2023年4月14日公開、劇場版名探偵コナンシリーズ第26作目『黒鉄の魚影』は、黒の組織と灰原哀の邂逅、そして主題歌をスピッツが担当したことから一気に話題になりました。
そんな中、上映後に印象強いのが組織に潜入中のキールの活躍です。
今回はキール(水無怜奈 / 本名:本堂瑛海)の黒鉄の魚影の活躍についてご紹介したいと思います。
この記事で紹介する内容は?
- キールの立ち位置のおさらい
- キールの黒鉄の魚影の活躍まとめ
- キールと灰原の面識について
- キールが黒鉄の魚影のMVPと言われる理由
黒鉄の魚影のキールの立ち位置
引用元:青山剛昌『名探偵コナン 黒鉄の魚影』 制作:トムス・エンタテインメント
キール(水無怜奈 / 本名:本堂瑛海)は、黒ずくめの組織の構成員で『酒』のコードネームを与えられた幹部の一人。表向き日売テレビのアナウンサーでありながら(現在は療養を理由に休職)、正体はCIA(中央情報局)の諜報員でした。
4年前、同じく組織に潜入していた父のイーサン・本堂の機転によって組織の信用を得たキールでしたが、キール編『ブラックインパクト(48~49巻収録)』でひょんなことからコナンやFBIに黒ずくめの組織の一員とばれてしまい、黒の組織編『赤と黒のクラッシュ(58巻収録部分)』にて本堂瑛祐にFBIの証人保護プログラムを適用させることを条件に赤井秀一およびコナンと結託。
しかし、あくまでもCIAの任務を優先させるという条件付きでの協力関係であるため、赤井もFBIに不都合がある場合でもキールの行動に制限をかけることはできません。
一度はベルモットにNOC(Non Official Cover)と疑われたキールでしたが、コナンの奇策である楠田陸道の遺体を利用したトリックを活用し、来葉峠にて赤井秀一を呼び出すとジンやウォッカがモニター越しに見ている目の前で赤井秀一の殺害という偽装工作を達成し組織に戻ることができました。
その後は『RAM』などの情報を定期的に赤井に伝える協力者の一人となっています。
黒鉄の魚影のキールの活躍
本作では黒の組織が登場するのでもちろん本堂瑛海もキールとして登場。
本作の簡単なあらすじとしましては、
老若認証(骨格から老化や若返りを計算しその顔をCGで作り、それと合致する顔を顔認証で捜すシステム=世界中の防犯カメラ映像が対象)の開発者である直美・アルジェントを拉致した際、彼女が所有する画像ファイルを閲覧したところ宮野志保と灰原哀を映した防犯カメラの画像が──。
この画像データを閲覧したのはウォッカ・ベルモット・バーボン・キールの四名でしたが、シェリーと瓜二つの子供・灰原哀が何らかの手段で小さくなっているのではと疑念を抱くウォッカとは裏腹に、他三名は知らないフリをしつつ組織の命令で動く模様。
一方で宮野志保と灰原哀が同一人物であると疑われることになり、ピンガとウォッカが本来の目的の副産物として半信半疑ながらも灰原哀を拉致しますが、灰原哀を救出するためにコナンが奮闘し、その影では赤井秀一や安室透、更にはベルモットまでコナンの味方をする。
また、ウォッカから連絡を受けたジンは、シェリーはベルツリー急行で死んだはずと思いつつもシェリーと瓜二つの灰原哀が本当に生き延びていたシェリーなのか確認するためドイツから日本へ急遽移動。
という筋書きになります。
組織の目的としては老若認証を改竄して過去の防犯カメラの記録から組織の痕跡を消すというのが『あの方』からの命令でしたが、本作は思わぬ収穫である灰原哀を拉致する計画へ移行(ベルモット、バーボン、キールは理由をつけて灰原哀の拉致には不参加)、また、ラムに関しては今回の老若認証で『あの方』の居場所を突き止める腹積もりだったという背景もあります。
そこでキールですが、実はキールは今回直接コナンとコンタクトを取っているわけではありません。何となく事情を察して陰ながら灰原が助かるように動いていたのが今回のキールの立ち位置であり、活躍でした。
その①ユーロポーロ職員ニーナの逃走の手助けとピンガの情報共有
物語冒頭、ドイツのフランクフルト『ユーロポール防犯カメラネットワークセンター』に侵入したピンガを見つけてしまったユーロポールの職員ニーナ。彼女は他の職員帰宅後にたまたま遅くまで残っていたのか帰ろうとしたときに誰かが施設にいることに気付きピンガと遭遇してしまった不運な職員でしたが、ピンガの素顔を見てしまったために始末されることになりました。
ピンガが連絡したのはこの時一緒にフランクフルトまで任務に来ていたキールであり、キールがニーナを追うことに。(後にジンもすぐに登場したので数人でフランクフルトに?)
