罪するアキラ。瑠海は泣きながらこれまで疑問に思っていたことが全て理解できたと納得のいった様子を見せますが、その一方で、女の子はみんな可愛いものが好きだと思っていたことから自分がアキラにそれを押し付けて選択肢を奪っていた罪悪感を抱き謝罪します。
しかし、アキラは瑠海の罪悪感を強く否定。最初は嫌われたくなくて言うことを聞いていた部分はあるものの、瑠海の優しさに触れていく内に瑠海のようになりたいと思うようになり、髪を伸ばすこともスカートを穿くことも全て自分自身が決めたことで、誰かに可愛いと言ってもらえて嬉しく感じるのは瑠海がいてくれたからだと述べます。
そして、「瑠海と会えて不幸だったことなんていっこもないよ!」と涙ながらにこれまでの感謝を伝えるのでした。
アキラの精一杯の告白に瑠海は「…うん」と小さく頷くと、二人が積み重ねてきた関係を現すように小2からの回想が差し込まれます。
その後、二人は再び手を取り合って海岸べりを歩き出すのでした。
瑠海のその後の反応
アキラが瑠海に秘密を打ち明けた後、二人は駐車場で岡部と合流しています。
元々、アキラは今日のことを岡部に相談していたので、岡部は水族館まで車で迎えに来てくれていたようで、二人は手を繋いで泣きながら岡部と合流すると、これまたアキラは泣きながら瑠海に岡部を紹介します。
その後、瑠海を落ち着かせるために岡部の家で晩御飯を食べて宿泊する予定を立てますが、瑠海がやっぱり帰ると言い出したため、アキラは瑠海に嫌われたのではないかと不安になります。
しかし、岡部が気をきかせて二人きりにすると、瑠海はアキラが今日のために髪型や服装に気合いを入れてくれたことなどを知り再び涙腺が緩み、自分もアキラともっと一緒に話したり遊んだりしたいことを伝えて抱擁を交わします。
一方で、二人とも言いたいことが多いせいかやたらと言葉が被ったり、顔の距離が近づいた際に鼻と鼻が接触すると赤面して離れるなど、明らかにアキラが元男だと知った後は動揺して微妙な距離感になっている描写もあります。
また、瑠海は心の整理をつけるために「今までのこと考えたいから帰るね」と話しており、以降も仲が悪くなったわけではないもののこれまでのように瑠海から抱き付くようなことはなくなり僅かに距離ができてしまいます。しかし、瑠海曰く、これまでの気持ちを手紙にしている最中らしく、アキラにはもうしばらく待ってほしいと伝えています。
その一方で、アキラには瑠海が明らかに気を使っていることを見抜かれている模様。描写的には、瑠海はこれまでのようにアキラに触りたいがアキラが元男であることを知ってからは我慢している様子。その反動か、今度はアキラの方から瑠海の腕にしがみつくなどの逆転現象が起きており、次第に瑠海もアキラの肩に手を置くなど従来のボディタッチが復活し始めていますが、未だ以前のようなセクハラタッチはありません。
なお、秘密を打ち明けた際にアキラが「いつか葵と瑠海といっしょのお風呂に入れるようになれたらなって…」と発言すると、「えっち」と身体を隠すような仕草をしてアキラを揶揄う余裕を見せています。
アキラから藤木葵へ『秘密』を告白
引用元:佐藤はつき『オレが私になるまで』 出版:KADOKAWA
アキラは瑠海に秘密を打ち明けた後、葵にも秘密を打ち明けています。
アキラが瑠海に秘密を打ち明けた水族館デートの服装と違っているので、おそらく別日か休日であり、アキラは瑠海と二人で葵の家を訪問し自分が元男だと打ち明けました。なお、秘密を打ち明ける部分は割愛されている模様。
今まで黙っていてごめん、と謝るアキラですが、葵はアキラの胸を揉みながら「ごめんて言われてもあたしは女のアキラにしか会ったことないからなぁ…」とやや困惑するもそこまで大事には思っていない様子(葵がアキラの胸を揉んでいるのを見て「私もさすがにしなかったのに…」とジト目の瑠海)。
そして、アキラが葵に秘密を打ち明けたのを見届けた瑠海は、後は二人で話し合う場を作るため一人帰宅。
残された二人は一瞬沈黙に陥りますが、葵はまずは秘密を話してくれたことに感謝を述べると、決闘王のデッキを引っ張り出し、「アキラがそれでもモヤモヤするなら答えはカードの中で見つけよーぜ」と勝負を申し出ます。
葵の行動に思わず吹き出してしまうアキラは葵と決闘王を始めうことに。思い返せば二人が仲良くなったきっかけは決闘王であり、アキラは初めて葵と決闘王をした際に言われた『性別関係なく好きなのは自由』という言葉に救われたことを伝えます。しかし、当の葵はまったく覚えていなかった模様。
が、葵は正直なところアキラが元男であると知って寂しくなったと吐露。自分も女なのに決闘王などの男趣味を持っていたことから性別について悩んでおり、アキラは自分に似ていると思っていました。
