『聲の形』のヒロインであり聴覚障害を持つ西宮硝子。
本作は硝子の障害を中心に渦巻く人間の負の部分が前面に押し出された内容ですが、中でも西宮家に関してはなかなか胸を抉るような過去が描かれています。
なぜ西宮家に父親がいないのか、なぜ八重子は娘に厳しいのか、なぜ結絃は動物の死骸を撮り続けるのか──西宮家は過去に何が起きたのでしょうか。
今回は西宮家についてご紹介したいと思います。
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西宮家の家族構成
引用元:大今良時『聲の形』 出版:講談社
西宮家は祖母・母・長女・次女の四人家族です。
八重子は夫と離婚しているため『西宮』の性は実家、つまり硝子の母方の性となります。
なお、父方の性については不明であり、父親の名前も不明。
現在は家族四人でマンション(モデル:大垣市役所)に居住しています。
離婚 / 最低な父親一家
硝子に聴覚障害があることがわかったのは彼女が3歳の頃でした。
父親一家は硝子に障害が発覚すると「こんな子を産むなんて聞いていない、僕たちはだまされた」と一方的な主張をして八重子に離婚を迫りました。
詳しいことはまでは描かれていませんが、実は硝子の障害の原因は感染症にあるらしく、その発端は父親にあり、父親は自分が感染症であることを隠して八重子にうつしてしまったのです。
感染症自体は予防接種で防げるものでしたが八重子は夫が感染症だと知らなかったため予防接種を打っておらず、夫は全ての責任を予防接種をしなかった八重子に押し付け「硝子がお腹の中にいる時に問題が起きたのなら君のせい」と暴言を浴びせたのです。
加えて父方の祖父が「障害の発見が遅れたのはあんたがわざと黙っていたから」「あんた自身に問題がある」と罵詈。
父方の祖母に至っては「因果応報、硝子が前世で何か悪いことをしたせい。あるいはあんたが──」と口汚く罵り、八重子の言い分は全て『責任逃れ』と一蹴。
いと(西宮の祖母)は必死に弁明に出ますが八重子らの主張は一切彼らの耳に届きませんでした。
この話し合いの結果父親一家は障害が悪いことだと思わないのなら自分らの家にはいらないから君が育てると言いと結論を出し、離婚を成立させました。
結絃の誕生時期
八重子が離婚をした時期にまだ結絃は生まれていませんが、実は結絃を身籠ったことに気づいたのは離婚協議後のことでした。
さんざん硝子の障害のことで心無いことを言われた八重子は憔悴しきったまましばらく考えごとをしていると、突然つわりを覚えます。
当初、八重子は「なんでこんな時に…」と絶望的な気持ちに陥り涙しますが、いとは八重子の不安を取り除くように次女の誕生を心待ちにし、子供の面倒を引き受けると「私は逃げないよ、娘からも、孫からも」と苦しい状況に立たされた八重子を励ますのでした。
いとの言葉を受けた八重子は感謝を述べるとともに自身も頑張ることを表明すると、いとは「この子はきっと強く育つよ…」と八重子のお腹をさすりました。
西宮の母(八重子)が厳しい理由
硝子の障害が発覚した時期──つまり硝子が3歳の頃まではおそらく普通の母親だったと思われますが、次女の妊娠が発覚した際に『頑張る』ことを決意しています。
それは父親が居なくても、障害を持った子を育てることになろうとも、現実と向き合うという覚悟の表れであり、父親一家に心無い言葉を浴びせられたこの日を境に泣くことをやめました。
その後の様子は劇中で描かれている通り硝子が聴覚障害を持っていようが甘やかすことをせず健常者と同様に扱い自身は手話を覚えないという頑固一徹な行動を見せており、硝子を強い子に育てようとしました。
硝子が補聴器をなくした時なども全ては硝子が強く成長するチャンスだと考えて自分で解決することを望んでおり、時にはクラスのクソガキどもになめられないように硝子の髪型を男の子のように短くしようともしました。
「強くならなきゃダメなのよ、この子は!たとえ見た目だけでもね!」と厳しいことを言ってのけるのは、父親一家からの罵詈雑言や世間から爪弾きにされる障害を持つ子の現実をさんざん目の当たりにしてきた結果だと思われます。
