金田一少年の事件簿の「黒死蝶殺人事件」で登場した12歳の少女・斑目るり。
感情を閉じ込めていた彼女はどこか冷めたような態度が印象的ですが、はじめとはとある出来事がきっかけで仲良くなり、不安な胸中を打ち明ける間柄へと進展していきます。
しかし、僅か12歳の少女が殺人事件の被害者となる悲劇的な最期を遂げてしまうのでした。
今回は斑目るりの死亡についてご紹介したいと思います。
斑目るりのプロフィール
引用元:天樹征丸・さとうふみや「金田一少年の事件簿」 出版:講談社
斑目るりは斑目家三姉妹の末娘で、12歳。左目が緑色のオッドアイを持ち、おかっぱ頭に和服姿の日本人形のような可憐な少女です。鞠つきが大好きで、いつも毬を抱えていますが、父親の紫紋に対しては「この男」と呼び、触れられただけで毬を捨てるほど心を閉ざしています。
母親の緑が紫紋から受ける苦しみを幼いながらに感じ取り、表向きは父親と普通に接しながらも、姿が見えなくなると態度を変える二面性を見せています。また、感情を表に出さない冷めた瞳が印象的。
しかし、はじめと出会い、心を開いていきます。
黒死蝶殺人事件とは
この事件は、石川県金沢市にある斑目家の「蝶屋敷」を舞台に展開。はじめ、美雪、いつきは、悲恋湖事件で死亡したはずの遠野英治に似た人物の写真をきっかけに屋敷を訪れます。屋敷の主・斑目紫紋は幻の夜光蝶を研究する蝶の専門家で、黒死蝶という伝説の蝶が死を呼ぶと言われる呪いの言い伝えが残っています。
到着早々、斑目家の娘たちが蝶に見立てられて次々と殺害される連続殺人事件が発生。死体には黒死蝶が群がり、犯人は「不死蝶」を名乗って犯行声明を出します。金田一は蝶の生態やトリックを駆使して真相に迫りますが、事件の根底には25年前の研究盗用と家族の複雑な因縁が隠されていました。
黒死蝶は夜光蝶の別称ともされ、暗い夜に光りながら舞う姿が死の象徴として描かれ、物語に不気味な雰囲気を加えています。
斑目るりと金田一はじめの約束
引用元:天樹征丸・さとうふみや「金田一少年の事件簿」 出版:講談社
心を閉ざしていたるりがはじめに心を開くきっかけとなったのが、はじめが身を挺して彼女を庇ったのが発端。磔にされた黒死蝶は『死の予告』で、黒死蝶自体に『死人が出る』と古くから迷信があり、るりはそれを信じていました。
そのため、屋敷で磔にされた黒死蝶を見た彼女は「るり…死んじゃうかもしれない…」と不安に押し潰され涙。そして、るりが前も見ずに走り出した先に山積みにされた荷物が崩れ落ちそうになっているのを視認したはじめは、るりを追いかけ、彼女の頭上に積み荷が落下する直前で間一髪荷物を押しのけ助けることに成功。しかし、はじめはそのまま突っ込み、荷物の下敷きに。
吃驚するるりですが、はじめが荷物の隙間から顔を出し「おケガはありませんか?お姫さま」とおちゃらけたのを見て、「ヘンなお兄ちゃん…」と微笑み心を解かします。
この出来事を経てるりははじめを頼るようになり、緑が紫紋に酷いことをしているところを目撃した晩は、はじめの部屋を訪れ不安を打ち明けました。そんなるりに、はじめは「泣くなよ!な!?明日お兄ちゃんが遊んでやるから。ゴムとびでも毬つきでもファミコンでも、るりちゃんの好きなので遊ぼ!な?」と元気づけると、明日一緒に遊ぶ約束をしてるりを励ますのでした。
斑目るりの死亡
引用元:天樹征丸・さとうふみや「金田一少年の事件簿」 出版:講談社
るりの殺害は、彼女がはじめの部屋を後にした直後に決行されました。
翌日、はじめと遊ぶ約束を交わしたるりは泣き止み明日を楽しみにしながら自室へ戻りますが、その道中、真っ暗な廊下で落とした毬を拾い上げたところ犯人と遭遇。そして翌朝、敷地内の木に「地獄より死の翅もて参上す、不死蝶」とメッセージが刻まれているのを発見する一同。
メッセージと共に磔にされていた蝶はオオルリシジミであり、るりがパーティーで着ていた着物の柄になっていた蝶。嫌な予感がしたはじめは急いでるりの部屋へ向かいますが、廊下でるりの毬を発見します。
そして、ふと窓辺の外へ視線を向けると、蝶塚に巨大な蝶の標本のように地面を埋め尽くす木の葉の布団の上に瑠璃色の羽を広げたるりの死体が横たわっていることに気付くはじめ。なお、犯人の最後の情けなのか、るりの瞳は死後に犯人の手で閉じられたようで、安らかに眠ったように見えています。