とはいえ、結局アキラが自分の在り方について悩んでいることには変わらないため、アキラが元男だと知っても大丈夫だと伝えています。
なお、葵が「そういえば、女子のことエロい目で見てたの?」と切り込むと、アキラは「それはライン越えすぎ!」と赤面顔。秘密を打ち明けてからもいつものペースのまま変わらない葵でした。
葵のその後の反応
アキラが葵に秘密を打ち明けてからも基本的に葵の反応は変わっていません。
寧ろ、瑠海がアキラに気を使うようになったため、葵はアキラと瑠海の関係を繋ぐように瑠海の背中を押したりとバランサーの役割を果たしている他、アキラとはこれまで以上に気の置けない距離感になっています。
一方で、バド部の大会当日観戦に来ていたアキラと瑠海が、試合そっちのけでアキラの秘密を聞いても動じなかった葵を尊敬し葵のようになりたいと結論を導き出して葵に報告したところ、葵が「またアタシ抜きで話し合いやがって。動じないだあ?アタシがどんな気持ちで受け入れたと思ってんだ」と怒る描写があるため、内心ではそれなりに動揺をきたしていたことが発覚。
やはり同じ悩みを抱えていた女子同士と思っていたため、真実を知った時の衝撃はあったようです。なお、大会終了後には葵は二人を許している模様。
修学旅行編では、アサヒグループ本社ビル隣の金色のオブジェ・フラムドールを見た葵が「うんこだ」と発言するとアキラのツボに入ってアキラが大笑い。その様子を見て「男の子だねー」と発言すると、今度は瑠海のツボに入って瑠海が大笑いするなど、葵のおかげで三人の関係は良好。
また、アキラに対して「津田のおっぱいくそデカかったぞ」と報告して揶揄うなどの言動をとっています。
一泊目の夜には、同じ病気の男の子と会うことになったと真面目な話をするアキラに対し「もっと早く言えや」と言いながら腕挫十字固を行うギャグシーンも。瑠海とともに一緒についていく意志を伝えています。
瑠海と葵以外に秘密を知る人物は?
アキラが自分から秘密を伝えた人物は今現在で瑠海と葵の二人しかいません。
今後、他にも伝えなければならない人物で言えば江梨花や佐原が思い浮かびますが、現状未定です。
アキラの病気を知っている人物は?
瑠海と葵以外でアキラの病気を知っている人物は以下の通りです。
家族・親戚
- 藤宮哉子(母)
- 藤宮善久(父)
- 川島早苗(祖母)
- 村山千歳(叔母)
- 村山伊吹(従弟)
小学生時代
- 桝川(担任)
- 窪田(養護教諭)
- おそらく教員は全員
中学生時代
- 飯塚(担任)
- 園田(バドミントン部顧問)
- おそらく教員は全員
その他
- 岡部(看護師)
- 庄司アキノリ(アキラと同じ病気)
- 病院関係者
- 転校前のクラスメイトや教師
なお、以上の人物でアキラの『いじめ』を知っているのは母親と転校前の先生やクラスメイトだけだと思われます。
まとめ
以上「アキラが瑠海と葵に『元男』と告白した回」のまとめでした。
転校後、アキラは小学6年の頃には瑠海に秘密を打ち明けなければならないと決意していますが、実際に秘密を打ち明けるまでにはさまざまな葛藤があり、色んな要因が絡み合って中学2年生の夏過ぎに秘密を打ち明けることができました。
アキラが最初にカミングアウトした相手は辛い時期を支えてくれた親友の瑠海、次いで男女の固定観念に縛られていたアキラを救ってくれた葵であり、親友である二人に『元男』であることを打ち明けたアキラはようやく騙していた罪悪感から少し解放されることになります。
とはいえ、まだ中学二年生の折り返しであるため、今後秘密を打ち明ける相手が増えていくかもしれません。
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オレが私になるまで 5
作家:佐藤はつき
出版:KADOKAWA オレは、瑠海に会えて――。 |
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▼ オレが私になるまでの漫画 ▼
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オレが私になるまで
作家:佐藤はつき
出版:KADOKAWA ある日、男の子が朝起きたら女の子になってしまいました。すぐ戻ると思いきや、どうやらその様子はありません。変化する自分のココロと周囲との認識のズレに戸惑いながら、すこしずつ成長していく物語です。 |
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