漫画『結界師』に登場する異能集団の組織・裏会。
扇一郎は裏会を取り仕切る最高幹部の一人として登場しますが、史上最年少で幹部入りした墨村正守を敵視しており、裏でさまざまな悪事を働いていました。
では、扇一郎と墨村正守の因縁の決着はどうなったのか、そして扇一郎はどのような最後を迎えたのでしょうか。
今回は扇一郎の正体と最後についてご紹介したいと思います。
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扇一郎とは
引用元:田辺イエロウ『結界師』 出版:小学館
扇一郎とは、扇一族本家の長男であり、裏会最高幹部十二人会の第八客。虚無僧のような覆面をつけた巨漢であり、居丈高な物言いが特徴です。
初登場は単行本7巻第61話『十二人会』。
初登場時点で何かと烏森の地に手を回したり、墨村正守への嫌がらせのために姑息な手段を用いるなど、物語の進行に合わせて暗躍している裏中ボスのような存在です。
なお、奥久尼曰く『扇一郎と墨村正守の境遇は似ているため例え真っ向から戦い方がついたとしても虚しくなるだけである』と言われているほか、一方的に『悲しい方』と評価されています。
扇一郎の正体
扇一郎の正体は兄弟六人の集合体です。順に一郎・二郎・三郎・四郎・五郎・六郎の六人が一つになった状態であり、主は一郎。
一郎は、禁術である肉体改造の術を使い兄弟の体を一つにすることでとんでもない力を手に入れ裏会最高幹部へ上り詰めました。融合や分裂の際には一度肉塊に変異する必要がありますが自由意志で可能。しかし、戦闘能力は兄弟が一人でも欠けるとその分落ちるようです。
なお、一郎やその他兄弟の人相は五郎と六郎以外描かれていないため不明。
一郎本来の目的は本家の正統継承者になることでしたが、ここまでしても扇家の後継になれなかったため、境遇という一点においては正守と同じです。
扇一郎と墨村正守の因縁
扇一郎は最年少で幹部入りした墨村正守を敵視しており、初顔合わせ時点で新人いびりもしていますが、一郎が正守を嫌う理由は馬が合わない以外にも、目つき・口の利き方・傲慢さなど全てが気に入らないようです。
初登場の段階で夜行のNo.3細波慧と繋がりを持ち情報を吸い上げると、徒党を組む黒芒楼へ情報提供し夜行に実害が出ることに(志々尾限の殉職)。奥久尼が烏森の視察へ赴いた際には、第三者を介して『黒兜』を烏森の地に放っており、烏森の危険性を高めることで調査係の奥久尼を利用し裏会が実権を握れるように画策するも失敗しています。
一方で正守も十二人会身分秘匿の掟を無視して幹部の紋様入り羽織を着て一郎に面会したり、新任でありながら一郎に意見するなど下手に出ず毅然と挑発を受け流す姿勢を取っているせいか、一郎との仲は溝が深まるばかり。
そんな中、一郎が正守を窮地に陥れる次の策として思いついたのが『神佑地狩り』であり、人為的な痕跡が遺された真白湖の神佑地狩りの件を利用。裏会調査室室長の証言を基に上級の腕を持つ空間支配系の能力者であれば神佑地狩りが可能であるという状況証拠を手に、正守に真白湖の神佑地を修復させる任務につけ調査室の目にとまるよう仕向けると、近年行われる神佑地狩りの犯人が墨村家あるいは正守の母で放浪中の守美子へ疑いを向けるよう画策し、正守の立場を危うくさせます。
こうした腹の探り合いの末に墨村家まで巻き込んでしまった正守は、扇一郎を潰すために細波を呼びつけ扇一族を陥れられるようなネタを持ってくるよう強要。また、任務で忙しい中修行し決戦に備えます。
しかし、正守が修行している最中、一郎はさらに次の手立てを打っており、五郎を使って妖退治に出かけた夜行の任務地に手負いの土地神クラスの妖を放り込み、任務地の守の主と土地神クラスの妖を夜行へぶつけ死傷者を出すとともに、土地神の殺害という罪を仕立て上げます。
再び一郎の策略で夜行の仲間に殉職者が出てしまった正守は我慢が限界を迎えたため、一郎を討つ決意し、単身一郎の屋敷へ乗り込むのでした。
扇一郎と墨村正守の決着
扇一郎は黒芒楼の件もさることながら様々な策を講じて烏森を危険に晒し、夜行のメンバーにも多くの死傷者を出しました。そのため、正守は奥久尼が扇一郎を告白する材料が揃えるまで我慢ならず、自らの手で決着をつけるべく彼の屋敷にて真っ向から対立します。
