漫画『金田一37歳の事件簿』では、金田一一の高校生時代の宿敵・高遠遙一が獄中から新たな組織を動かしています。
彼らはギリシャ神話の神々の名を冠した「オリンポス十二神」を名乗り、37歳のサラリーマンとなった金田一一を再び殺人事件へと誘いました。
今回はかつて「地獄の傀儡師」と呼ばれた殺人鬼・高遠遙一が金田一に放った「オリンポス十二神」についてご紹介をしたいと思います。
「オリンポス十二神」とは
オリンポス十二神とは、死刑囚となった高遠遙一が「ゼウス」を名乗って率いる犯罪の使徒集団。高遠が厳選した者たちにギリシャ神話の神名をコードネームとして与え、犯行計画やトリックの構築を伝授しました。
彼らは、少年編(FILEやCASEシリーズなど)で知恵を貸した一般のマリオネットとは異なり、より本格的な「弟子」として育成された存在。横のつながりは薄く、各自が独自の動機で事件を起こす一方、情報の伝達や裏切り者の粛清を担う者もいます。
金田一の職場に潜入して動向を監視する者、影から実行犯を操る者など、手法は多様。金田一が「もう謎は解きたくない」と願う日常を、容赦なく事件の舞台へと変えていきました。
1. ゼウス / 高遠遙一
引用元:天樹征丸・さとうふみや『金田一37歳の事件簿』 出版:講談社
| 名前(本名) | 高遠遙一 |
| コードネーム | ゼウス |
| 怪人名 | 地獄の傀儡師 |
| 登場回 | ほぼ全編 |
死刑囚として脱獄不可能とされる特別拘置所に収監されながら、外部の使徒に計画を授け続ける組織の頂点。かつての「地獄の傀儡師」としてのカリスマは健在で、自らを「ゼウス」と称し、11人の使徒を選別・育成していました。
20年後の現在は白髪の長髪であるものの実年齢以上に若い顔立ち。金田一への執着は強まる一方で、本編では直接的に事件に関わることはないものの、オリンポス十二神に向けて『金田一一に挑戦し、彼の推理を凌駕できた者こそが、絶対神ゼウスである地獄の傀儡師と肩を並べる資格を手にする』とメッセージを放ったことで、金田一は知らず知らずのうちに試験台にされ彼らの監視下に置かれることとなり数々の事件に巻き込まれてしまいます。
最終話でアレスの手を借り脱獄を果たしています。
2. アルテミス / 麻生早苗
引用元:天樹征丸・さとうふみや『金田一37歳の事件簿』 出版:講談社
| 名前(本名) | 麻生早苗 |
| コードネーム | アルテミス |
| 怪人名 | 第4のファントム |
| 登場回 | 歌島リゾート殺人事件 |
表向きは看護師として、歌島で開かれたお見合いパーティーに参加した女性。穏やかな印象を装いながらも、その実態は長期間にわたって結婚詐欺を繰り返してきた犯罪者。ターゲットにした男性を保险金目的で殺害し、金づるを確保するために邪魔な人物を排除する手法を取っていました。
過去に高遠遙一と接触し、「弟子」として認められた一人。高遠から犯行の技術や計画の立て方を伝授され、オリンポス十二神のコードネーム「アルテミス」を与えられました。
歌島リゾート殺人事件では、かつてのオペラ座館があった島で連続殺人を実行。事件は「第4のファントム」によるものとされ、島に再び死の影を落とす形となります。金田一は仕事でこの島を訪れており、「もう謎は解きたくない」と願いつつも事件に巻き込まれることに。犯行の過程で指紋などの証拠隠滅には比較的無頓着な面があり、高遠の基準から見れば完璧とは言えない使徒でした。
最終的に金田一の推理によって正体を暴かれ、逮捕。取調では捜査員相手に自慢げに保険金殺人のターゲットにする男の条件(①金持ち、②お人好しで女経験が浅い、③殺しても疑いそうな親類がほとんどいない)や、今回手にかけた被害者とは初対面で恨みもないものの邪魔だったから殺したと語りました。
しかしその後、警察に対して組織の情報を必要以上に漏らしたことが高遠の耳に入ると彼は失望し、獄中の高遠の指示を受けた他の使徒の手により麻生に猛毒が付着したコンタクトを差し入れさせ、麻生は粛清される結果に。十二神の中で最初に本格的に表舞台に出たメンバーの一人でした。