八重子視点ではただ頼れるのは母のいとだけであり、その他の全ては自分たち家族を攻撃する外敵といった印象だったのではないかと考えられるため、八重子は知りませんが硝子に「死にたい」とまで思わせた石田将也および石田一家への憎悪は凄まじいものだったことでしょう。
公式ファンブックによると八重子は常に武装状態でいると書かれており、父親の役割を担っているという自負と自分と娘たちを守るために厳しくなったようです。
西宮いとの死去
西宮家にとって大きな転機となった出来事が祖母の他界です。
公式ファンブックによると、いとの存在は大きな溝ができてしまった親子関係を繋ぐ役割をもっていたようで、八重子・硝子・結絃にとっていとの存在は大きく、いともまた家族の抱える葛藤をよく見ている人物でした。
西宮家からその大きな存在がいなくなったことで残された三人は互いに向き合いそれぞれが一歩進むことになりますが、いとを失った心の喪失は計り知れず三人はそれぞれ誰にも見られないところで泣いています。
ちなみに八重子は食事中に料理の味付けに言及していたのは糖尿病のいとの体を気遣っての一言であり、いとがいなくなった後もいつもの調子で味付けに口出ししています。
父親一家の件、障害を持つ硝子を育てると決めた件、硝子と結絃の育児の件と苦境に立たされた自分を助けてくれた母の死去は八重子にとって離婚時の一件以来の衝撃でしたが、いとの死後は武装を解いたように石田にも攻撃的にならず結絃と仲良くなってくれたお礼を素直に伝えるようになりました。
結絃が動物の死骸写真を撮る理由
結絃が愛用しているデジタル一眼カメラは祖母に買ってもらったものですが、結絃はなぜか動物の死骸を撮り続けては見せびらかすように家の中に貼っています。
結絃が動物の死骸を写真に収めるようになったのは、硝子へのいじめが彼女を「死にたい」と追い詰めたことが発端であり、どうすれば硝子が死にたいと思わなくなるのかと自分なりに考えたところ目についたのが動物の死骸でした。
動物の死骸を見て嫌悪を示せば死にたいと思わなくなるのではないか、という希望的観測からたびたび動物の死骸を見つけては写真に撮り硝子に見せるという行為を繰り返し、自宅にもその趣味の悪い写真を飾っていたという経緯になります。
しかしながら、硝子が投身自殺をはかったことから自分のやってきたことは硝子に伝わっていない・ちゃんと言葉で「死なないで」と言えばよかったなどの後悔を抱いており、意味がないとわかったところで自宅に貼っていた大量の写真を剥がすことになりました。
その際、八重子に動物の死骸を撮る理由を打ち明けており、八重子は初めて結絃の気持ちを知ることになりました。
西宮家と石田家の和解
本作において石田将也は硝子をいじめた主犯格で「死にたい」と思わせた最低最悪の敵でしたが、5年後の将也は贖罪に生きており、硝子の障害と向き合い、結絃と仲良くしてくれ、硝子の投身自殺を助けてくれた恩人となりました。
そして、将也が退院した際には西宮家揃って石田家に謝罪に足を運びましたが、ケジメを付けるためにきっちりと謝罪をしたいという八重子とは対照的にぱあっと明るくいきたい美也子が話し合った結果、酒を飲み交わして意気投合することになりました。
その際、美也子が自分の夫が出て行った秘話を話して大いに盛り上がったようで、八重子と美也子が似たような境遇であることからシンパシーを感じたと思われます。
同じ母子家庭同士酒を通して本音で語り合ったせいか、二年後(劇場版アニメでは文化祭当日)には八重子が美也子の理容室で散髪して仲良く話している姿も描かれているあたり、以後も親交は続いているようです(八重子と美也子に関しては、その後も一緒に缶ビールを何個も空にして話している姿があり、将也も驚いています)。
将也に関しては硝子が上京する際の荷造りを手伝ってもらったりと八重子自身もすっかり気を許している姿が描かれているため、硝子の小学校時代を奪った過去は別として、現在の将也に関してはしっかりと向き合って認めているようです。
