荒川弘先生の作品『鋼の錬金術師』のキング・ブラッドレイといえば、作中でも大人気の敵役です。
今回は、ブラッドレイの正体判明から強すぎる戦闘シーンや最後について紹介したいと思います。
この記事で紹介する内容は?
- ブラッドレイの正体や過去
- ブラッドレイの能力
- 強すぎる戦闘シーン
- ブラッドレイの最後と死亡
キング・ブラッドレイの正体
引用元:荒川弘『鋼の錬金術師』 出版:スクウェア・エニックス
【ホムンクルス名】 | ラース |
【七つの大罪】 | 憤怒 |
【ウロボロスの入れ墨】 | 左目 |
【能力】 | 人を超越した身体能力と戦闘能力 |
【死地】 | 中央司令部地下空洞 |
【討伐者】 | 傷の男(スカー) |
【声優】 | 柴田秀勝(しばた ひでかつ) |
キング・ブラッドレイの正体は、お父様が計画の最終的な切り札として生み出した人間ベースのホムンクルスであり、人と同じように年を重ねる仕様になっています。
13年前にはイシュヴァールに血の紋を刻むために内乱の鎮圧という名目でイシュヴァール殲滅戦を決行し、大勢の命を奪う指揮を執りました。
約束の日に必要な人柱を用意するために優秀な人材を探す役割も兼ねており、弱冠12歳のエドワード・エルリックの国家錬金術師資格の譲渡をはじめ、その師匠のイズミ・カーティスを勧誘するためにわざわざ中央からダブリスに視察に赴く他、最終決戦ではロイ・マスタングに扉を開けさせるために無力化させるなどの活躍をしています。
ブラッドレイの正体を知る者は同じホムンクルスや軍部上層部のお父様陣営のみですが、単行本12巻時点でシン国のリン・ヤオらに正体を明かすと、そこからエドやマスタングにも伝わりました。
キング・ブラッドレイという名はアメストリスを導くために与えられた名であるため、本名は不明。
ブラッドレイの過去と誕生
ブラッドレイは本当の親の名も顔も自分の名すら覚えていません。
名を付けられる前に捨てられたか或いは買われたのかも分からないと作中で語っており、物心ついた時から白衣を纏う者達(金歯の医者などの研究者)に見守られていたことは記憶に残っています。
幼少期、物心ついた時から『大総統候補』と呼ばれる数名の子供達と共に一ヵ所に集められ、剣術・銃術・軍隊格闘・帝王学・人間学など、国を動かす人物になる訓練や教育を受けていました。
やがて体力的にも精神的にも充実する年齢に達すると、賢者の石を人間に注入して人造人間を生み出す実験に連れて行かれ、抵抗空しく『憤怒』の賢者の石を体内に注入されることに。
他人の魂が多数含まれている高エネルギー体である賢者の石を生身の人間の血液に入れられると肉体の持ち主との拒絶反応で暴れまわりその肉体の持ち主を乗っ取ろうとします。
既に11人の犠牲者が出た後、体内の賢者の石と闘いのたうち回り死線をさまようと、肉体は石による破壊と補修を繰り返します。
そして元の体が賢者の石に打ち克った時、アメストリスのリーダーとしてキング・ブラッドレイと名付けられました。
人間ベースのホムンクルスを生み出す実験は12体目にして成功。
ブラッドレイが『名無し』である理由
初の人間ベースのホムンクルスとして誕生したブラッドレイですが、そこに残ったのは『憤怒』の感情とたった一つの魂だけでした。
ただし残ったたった一つの魂が賢者の石にされた誰かのものなのか、それとも元々あった自分のものなのかはブラッドレイ自身も分からないと言います。
魂が一つしか残っていないから傷を治療するエネルギーが無いのかもいしれませんね。
ブラッドレイの能力と『最強の目』
賢者の石に打ち克ったブラッドレイの左目はその時の実験で腐り落ちてしまいましたが、その代わりに人を超えた能力を身につけ体の保持に成功しました。