作中ではあまりのぶっ飛び方から金田一が高校生の時に解決した事件の犯人にはちょっといないタイプと例えられています。
3. アポロン / 岡倉純
引用元:天樹征丸・さとうふみや『金田一37歳の事件簿』 出版:講談社
| 名前(本名) | 岡倉純 |
| コードネーム | アポロン |
| 怪人名 | 碧血鬼 |
| 登場回 | 函館異人館ホテル新たなる殺人 |
表向きは俳優で、アイドルグループ「スカイウォーカー」の元メンバー。函館異人館ホテルで上演された舞台『箱館ウォーズ』の演者として登場。事件では「碧血鬼」を名乗り、関係者を次々と殺害。オリンポス十二神の一員として高遠遙一から犯行の手解きを受けた使徒の一人であり、コードネームは芸能を司る神「アポロン」でした。
過去には、劇作家・女優の矢吹碧(ペンネーム・三多村匠)と将来を誓い合う関係でしたが、碧は業界の先輩である綾野木瑠香の指示のもと、小野寺隆司・赤座光輝・水島颯太らによって薬漬けにされた上で監禁・暴行を受け、逃げ出した際に階段から転落し、意識不明の重体に。この時、二人の間に宿っていた子供も流産しました。この惨劇を知った岡倉は、アイドルとしての自分を「死んだ」とみなし、碧の仇を討つ「復讐の鬼」へと変貌。碧が書き溜めていた原稿を基に覆面作家「三多村匠」として活動し、函館を舞台にした殺人劇を周到に準備しました。
事件では、小野寺を自宅で毒殺。舞台本番中に赤座と綾野木を射殺(水島が撃ったように見せかけた銃のすり替え)。さらに水島を自殺に見せかけて舞台上で殺害し、空中密室めいた状況を作り出しました。一見芸術的で演劇的な犯行であるものの、根底にあるのは純粋な怨恨。いずれも金田一にトリックを全て暴かれ、逮捕に至り、取調にて犯行動機を明かしました。
逮捕後、事件の全てを語った岡倉でしたが最後まで高遠遙一に関することは吐かず。明智に対しては「俺が死刑になったら…碧と一緒の墓に入るってのは可能かな?」と質問しており、明智はできる限り配慮はすると返答すると感謝を伝えましたが、岡倉は恐らく一緒の墓に入るのは無理だと悟り「せめて墓ぐらいは──と思ったけど、死んだ後もお前とは一緒にいられそうもないよ。お前は天国に行けても、俺は地獄行きだからな」と自らの運命を飲みこみました。
高遠に繋がることは黙秘しているためか、アルテミスのように粛清される描写はありません。また、金田一には「社員より探偵の方が向いている」と皮肉めいた言葉を残し、退場しています。
4. ヘルメス / 小美野悠人
引用元:天樹征丸・さとうふみや『金田一37歳の事件簿』 出版:講談社
| 名前(本名) | 小美野悠人(本名:如月悠次) |
| コードネーム | ヘルメス |
| 怪人名 | — |
| 登場回 | 綾瀬連続殺人事件 |
表向きは29歳のミステリー作家。オソカワミステリ大賞授賞式に出席し、金田一二三の恋人として登場。推理作家たちを集めた場や連続殺人の渦中で金田一と顔を合わせます。知的で落ち着いた物腰で、駆け引きにも長けており、金田一をして「手ごわい」と言わしめるほどの冷静さを備えた犯人。かつ、証拠の隠滅も徹底しており、自分から嘘の証言を引き出そうとする金田一に対しても隙を見せない強敵でした。
その正体は、15年前に起きた少年リンチ殺人事件の被害者・如月晃一の弟。兄が不良少年たちに殺されたにもかかわらず、少年法に守られて軽い処分で済んだことへの強い恨みを抱き続けていた中で、母親は精神的に追い詰められて自殺し、父親も失踪。親族のもとで生きるしかなくなった彼は、やがて高遠遙一の接触を受け「ヘルメス」のコードネームを与えられました。計略と騙しを司る神の名にふさわしく、作家としての知識と構成力を犯行に活かし、少年法に守られ出所した三人を殺害すべく巧妙なトリックを重ね連続殺人を実行しました。