結絃に至っては将也に硝子にキスをしてもいいと冗談をいって揶揄う程度には将也の贖罪の覚悟を認めており、硝子を「死にたい」と追い詰めた張本人の将也を思い浮かべて「お前ならどうしてた?」と頼るほど将也の存在が大きくなっています。
結絃が登校するきっかけを作った硝子
結絃が知らないところで、硝子は県のコンクールに結弦の写真を出そうと思い八重子に写真を選んでもらい応募していました。
硝子に言われて八重子が選んだのは将也たちが見つけた鳥の死骸があった跡の写真であり、ちょうど野花や雑草を避けるように鳥の形が残っている場面を切り取った写真です。
結果は市のコンクールで優秀賞を獲得。
物語終盤で結弦は登校を再開していましたが、この写真のおかげで学校へ行くと知らない人にたくさん褒められたといいます。
硝子が応募を考えたのは結絃が学校へ行けるようになるためのきっかけを作る目的があり、結絃はこの一件で硝子の期待に応えようと進学に向けて猛勉強を始め、太陽女子学園への進学を果たしました。
硝子の上京
硝子は高校卒業後に尊敬している聴覚障害者の野良眠彦の下で働きながら理容師の資格を取るべく上京することになりました。
硝子の上京は健常者よりもよほどの覚悟が必要なこともあり、八重子は反対していました。
一方で結弦は硝子と離れ離れになる寂しさはあるものの、本来ならばこれからのことを考えるという行動は当たり前なことであり、今までの硝子ならば黙って地元に残る選択をしていたはずと考えたことから、硝子の意思を尊重しています。
八重子に関しては硝子の上京に反対していましたが、最終的には結絃が構わないならという理由で硝子を送りだすことに決めました。
卒業後、硝子が上京する際は車(自家用車あるいはレンタカー)に荷物を詰め込んで八重子自ら送迎しており、荷造りに関しては将也と永束がはせ参じたらしく、八重子が見送りにきてくれた二人にお礼を述べている姿が描かれました。
結絃が八重子にお土産を頼んでいることと、公式ファンブックで硝子が一人暮らしをしていると書かれているため、硝子は完全に自立して過ごしているようです。
なお、同じ上京組の佐原と植野とも定期的に遊んでいるらしく、最終話の成人式にも三人で出席しました。
まとめ
西宮家についてのまとめ
- 西宮家は「祖母:いと」「母:八重子」「長女:硝子」「次女:結絃」の四人家族であり、夫とは離婚している
- 夫は感染症に罹っていることを隠しており、それを知らない八重子が予防接種を受けていなかったため硝子に聴覚障害が出た
- 夫と夫一家は硝子の障害の責任を全て八重子に押し付けて罵詈雑言を浴びせた末に離婚している
- 夫一家と離婚協議をした後で結弦の懐妊が発覚
- 八重子は娘たちを強く育てる決意をし、いとは孫の育児と娘(八重子)を見捨てない決意をする
- 八重子が厳しいのは父親の役割を担う自負と娘を守ろうとする武装状態にあるからであり、硝子が自分でいじめを解決できようになってほしいという想いから
- 結絃が動物の死骸ばかり撮るのは、「死にたい」と言った硝子が動物の死骸を見れば死にたくなくなると思うと考えたから
- いとの死後、西宮家はそれぞれ涙を隠すように見られないところで泣いており、八重子はいとが結絃に宛てた手紙をきっかけに武装を解いたように変化する
- 八重子は美也子と和解し似たような境遇にある彼女と意気投合する
- 結絃は硝子が作ってくれたきっかけから不登校をやめて太陽女子学園へ進学する
- 硝子は卒業後、理容師になるために上京し一人暮らしをしている
西宮家が母子家庭になった経緯は劇場版アニメで描かれない部分でした。
原作漫画では、祖母が亡くなった際に母親の回想で離婚に至った経緯が語られましたが、父親とその両親は本作品の中で最もクズでした。
紆余曲折ありましたが最終的には西宮家と石田家が和解できた上に、八重子と美也子が酒を通して語り合えるような友人関係(?)になったことは驚きです。
聲の形 公式ファンブック 作者:大今良時 |
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