その能力は、人を超越した身体能力と戦闘能力、そして敵の攻撃を完璧に見切る『最強の目』であり、目が良すぎるためどこをどう動けば良いかなど一瞬で判断できるのが強みです。
しかし、歳を重ねるのがブラッドレイの弱点であり、ホムンクルスと言えども身体能力は全盛期に比べると幾分か落ちている状態が作中でのブラッドレイでした。
それでも劇中では連戦に次ぐ連戦でようやく倒せる実力の高さです。
ブラッドレイの強すぎる戦闘シーン
ブラッドレイは『最強の目』という性質上他のホムンクルスのような特殊な攻撃手段を持たないため、唯一武器を使用して戦います。
しかし、それでもブラッドレイが「強すぎる!」と読者に言われるのには劇中で描かれた圧倒的な戦闘能力の高さが理由です。
代表的な戦闘シーンと言えば、
- グリードを硬質化前に斬り刻み無力化(7巻29話、アニメ14話)
- デビルズネストの合成獣ドルチェットとロアを瞬殺(8巻30話、アニメ)
- グラトニーを赤子同然に扱うランファンとの間合いを一瞬で詰めて致命傷を与える(11巻45話、アニメ22~23話)
- 中央司令部正門でブリッグズの戦車を正面から撃沈しバッカニア大尉を下す(24巻97話、アニメ)
- リン(グリード)とブリッグズ兵相手に一人で立ち回り次々と撃破(24巻98話、アニメ)
- フーの決死の自爆をダイナマイトの導火線のみ切断することで阻止(24巻99話、アニメ)
- 満身創痍の状態でマスタングの焔を躱すだけにとどまらず爆風で加速して間合いを詰めマスタングを無力化(25巻101話、アニメ)
- 満身創痍の状態で傷の男と接戦(26巻105話、アニメ)
このように、五体満足であればほぼ全戦快勝に近い余裕のある戦いぶりですが、さすがに複数人の猛者を相手にしたり、命を投げ打って突撃されると物理的に受け流しきれませんでした。
ただ、満身創痍の状態でようやく倒せる見込みが出てくる程度なので、ブラッドレイの強さはホムンクルスの中でも群を抜いているように思えます。
これでも歳のせいで目では追えても体が言う事をきかないと本人は悪態づいているところが恐ろしいですね。
ですが、ホムンクルスの中の強さで考えると、プライドに勝てるビジョンが浮かばないですし、傷が治らないという最大の弱点があるので完全にチートというわけでもありません。
キング・ブラッドレイの最後の戦い
引用元:荒川弘『鋼の錬金術師』 出版:スクウェア・エニックス
中央司令部正門前の闘い | 24巻97~100話、アニメ |
対戦相手 | ブリッグズ兵、バッカニア大尉、グリード(リン)、フー |
東部で行われる合同演習の視察に出向いたブラッドレイは、列車を爆破され一時行方不明に。ですが、約束の日当日ブリッグズ兵が中央司令部を制圧し歓喜に包まれる最中、中央司令部正門前に現れ帰還を大々的に伝えるのでした。
ブラッドレイは単身でブリッグズ兵をなぎ倒し正門までやってくると、グリード(リン)の参戦を受け、ブリッグズ兵とグリードを相手に交戦。ブリッグズ兵を数人斬り伏せ、グリードを圧倒していきます。
しかし、バッカニア大尉の腹部を突き刺すと腹筋の力で刀が抜けずに得物を手放すことになり、ブリッグズ兵の遺体から短剣を拾い仕切り直しに。そして、短剣でグリードを圧倒しているとフーが参戦し、ブラッドレイはグリードとフーと交戦。
一度グリードの動きを止めると標的をフーに絞り、連撃を打ち込んだ隙にフーの刀身の長い獲物を掠め取ると、本来の立ち回りに戻りフーに傷を与えます。そして、流血で視界を掠めたフーの間合いに踏み込み致命傷を与えるのでした。
止めを刺そうとした所、グリードとリンの人格が入れ替わりフーを奪取。その様子を前にブラッドレイは、かつてランファンを庇ったときのことを話しに持ち出し最後同じ忠告をします。
