『鋼の錬金術師』の登場キャラクター、マース・ヒューズは、ロイ・マスタングとともにイシュヴァール殲滅戦を生き残った同期の戦友であり、妻グレイシアと三歳になる娘エリシアを家族に持つ一児の父親です。
愛妻家かつ娘を溺愛し他人に世話焼きだったヒューズは、劇中では誰よりも早く真実に辿り着いてしまったためにホムンクルスに殺害されてしまいましたが、完結後の現在でも読者の記憶に残る大人気キャラとなっています。
今回は、そんなマース・ヒューズの死亡についてご紹介したいと思います。
この記事で紹介する内容は?
- マース・ヒューズの死亡は何話?
- マース・ヒューズの死亡経緯
- マース・ヒューズは何に気づいて殺されたのか
- マース・ヒューズの殺害
- マース・ヒューズの死亡による周りの反応
マース・ヒューズの死亡は何話?
ヒューズの死亡は以下の通り。
単行本『鋼の錬金術師』 | 4巻、第15話『鋼のこころ』 4巻、第16話『それぞれの行く先』 |
アニメ『鋼の錬金術師』 | 第25話『別れの儀式』 |
アニメ『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』 | 第10話『それぞれの行く先』 |
ヒューズの死亡経緯
引用元:荒川弘『鋼の錬金術師』 出版:スクウェア・エニックス
本編、エルリック兄弟を中心に中央で起きたショウ・タッカーの合成獣事件と傷の男の事件後、中央の軍法会議所勤務のヒューズは多忙を極めていました。
一方でエルリック兄弟が傷の男に破壊された体を故郷のリゼンブールで癒して中央に戻ってきたと聞きつけ、ヒューズは彼らに会うために忙しい仕事の合間に顔を見せるのでした。
また、エルリック兄弟が賢者の石の研究が第五研究所で行われていたと突き止めて第五研究所に潜入し、ホムンクルスと相対。再び怪我を負い入院したさいにも病院に見舞いに訪れています。
そして、エドワードの病室にてエドワード、アルフォンス、アームストロング少佐、ヒューズの四人でエドが第五研究所で得た情報の共有を行うと、ウロボロスの入れ墨をしたエンヴィーなる者の存在、受刑者を使った軍の賢者の石の実験と錬成陣の痕跡、そして貴重な人柱と言われて生かされたというエドの事情を知ることに。
ヒューズはウロボロスの入れ墨について軍法会議所の犯罪リストを漁ろうと、アームストロング少佐はドクター・マルコーの下で石の研究に携わっていた者たちを調査しようと考えました。
しかし、情報共有中に病室にやってきたのがキング・ブラッドレイ大総統であり、彼は『賢者の石』についてある程度認識している素振り、かつ軍内部で不穏な動きがあることを認知しているとして、アームストロング少佐が調査しようとしたマルコーの下で研究に携わっていた者は第五研究所崩壊数日前に全て行方不明になっていること、更に現状では敵の規模が窺い知れないとしてその場の全員に本件についてはヒューズたちの身の安全を理由に口外禁止及び調査をも禁じるのでした。
そして場面は変わり、エドが退院して師匠イズミ・カーティスに会いにダブリスに旅立つ一方、ヒューズは職場で部下のフォッカーからリオールの暴動についての進捗状況聞くと、とあることに気づいてしまうのです。
ヒューズは何に気づいた?
職場で新聞(もしくは資料)に目を通していたヒューズは、部下のフォッカーが話すリオールの暴動とイシュヴァールの内乱、ひいては東部だけではなく北も西も暴動や国境戦が立て続けに勃発しているという話題から一つの可能性を閃き、過去の記録を調べるために一人で書庫へと向かうのです。
そして書庫ではアメストリスの地図を広げて過去の暴動や内乱、国境戦が起きた場所に印をつけていくと、賢者の石の材料が人間であり、その錬成陣の形をエドから共有していたヒューズはアメストリス国を土台に巨大な錬成陣を何者かが刻もうとしていることに気づくのでした。
「おいおい、どこのどいつだこんな事考えやがるのは…。早く少佐と大総統に…」
軍法会議所勤務でありいつでも過去の資料を閲覧できる立場になったヒューズは誰よりも先に何者かが『国土錬成陣』を行おうとしているという事の重大さを知ってしまったのです。
後に彼の最期の言葉となる「軍がやばい」とは、国土錬成陣とはまた別に軍内部または上層部に敵が潜んでいることを確信したため。
ヒューズの死亡まで
国土錬成陣に気づいたヒューズはアームストロング少佐や大総統に報告を急ごうとしますが、書庫に現れたのは色欲のラストでした。