正守は開口一番は体裁のため無意味な諍いを止めるための「取引」を申し出ますが、「お前のくだらない嫌がらせのために何人部下が死んだと思ってる」「サシでやれよ男なら」と挑発し、正面から扇一郎の怒りを買うことに。
一郎は「小僧が…生きて帰れると思うなよ」と激昂すると屋敷を破壊。正守は絶界で身を守り、更地となった海辺の屋敷跡で二人は対峙します。
一郎が正守を敵視するのは、目つき、生意気な口の利き方、人を小馬鹿にした態度、自分の手で全てを切り開けると思っているような傲慢さ、その全てを織り交ぜて身の程を知らないところが気に喰わないという浅い理由でした。
一方で、正守は家を継げなかった一郎に対し「家にこだわりすぎ」とコンプレックスを突くと、一郎は頭巾越しにも透けて見える怒りを感じさせました。
扇一郎の逃亡
一郎は部下たちに足止めをさせたところで空中から風の刃を放ち地面を砕くと、部下たちごと足場は崩壊。正守は空中に足場を作ることで難を逃れますが、部下を人間とも思わず捨て駒に使う一郎に嫌悪感を示します。
一方で、いざ戦闘になると一郎の能力は絶界越しでも完全に防ぎきれず、かつ相手は遠隔攻撃持ち。相性は最悪でした。
しかし、正守は絶界での接触が不可能ならば結界術での遠隔攻撃に切り替え、一郎の左足を捉え滅することに。憤怒した一郎は、巨大な竜巻を生み出し海ごと全てのモノを引き寄せていくと、正守は竜巻に巻き込まれまいと結界で身を包み近場の洞穴に避難。そんな中、相性の悪い風使いを確実に仕留めるべく、絶界を纏い上空から──竜巻を発生させる中心の渦の中へ飛び込んで一郎に接近しようと試みます。
一郎は正守に風刃を放ち胴体を両断しますが、それは正守の式神。本物の正守は渦の下から急上昇し、一郎に接近すると鋭い棒状の結界を放ち一郎を串刺しにして固定。身動きを封じたところに絶界をぶつけようとしました。
しかし、一郎に接触しかけた直前に一郎は術を解いて肉体を『分解』し逃走。この段階で一郎の体の構造を知らなかった正守は、まんまと一郎に逃走を許してしまうのでした。
六郎の離脱
一郎が肉体を分解させて逃走した後、正守の下に残されたのはひと塊の肉塊。その肉塊はやがて体を構成していくと扇六郎と判明します。
この時、一郎に見捨てられた六郎は扇一郎の正体(六人兄弟の融合体)を明かすと、一郎が自分に全ての傷を押し付けて切り捨てたと吐露。これまで兄のために体を改造し尽くしてきた六郎は絶望し、正守に止めを乞いますが、正守は扇一郎の背景を知ったことで六郎を預かり治療する術を探します。
また、正守は奥久尼と面会すると、自身が恨んでいたのはあくまでも『扇一郎』であり扇六郎は関係ないということを伝え、奥久尼に頭を下げて六郎を助ける術を教えてもらいます。奥久尼は裏会の秩序を取り戻すための協力者を求めていたこともあり、正守と奥久尼とで同盟を結ぶことで情報提供を約束。
こうして正守は六郎を助けることができました。
一方で扇一郎は正守を仕留めそこなったことを悔やみつつも、現状正守ばかりに構っていられないとして自身が高みに上る次の手段を画策し始めていました。
その後、二人の対戦をから時間を空けた後、十二人会会合後に正守は一郎を引き止めて六郎の回復状況と彼を人質に取るつもりがない意思を伝えて返還を申し出ますが、一郎は無視。そのため、正守は立ち去ろうとする一郎の腕を掴みますが、一郎からただならぬ妖気が放たれたために彼が度を超えた禁忌に手を出したことを悟り軽蔑するのでした。
扇一郎の討伐命令
奥久尼に呼び出された正守は、奥久尼から扇一郎が罠にかかったため告発の準備が整ったと報告を受けます。
他人の管理する神佑地への手出しと破壊行為、そしてその後の失踪。それらの罪状で雲隠れした扇一郎を正義の名のもとに討ち取る任を正守に与えました。これは腐敗した裏会を一新するための一歩であり、他の幹部への見せしめでもある大役です。