死期を悟ったフーはリンを肘打ちで倒すとグリードに硬化を指示し、自身はダイナマイトを着火しブラッドレイと心中するために突撃。死出の旅にブラッドレイを道連れに、と考えたフーでしたが、ブラッドレイは難無く導火線のみを切断すると同時にフーの腹部に横薙ぎの傷を負わせるのでした。
しかし、命を懸けた攻撃も防がれたフーの何とその背後、死角となるフーの背後からバッカニア大尉が刀を構えフーと共にブラッドレイの腹部を貫きます。
『最強の目』をもってしても見えない所からの攻撃では対処できないブラッドレイは腹部に重傷を負うと、フーとバッカニア大尉を蹴飛ばし距離を取ります。しかし、すかさずグリードが飛び込むと、傷により姿勢が崩れたブラッドレイは攻撃を完全に受け流せず左目を損傷してしまうのでした。
同刻、お父様の許に人柱を送る錬成反応が立ち昇ると、グリードの意識が一瞬そちらに向き隙が生じます。ブラッドレイはすかさずグリードの腕を掴み一本背負いすると、足場の端に頬り投げ、その勢いのままグリードと共に高所から堀へ転落することに。
寸前で縁を掴んだグリードの片腕を掴み落下を免れるブラッドレイでしたが、駆け付けたブリッグズ兵の銃弾を右肩に浴びて落下し、水没します。
こうして中央司令部正門前の闘いはブラッドレイの離脱で一時休戦となりました。
ブラッドレイの最後
中央司令部地下の闘い | 25巻101~26巻105話、 |
中央司令部正門前で堀に落とされたブラッドレイは、満身創痍の状態で水路を泳ぎ中央司令部地下へ通じる穴を通り、ロイ・マスタング達の許に姿を現します。
マスタング達は、金歯の医者及びキング・ブラッドレイになれなかった大総統候補達を打ち倒したばかりでしたが、満身創痍のブラッドレイと出くわすと、更にプライドが合流しました。
ブラッドレイは先ず5人目の人柱を用意するためにマスタングに速攻を仕掛けると、焔を躱して接近し両手を刀で突き刺し床に固定。プライドが金歯の医者を構築式に利用してマスタングに強制的に真理の扉を開かせると、プライドはマスタングと共にお父様の居る地下最奥へ転送します。
そして、その場に残るのはホークアイ中尉、合成獣(ダリウス、ザンパノ、ジェルソ)、メイとシャオメイ、傷の男、そして対峙するブラッドレイの7人と1匹。
傷だらけのブラッドレイ一人に勝てる光景が浮かばない一同でしたが、傷の男が地面を壊すことで更に地下にいるお父様の妨害を他の仲間に託すと、ブラッドレイと傷の男がその場に残り交戦することに。
最期の相手は名を捨てた傷の男と認識すると、ブラッドレイは名無し同士殺し合う余興を楽しむように刀を構えるのでした。
一方的に斬り刻んでいくブラッドレイでしたが、窮地に陥った傷の男は兄の研究書から得た再構築の錬成陣を左腕に刻んでおり、傷の男が錬金術を使用する筈がないと思い込んでいたブラッドレイの意表を突きます。
錬金術(物質の構築)は万物の創造主イシュヴァラへの冒涜と謳う傷の男でしたが、最終的に辿り着いたのは兄が遺した研究成果から得た再構築の錬金術であり、ブラッドレイはイシュヴァラの教えを捨てた傷の男の行動に非難し、攻め急ぐことに。
神とはその程度の存在なのか、と詰め寄るブラッドレイでしたが、イシュヴァール殲滅戦で神などこの世にどこにもいないとことを思い知ったはずと詰め寄ると、同刻、日食が終わり太陽光が頭上の穴から降り注ぐのでした。
位置的に傷の男とは逆光になりブラッドレイは太陽光に視界を遮られると、傷の男は一瞬無防備となったブラッドレイの両腕を正面から破壊します。
しかし、両腕を失ったブラッドレイは折れた刀を口で咥えて傷の男を袈裟斬りし、痛み分けを与えるとその場に仰向けに倒れるのでした。
ブラッドレイの死亡
ブラッドレイの最後と死亡 | 単行本26巻105話、アニメ |