金田一は事件の真相を暴くものの、小美野の計略と頭脳はずば抜けており、フミや真壁の協力を仰ぎ、決め手の一つである「ひっつき虫」を自作自演し自白を引き出すことで解決。また、小美野が自白するに至ったのはフミの涙を見てからの諦観であり、アリバイ工作自体は金田一でも自白を引き出すしか崩せない完璧なものでした。
一方で、高遠が関わっていることからフミへの接触は計画に利用するためだったものの、金田一は彼のアリバイ工作や動向から『本当にフミのことが好きになったから』完全に冷徹になりきれずにいた──と読み取り、彼がフミに罪を着せない選択をしていたこと、高遠と同じ世界に行きかけた小美野を救ったのはフミである──などを伝え、傷心するフミを慰めました。
また、小美野面会に訪れたフミに対し「…さようなら、フミちゃん。僕を魔界から連れ戻してくれて、ありがとう…」と感謝を述べており、最後の頼みとして、二人で訪れた海辺のカフェにもう一度訪ねて欲しいと伝えると、言われた通りカフェに訪れたフミに「ヘルメスの告白」と題したメモアプリが入ったスマートフォンを店員を介して渡しました。
スマートフォンは二三の指紋が登録されており、「ヘルメスの告白」の中身は高遠とのつながりを記したオリンポス十二神についての内容が書かれていました。後に金田一はフミを通じて、このメモアプリを見ることになります。
5. ヘーパイストス / 内神田洋
引用元:天樹征丸・さとうふみや『金田一37歳の事件簿』 出版:講談社
| 名前(本名) | 内神田洋 |
| コードネーム | ヘーパイストス |
| 怪人名 | — |
| 登場回 | 天空の密室殺人事件 |
表向きは音羽ブラックPR社の営業課課長で、金田一一の直属の上司。実は金田一が入社した直後に中途採用で入ってきており、音羽ブラックPR社より大きなPR会社で仕事ができると評判で入社当初は即戦力だったものの、3年目から本人の希望で営業課に異動。異動後は腰巾着のような仕事ぶりと性格に転向し、金田一を監視していました。
名前も顔も仮のもので、内神田洋という人間は存在するも本籍は青森で辿れるのは中学生の頃までということから、ホームレスか何かから戸籍を買った模様。本名・素顔は明かされていない。
正体は高遠遙一が率いるオリンポス十二神の一員「ヘーパイストス」。金田一を他の使徒が関与する事件の舞台へ巧みに誘導し、日常の延長線上で連続して殺人事件に巻き込む仕組みを内側から支える存在として機能。監視の協力者として庶務の氷川鏡美を利用していましたが、彼女が結婚を理由に会社を辞め、組織との関係も断とうとしたため、天空密室のトリックを用いて殺害を決行。裏切り者の粛清と同時に、金田一への挑戦も兼ねて犯行に至りました。
金田一が正体を暴き事件を解決した後、真壁に逮捕され連行されますが、真壁以外の警官が全て内神田の協力者であったため、真壁を眠らせて逃亡。その足で金田一に非通知で電話をかけると「次に会う時は違う顔でお相手したいな」と挑戦状を叩きつけており、最終話で高遠の脱獄に協力した際には金田一を気に入りファンを自称しました。
6. アレス / ケン・L・ベルローズ
引用元:天樹征丸・さとうふみや『金田一37歳の事件簿』 出版:講談社
| 名前(本名) | ケン・L・ベルローズ |
| コードネーム | アレス |
| 怪人名 | — |
| 登場回 | 首なしスキーヤー殺人事件 最終話など |
ギリシャ神話の戦の神「アレス」のコードネームを持つ、オリンポス十二神の一人。表向きはカウンセラーを名乗るなど、複数の顔を使い分けるプロの犯罪コーディネーターであり、自ら手を下すというより、他人の恨みや動機を利用して完璧な殺人計画を立案・指導し、事件を影から操るタイプ。高遠遙一が「ゼウス」として獄中から指示を出すのに対し、アレスは現場に近い位置で実行犯を動かす役割を担っていました。
その正体は、別作品『探偵学園Q』の世界で壊滅した犯罪組織「冥王星」の幹部・ケルベロス(本名ケン・L・ベルローズ)でした。当時は団探偵学園の精鋭を一度は打ち負かすほどの犯罪プランニング能力を持ち、催眠じみた暗示や高度な情報収集、組織運営の手腕で知られていましたが、冥王星崩壊後もその能力を失わず、高遠の使徒「アレス」の名で活動を再開した形となります。