エドが第五研究所で遭遇したというエンヴィーとお揃いのウロボロスの入れ墨を胸元に刻むラストを前に緊張感を募らせるヒューズ。ラストはヒューズが知ってはいけないことを知りすぎたために始末しようと試みますが、爪で攻撃したところヒューズは紙一重で急所を躱すとカウンターで暗記のように仕込んでいたナイフを投擲。
自身は右肩を打ち抜かれるもののラストの額をナイフで射抜き一度ラストを殺害するのでした。
現段階ではホムンクルスが何度も再生することを知らないヒューズは、ラストが死んでいる間に書庫を脱出すると、窓口勤務の受付嬢の前を通り一度大総統府に連絡するために軍の回線を利用しようとしますが、寸での所で軍内部に敵が潜入している可能性を想定して思いとどまると、救急箱を持って駆け付ける受付嬢の制止を振り切って外の公衆電話へと向かいます。
ヒューズが連絡をとろうとしたのは東部勤務のロイ・マスタングであり、急いで東方司令部へと繋ぎますが、外線電話からの連絡はコード確認が必須のためヒューズは慌てて手帳を取り出すと電話番にコードを伝ええマスタングに代わるように急かすのです。
「早くしろ!軍がやべえ!!」
しかし、その際に手帳に大事に挟んでおいた家族写真がはらりと地面に落ちると、その写真を踏むようにマリア・ロス少尉に変身した嫉妬のエンヴィーが銃口をヒューズに向けて登場。
受話器を置くように脅されたヒューズは、目の前のロス少尉に泣き黒子がないことから銃を構えるロス少尉が偽物であると断定。泣き黒子について指摘されたエンヴィーが目の前で黒子を作り出すとヒューズはロス少尉に化けたそれが人間ではないことを改めて思い知ります。
まるで悪夢のような現実に背を向けて頭を抱えるヒューズでしたが、家で帰りを待つ家族のためにここで死ぬ訳にはいかないと奮起。隠していたナイフで反撃に試みますが、再び振り返るとそこに立っていたのはロス少尉ではなく愛する妻・グレイシアだったのです。
グレイシアに変身したエンヴィーは「いい演出だろう?ヒューズ中佐」と一言添えると、ヒューズは例えそれが偽物のグレイシアだと理解していても攻撃を加えることを躊躇してしまい、悲痛な表情を浮かべながら射殺されるのでした。
一方で東方司令部勤務のマスタング大佐の下に一般回線から通信が回されると、受話器に耳を当てたところ何も返答がしないことを不審に思い「ヒューズ?ヒューズ…おいっ!ヒューズ!」と声を掛けます。
しかし、一向にヒューズからの返答がないことから悪い予感がマスタングを掻き立てるのですが、その時ヒューズはすでに公衆電話内で息を引き取っていました。
こうして知ってはいけないことを知ってしまったため、ヒューズはホムンクルスに始末されてしまったのです。
ヒューズの葬式
引用元:荒川弘『鋼の錬金術師』 出版:スクウェア・エニックス
ヒューズの死の後日、中央軍により殉職して二階級特進したヒューズ准将の葬式が執り行われると、マスタングも参列。
ヒューズの棺を埋葬する際には幼いエリシアはなぜ父親を埋めるのかを理解できず「ねぇ、おじさんたちどうしてパパを埋めちゃうの?そんなことしたらパパおしごとできなくなっちゃうよ…」と悲痛の訴え。
エリシアの問いかけに困る穴掘りの軍人でしたが、グレイシアは涙を流しながらもエリシアをただ抱きしめるのでした。
そして、軍帽で視界を遮り涙を堪えるアームストロング少佐。無言で体を震わせるブラッドレイ大総統。俯くマスタングを写した後、エリシアの「いやだよ、埋めないでよ……パパ……!!」という悲痛な叫びとともにヒューズを埋葬して葬送式は終わるのでした。
ヒューズの葬送式の後、彼の墓前にマスタングは佇んでおり、かつて自分の下について助力すると述べた者が自分より上に昇格してどうするのだと愚痴をこぼします。
そして、ホークアイがやってくると、マスタングは今になってやっとエルリック兄弟が母親を錬成しようとした気持ちが理解できるとして、頭の中で人体錬成の理論を必死に組み立てていることを打ち明けます。
ホークアイに心配されるマスタングでしたが、軍帽を被りなおすと雨が降ってきたと発言。実際には雨が降っていないので不思議に思うホークアイでしたが、ふとマスタングに向き直ると彼の頬に雫が伝っていることに気づくのでした。
ヒューズの死のそれぞれの反応
ヒューズの死後、マスタングはアームストロング少佐からの報告により本件に軍上層部とエルリック兄弟が探し求める賢者の石が関わっていることを知ります。
そのため、中央に異動になるのを契機に上層部を探ることにしたマスタングは、大総統の地位をもらうのもヒューズの仇を討つのも全て私個人の意思だとして上層部に食らいつく覚悟を決めました。
エルリック兄弟は世話になったヒューズにはいつかお礼をしなければならないと考えており、ウィンリィもグレイシアに教わったアップルパイをいつか食べてもらおうと思っていましたが、中央に戻ってきた際にマリア・ロスの事件を発端にヒューズの死を知ることに。