天運も神も信じていなかったブラッドレイですが、最後の最後には太陽光に視界を奪われるという、『最強の目』を持つブラッドレイには皮肉たっぷりの神に見放される最後となりました。
これまでの連戦でブラッドレイは以下の負傷・致命傷を負っています。
- 脇腹の刺し傷:フーとバッカニア大尉
- 左目の裂傷:リン(グリード)
- 両肩の銃創、裂傷:ブリッグズ兵、傷の男
- 両腕の損傷:傷の男
ブラッドレイは中央司令部広場から地下空洞までの連戦で既に満身創痍でしたが、傷の男の攻撃が致命傷となり死期が迫っていました。
そこに現れたのがランファンであり、ランファンは「言い残す事は無いカ?」と訊ねると、ブラッドレイは「無い!!」と精悍な顔つきで断言します。
「貴様には愛する者はいなかったのカ?友ハ?仲間ハ?妻ハ?」と並び立てるランファンでしたが、ブラッドレイはランファンの言葉を下らぬ言葉と一蹴。
しかし、それは言い残す言葉が無いという意味ではなく、王たる者の伴侶としてブラッドレイが選んだ夫人との間に余計な遺言は必要無いという意味であり、愛だの悲しみに縛られるランファンに向けて「なめるなよ」とキング・ブラッドレイという人間兼ホムンクルスとしての矜持を見せつけました。
そして、ランファンと押し問答を広げる内にたった一つの賢者の石のエネルギーも底を尽きると、急激に老化が始まり死を認識します。
ブラッドレイは最期に「用意されたレールの上の人生だったが、おまえ達人間のおかげで、まぁ、最後の方は、多少、やりごたえのある良い人生であったよ」と満ち足りた表情で事切れるのでした。
お父様に用意された人生でしたが、思い通りにならない人間たちのあがきを嬉しく思う気持ちが芽生えたブラッドレイは、ホムンクルスの中でも充実した人生だったように思えます。
ブラッドレイが辿り着いた境地
ブラッドレイは最期の相手の傷の男の前にして人生の境地に辿り着いています。
死に直面することで地位・経歴・出自・人種・性別・名を必要としない何にも縛られず誰のためでもなくただ闘うということが心地よく、純粋に死ぬまで闘い抜いてやろうという気持ちしか湧いてこない境地に立っていたのです。
それがブラッドレイが求めていた用意されたレール外の生き方だったのか、最期には「ああ…やっと辿りついた……」と清々しい表情を浮かべました。
キング・ブラッドレイについてのまとめ
- ブラッドレイは人間ベースのホムンクルスで歳を重ねる
- ブラッドレイの七つの大罪は『憤怒』
- ブラッドレイは物心ついた時から大総統候補の教育を受けていたため、本当の両親の顔や名前、自分の名前も知らない
- お父様が作り上げた賢者の石『憤怒』を血液に注入され激しい拒絶反応と戦った結果、誰のものか分からない魂が一つだけ残った
- ブラッドレイのウロボロスの入れ墨は左目
- ブラッドレイの能力は人を超越した身体能力と戦闘能力と敵の攻撃を完璧に見切る『最強の目』
- ブラッドレイは『約束の日』当日の闘いで、ブリッグズ兵・バッカニア大尉・リン(グリード)・フー・マスタング・傷の男と連戦
- ブラッドレイは満身創痍の状態で最期に傷の男と闘い、天に見放されて敗北
- 最期は「やりがいのある良い人生だった」と遺し満ち足りた表情で死亡
ホムンクルスの中でも強敵だったブラッドレイですが、数的有利を活かした戦略で連戦を重ねることでようやく打ち取ることができました。
しかし、ブラッドレイ自身は人間達のあがきを間近で見るにとどまらず、自身も死に直面することで何者にも縛られない闘いに身を置くことができ、用意されたレールの上の人生の最期にやりがいを学び充足感に満ちた表情で死亡しました。
ブラッドレイとの因縁があるキャラクターが多かった分、誰がブラッドレイを打ち取るのか予想したものですが、最期に傷の男をもってきたのは神采配でしたね。