依然と違い、今度は裏会を正すための正義の執行、かつバックに奥久尼がついているため、正守は裏会実行部隊・夜行を率いて扇一郎の隠れ家に赴きます。一方で、任務前にはまるで死地に行くように、一度実家に戻り自分が生まれた烏森をその目におさめると、良守に「烏森を頼む」と念を置いて後のことを託し準備を整えました。
その後、夜行総出で扇一郎の隠れ家である山寺を特定すると、正守は正面突破。絶界で正面入口を破壊すると雑魚は夜行の仲間に一任し、自身は最奥にいるであろう扇一郎の下へと進行します。
「扇一郎、お前だけは俺が殺す」
これまで扇一郎から受けてきた仕打ちの数々とその策略の犠牲となった者たちを想起する正守は怨嗟を取り巻きながら扇一郎がいるであろうお堂を発見すると、いざ対峙すべく扉を開け放ち中へと侵入します。
しかし、そこには扇一郎であろう五つの肉塊が無惨にも散らばっていたのでした。
扇一郎の死亡と最期
部下たちの仇である扇一郎だけは自身の手で必ず殺すと意気込んでいた手前、正守は目の前の光景を受け入れられず、ただただ茫然と肉塊を見下ろすことしかできませんでした。
しかし、よく観察すると肉塊の一つが動いており、肉塊はやがて『人もどき』の形を成すと正守の向けて手を伸ばし「あ…あう…助…うえ…」と助けを求めるようにズルズルと這いつくばってきます。
が、おそらく一郎と思しきその肉塊は生命維持能力が尽きたのか正守に辿り着くこともなく目の前でドロドロに溶けてしまうのです。
復讐心に支配されていた正守が意図しない『仇』の喪失にショックを受けていると、背後に現れたのは扇七郎、──扇一族本家七男で次期当主でした。七郎が「一足遅かったですね」と悠々と声をかけると、正守は振り返りざまに「お前がやったのか!?」と迫真の表情。
正守のやり場のない怒りの矛先は獲物を横取りした七郎へと向き絶界を最大出力で発動しますが、七郎は能力で正守の背後、扇一郎兄弟の遺体があったお堂を木端微塵に破壊し証拠隠滅を図ります。
一瞬で建物を破壊する異次元の強さを前に、正守はいきり立つ心を静めて冷静さを取り戻すことに。
そんな正守に対し、七郎は「あなたは振り回されているだけのようだ。この大きな渦の中心に来たいならもっとレベル上げてかないとダメですよ」と忠告し立ち去りました。
こうして扇一郎と墨村正守の諍いは第三者である扇七郎の手であっさりと終わってしまうのでした。
まとめ
扇一郎の正体と死亡と最期のまとめ
- 扇一郎の正体
- 兄弟六人の集合体(一郎・二郎・三郎・四郎・五郎・六郎)
- 肉体改造の術を使い兄弟の体を一つにして力を手に入れる
- 融合や分裂の際には一度肉塊に変異する
- 肉体改造をしてなおも本家の正統継承者になれなかった
- 扇一郎と墨村正守の因縁
- 一郎は最年少で幹部入りした墨村正守を敵視
- 一郎は夜行のNo.3細波慧と繋がりを持ち情報を吸い上げる
- 一郎が黒芒楼へ情報提供し夜行に実害が出る
- 一郎は奥久尼が烏森へ査察した際に第三者を介して『黒兜』を烏森の地へ届け被害を生む
- 一郎は真白湖の神佑地狩りの件を利用し墨村家に神佑地狩りの疑いをかける
- 一郎は夜行の任務先に土地神をぶつけて死傷者を出す
- 扇一郎の死亡と最期
- 一度、一郎と正守は正面から戦うが一郎が六郎を切り捨てて逃亡したため決着は見送り
- 奥久尼が扇一郎告発の準備を整えたため正守に扇一郎討伐命令を下す
- 正守は裏会実行部隊夜行を連れて正義の名の下に扇一郎の討伐に出陣する
- 正守が扇一郎の下へ辿り着くとすでに扇七郎の手によって一郎は殺害された後だった
- 正守は部下の仇を討つことができないまま一郎との決着が終わる
扇一郎は最初から最後まで扇本家の血筋に固執し力を求めていましたが、正守への嫌がらせにこだわったため自らの首を絞めることになり、固執していた扇本家の正統継承者によって葬られました。
結局、一郎が正守を敵視していた理由が本当に馬が合わないだけだったからなのかは定かではありませんが、毛嫌いするだけで死傷者を出すほどの嫌がらせを行うクズっぷりは中々のものです。
正守を曇らせるための必要悪ではあったものの、決着の付け方は侘しさを感じさせました。
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結界師 作者:田辺イエロウ |