『金田一37歳の事件簿』では、首なしスキーヤー殺人事件にも関与。参加者に変装し実行犯に死体発見場所やトリックを教え犯行を成功させようとしていましたが、金田一に謎を解かれ犯人が追い詰められたため、実行犯に暗示をかけ自殺へ誘導。失敗を「芸術の汚れ」と見なす高遠に近い価値観を持ちつつ、単独では難しい技術や広域の情報網を駆使する点で、他の十二神とは違い、明智や金田一からも「ただ者ではない」と警戒されています。
最終話では特別拘置所の監視員(看守)に変装していたことが明かされると、半年にわたって監視員全員に暗示をかけており、高遠の脱獄を先導。緋尻島での借りを返すため、金田一に再挑戦の意欲を表明しています。
7. ヘラ(正体不明)
引用元:天樹征丸・さとうふみや『金田一37歳の事件簿』 出版:講談社
| 名前(本名) | — |
| コードネーム | ヘラ |
| 怪人名 | — |
| 登場回 | 函館異人館ホテル新たなる殺人事件 |
高遠へ本の差し入れと称して外の情報を知らせる正体不明の人物。
オリンポス十二神の一員・ヘラのコードネームを与えられていることからおそらく女性。ギリシャ神話でゼウスの妻であり神々の女王とされるヘラの名を冠していることから、十二神の中でも重要なポジションと推測されます。
『函館異人館ホテル新たなる殺人事件』では、事件解決後に事件の顛末を事件関係者から情報収集し、その謝礼として100万円と「ヘラより。親愛なるユダへ」と書かれたメッセージを送りつけました。その際、関係者に何のためにと聞かれると「そこのことは気になさらない方がよろしいと思います。あなた自身のためにも──」と追及を許さず釘を刺しました。
本編では電話越しにしか登場しておらず、姿も年齢も不明。高遠と外部の間を繋ぐ連絡役として機能し続けています。
「オリンポス十二神」一覧
| 名前 | コードネーム | 詳細 |
| 高遠遙一 | ゼウス | 特別拘置所に収監されていたが、最終話で脱獄。 |
| 麻生早苗 | アルテミス | 歌島リゾート殺人事件の犯人。看護師および結婚詐欺師。逮捕後、収監中に使徒より粛清を受け毒殺される。 |
| 岡倉純 | アポロン | 函館異人館ホテル新たなる殺人の犯人。俳優。怪人名『碧血鬼』。逮捕され収監。 |
| 小美野悠人 | ヘルメス | 綾瀬連続殺人事件の犯人。ミステリー作家。元金田一一二の恋人。逮捕後、一二に「オリンポス十二神」に関する情報を提供する。 |
| 内神田洋 | ヘーパイストス | 天空の密室殺人事件の犯人。音羽ブラックPR社の営業課課長。経歴も名前も顔もすべて偽装したもので正体は不明。逮捕直後に逃亡。 |
| ケン・L・ベルローズ | アレス | 探偵学園Qで登場した「ケルベロス」。現在は使徒・アレスを名乗り「首なしスキーヤー殺人事件」に協力。高遠の逃亡を手助けする。 |
| 名称不明 | ヘラ | 正体不明の情報伝達役。声のみの登場。 |
| — | アテナ | 未登場 |
| — | ポセイドン | 未登場 |
| — | アフロディーテ | 未登場 |
| — | デメテル | 未登場 |
| — | ヘスティア | 未登場 |
まとめ
以上「オリンポス十二神」についての紹介でした。
オリンポス十二神は高遠を含めた、高遠が厳選した才能のある弟子たちであり、弟子たちは金田一の推理を凌駕し高遠と肩を並べる存在になるために殺人事件と共に金田一を巻き込んでいました。
他作品である探偵学園Qのケルベロスも本作で十二神の一人として登場したため、両作品は同じ世界観のようです。
残りの使徒は未登場で終わっているため、続編となる『金田一パパの事件簿』で登場するかもしれませんね。
![]() |
金田一37歳の事件簿 天樹征丸・さとうふみや (著) |
|
















-211x300.webp)