ウィンリィは悲しみに打ちひしがれ、エルリック兄弟は自分たちが探し求める賢者の石について調査してくれていたヒューズが軍法会議所の資料を紐解いて軍の暗部に繋がる極秘情報を知ってしまい犯人側の警告によって殺害されてしまった可能性をグレイシアに説明し謝罪に訪れました。
自分たちがヒューズを巻き込んでしまった罪悪感からただ謝ることしかできなかったエルリック兄弟は、元の身体に戻ろうとすることでこの先も被害者が出るかもしれないことを恐れて賢者の石捜索を断念しようかと考えていました。
しかし、グレイシアは人助けをしようとして死んだのならヒューズらしいと困ったように笑って見せると、「ここであなた達が諦めると言うのなら主人の死は全くの無駄になります。賢者の石とやらがダメなら他の方法があるかもしれないじゃない。自分達の納得する方法で前へ進みなさい」とエルリック兄弟の背中を押すのでした。
ですが、グレイシアはエルリック兄弟を見送った後に人知れず泣いており、エドワードはヒューズ家を立ち去る際にふと窓辺を見上げるとその様子を目撃してしまい心を痛めています。
エドはグレイシアに発破をかけられたもののいっそのこと罵ってくれたほうがよかったのにと無力感に苛まれており、ホテルに戻った後はウィンリィがグレイシアに教わって焼いたヒューズに食べてほしかったというアップルパイを食べて、ウィンリィを慰めました。
その後、ヒューズの死や彼が遺した真実への糸口はマスタングやエルリック兄弟がホムンクルスを追い詰めるための道標となっており、全てを解決した最終巻では『10をもらったら自分の1を上乗せして11にして次の人へ渡す』というエルリック兄弟なりに考えた恩返しの法則の礎となっています。
『シャンバラを征く者』のヒューズ
鋼の錬金術師のアニメ化は2003年版と2009年版の二種類が存在しており、ネット上では2003年版を一期、2009年版を二期と呼称することが多いようです。
一期が放送された頃にはまだ原作が中盤あたりだったためにほとんどアニオリ傾向の強い本編とはかけ離れたダークファンタジー構成となっていますが、ヒューズの死亡に関してはオリジナル要素が練りこまれていたものの結末は概ね原作通りです。
しかし、2005年7月23日に公開された劇場版『鋼の錬金術師:シャンバラを征く者』は一期の最終回後を描いた作品であり、真理の扉の向こう側は第一次世界大戦後のドイツに繋がっているという設定。その世界には鋼の錬金術師においての登場人物と瓜二つのキャラクターが存在しており、ヒューズはミュンヘンに駐在する警察官として再登場しました。
そして、花屋のグレイシアに密かに思いを寄せる独身でもあったのです。世界観が違う別人であるものの、まったく同じ人を好きになるあたり、中身は鋼の錬金術師の世界のヒューズそのままですね。
本編のヒューズとは若干異なる性格であるものの本質は一緒であり、当初は差別主義者でしたが内面はお節介で世話焼きな一面も同じ。ナチス入党者であるものの最終的にはナチスを裏切り花屋のグレイシアの下へ生還しています。
その後の様子は描かれていませんが、おそらくグレイシアに告白して平和に生きていると思われます。
本編では一期二期とどちらも死亡してしまいましたが、こちらの世界のヒューズはグレイシアと幸せになれそうなので唯一救われた世界戦の作品かもしれませんね。
まとめ
- マース・ヒューズは妻グレイシアと三歳になる娘エリシアを家族に持つ一児の父親
- マース・ヒューズは世話焼きな性格でエルリック兄弟が元の身体に戻るための手助けを買って出ており、本編では軍法会議所勤務の立場から収集した情報をもとに『国土錬成陣』について知ってしまう
- 何者かがアメストリス国を使って『国土錬成陣』を刻んでいることを知ったヒューズは、ホムンクルスによって暗殺される最期を迎える
- ヒューズの階級は中佐から殉職で二階級特進で准将になっている
- ヒューズの死はエルリック兄弟やマスタングがホムンクルスやお父様に立ち向かうための道標となっている
ヒューズは家族大好きお節介おじさんとしてキャラが定着していたギャグ要員でしたが、物語の大筋が絡むと有能ぶりを発揮するかっこいいキャラです。
部下や同僚ひいては上司からも愛されているヒューズが殉職する展開は何度読んでも涙腺にくるものがありますが、彼の死は物語を急激に加速させる起爆剤でもありました。
鋼の錬金術師は劇中の合間や最後までこういった犠牲になったキャラクターを忘れずに思い出しているのが魅力だと思います。