その瞬間、はじめは黒死蝶が「死の予告」と呼ばれていることを思い出し、不安から泣いていたるりの姿を脳裏に浮かべると、昨晩遊ぶ約束を交わした際のるり思い浮かべながら『なぜ君が──こんなことに…』と深い悲しみと悔しさに歯噛みするのでした。
本事件の最初の犠牲者となってしまったるり。犯人は彼女を「オオルリシジミ」に見立て、蝶塚の上で磔にし、扼殺しました。死体は黒死蝶が群がる中発見され、はじめは激しい怒りを露わにすると、通常時の腑抜けたスケベな姿を封印し、事件直後から推理モードへ切り替わる、身近な者以外でここまで感情を爆発させた珍しい展開となりました。
はじめの怒り
るりの死体発見後からどこか静かな怒りに震えるはじめ。
はじめの変化に気付いた美雪に対し、はじめは「泣いてたんよだあの娘…」と、昨夜るりが部屋を訪ねて目の前で不安を漏らし泣いたため、励ますために「明日一緒に遊ぼう」と約束して別れたことを話します。
はじめはるりの態度から彼女の周りには何かとても大きな苦しみが渦巻いていて、るりは冷めたような瞳に感情を閉じ込めることで苦しみから自分を守り続けていたと直感していましたが、結局、るりの苦しみを聞いてあげることが叶いませんでした。
その後悔から「あの娘の命を奪った奴は俺が必ず捕まえてやる!!」と抑えきれない怒りを推理にぶつけています。事件において犯行時間のアリバイがなかった深山のアリバイ崩しにおいても、美雪といつきが無理だと口出ししても「──でも、やんなきゃならねーんだよ…!!──死んじまった、あの娘のためにも──…」と熱意を含み、るりの発言と遺体から真実へと紐解き、るりが怯えていた黒死蝶の呪いはあくまで伝説であり、今回のは歴とした計画的な殺人事件と解き明かしました。
犯人の誤解が生んだ復讐の連鎖
真犯人は舘羽の婚約者・小野寺将之(本名・須賀徹)でした。
彼は緑と須賀実の実子で、三姉妹の異母兄に当たります。祖母から植え付けられた誤解により、母・緑が父を裏切り、紫紋に走ったと思い込み、斑目家全体への復讐を誓っていたのです。蝶の学名を使ったトリックや、死体隠蔽の手法は彼の専門知識によるもの。
しかし、はじめの推理シーンで重大な誤解が解けることに。三姉妹は緑が紫紋との間に産んだ娘ではなく、実は人工授精による須賀実の血を引く子──小野寺将之の実の妹達だったのです。犯人は実の妹たちを「紫紋の血筋」として殺害し、自身も血のつながりに気づかぬまま罪を重ねてしまいました。
劇中では血液型の矛盾や蝶の生態がはじめの推理で暴かれ、誤解の全貌が明らかに。真実を知った小野寺将之(須賀徹)は自死を選択し、緑も息子の選択を後押しするように一緒に逝くことを決意。助けようとしたはじめを牽制し、屋敷に火をつけて焼死するという結末になります。
復讐は結局、家族全員を破滅させる悲劇を生みました。
斑目るりが可哀想と言われる理由
るりが「可哀想」と評される最大の理由は、一切の罪がないのに親の過去と誤解のとばっちりで命を落とした点です。加えて12歳という幼さ、父親への恐怖と母親への同情を抱きながら心を閉ざしていた孤独、そして金田一との出会いで初めて見せた希望の笑顔。それらが一瞬で奪われる展開は、一切の救いがなく、こんな子供でも被害者になるのか──という理不尽さを体現しました。
また、彼女は家族の復讐計画の「道具」として生まれたような存在であり、犯人自身も殺害後に妹だと知って絶望し自害を選ぶなど、事件解決後の後味の悪さも一級品です。
金田一史上最年少被害者で、彼女の死後以降15歳以下の犠牲者が出なくなったこともあり、ファンの記憶に強く残るエピソードとなりました。彼女の理不尽な死は、ただのミステリーではなく、人間関係のすれ違いがもたらす悲劇を象徴しています。
まとめ
以上「斑目るりの死亡」についての紹介でした。
この事件は、家庭内(主に父親)の問題を抱えて心を閉ざしていた12歳の女の子、そんな女の子を励ますため遊ぶ約束を交わしたはじめ、誤解から生まれる殺意から実の兄に殺害される悲劇──などなど、救済要素がほとんどなく、はじめを通してるりの死が強く印象に残りました。
金田一シリーズの名エピソードとして、今も多くの読者の心に残り続けています。