夜の街を逃走するニーナをバイクで追い詰めるキールは、心の中で『(そっちに逃げないで)』などと祈っており、橋で追い詰めた際にはドイツ語を使用して川に飛び込むように小声で呼びかけるなどの可能な限りの努力をしました。が、残念ながらピンガの通信を受けていたのか現場にジンが到着。キールはジンによって背後から右肩を撃ち抜かれますが、キールの右肩を貫通した弾丸がニーナの側頭部を撃ち抜き彼女の逃走幇助に失敗してしまうのでした。
なお、ジンはニーナを逃がそうとしたキールを疑って撃ったのではなく、キールがもたついていたため撃った模様。(※「もたもたしてんじゃねぇ、キール」と叱っただけでお咎めもなし)
残念ながらニーナの救出に失敗したキールでしたが、
- 黒の組織がユーロポール防犯カメラネットワークセンター侵入したこと
- 職員がジンに殺害されたこと
- ピンガの特徴(コードネーム、コーンロウに編み上げた髪、ラムに気に入られているなど)
を赤井秀一に伝えています。
そしてその情報は赤井からコナンへと連絡されています。
その②灰原哀の拘束と盗聴器に協力
ピンガとウォッカが灰原哀を拉致しジンが到着するまで直美・アルジェントと同室(潜水艦内の一室)に監禁しますが、キールは相手が子供という理由で灰原を拘束しませんでした。
また、ウォッカとともに部屋を訪れた際に拘束について指摘されると、自らロープを受け取り拘束する役割を担います。
その際、足を縛るために屈んだキールのフードの中に灰原が盗聴器を仕掛けるのを黙認し、さらには腕を後ろ手で縛る際に灰原が縄抜けしやすいようにクロスさせた状態で差し出すも意図を汲んで縛り上げました。
- 灰原哀の盗聴器を黙認(※拉致される以前からピスコの一件同様にコナンが犯人追跡メガネを灰原につけさせていたため盗聴器を所有していた)
- 灰原哀が縄抜けしやすいポーズで縛られるのを黙認
これらをウォッカにばれないように淡々とやり遂げました。
その③盗聴器を利用して内情を灰原に聞かせる
キールの活躍で最も大きいのが灰原が自分に仕掛けた盗聴器を利用して灰原が欲しいであろう情報を折々伝えていたことでしょう。
劇中、灰原とコナンの探偵バッジが繋がると、コナンは潜水艦が水中でも出入りできると推理。しかし、灰原は拉致された際に眠らされていたため、潜水艦の出入口や排出の仕組みを知りませんでした。
そこで監禁部屋に聞き耳を立てていたキールは、ジンが合流するのを口実にウォッカに「ジンはどこから乗り込むのか」と質問し、自然な流れで潜水艦の魚雷発射管から潜水艦に出入りできることを盗聴器越しに灰原へと聞かせたのです。
また、発射管に入るためのボタン操作、海水の流れや扉の開閉、さらには命を落とす危険なレバーの存在など、必要な情報を全て灰原へ流すのでした。
- 潜水艦からの脱出方法を盗聴器越しに灰原に聞かせる
キールの機転により灰原は潜水艦からの脱出方法を確立します。
その③灰原の脱出を阻止するジンを止める
ジンが合流する最中、灰原と直美はキールから得た脱出方法から潜水艦を脱出を決行。
しかし、発射管室でダイバー排出操作中に乗組員にばれてジンに通達されると、鉄の扉一枚越しにジンやウォッカと接触。発射管室に海水が満ちて海中に排出されるまでの70秒、ジンは逃げられるくらいならば二人とも始末するためと言って発射管内に圧縮空気が撃ち込まれるレバーに手をかけます。
が、ジンがレバーを少し引いたところでキールがジンの腕を掴んでレバーを止めたのです。
キールは組織(つまりボス)は直美・アルジェントが開発した老若認証システムを必要としているため生きて捕らえるのが条件と主張し、ジンと意見の対立。ジンは一向に手をどけないキールを突き飛ばし、銃口を眉間に向けて尋常ではないキールの行動からスパイ疑惑を再燃。
しかし、キールは自ら銃口に額を押し当てると、尋常ではないのはジンの方だと反論。
もし拉致した少女(灰原哀)が本当にベルツリー急行で死んだシェリーならばなぜ生きているのか、なぜ子供になっているのか、その理由を本人の口から聞くべきだと訴えます。そこで何とウォッカもキールの主張に一理あると同調しやや優勢に。
ウォッカが力弱く「兄貴…」と宥めたのが最後の一押しだったのか、キールとジンがもめている間に70秒が経過し灰原と直美は海中へ排出され脱出に成功。ジンは銃をおろしてキールの主張を飲み込んだ模様。こうしたキールの時間稼ぎのおかげで灰原は命を救われました。
なお、灰原と直美の脱出後に乗組員が小さなスクリュー音をキャッチし、灰原を生かして捕らえることに渋々賛同したジンがそれを追うように指示しますが、そのスクリュー音の正体は阿笠博士が開発した自動運転機能付きの水中スクーターであり、灰原を迎えに海中に飛び込んだコナンがデコイとして放ったものでした。
キールの苦悩描写
老若認証を改竄して過去の防犯カメラの記録から組織の痕跡を消すために、老若認証の開発者である直美・アルジェントを拉致した組織。
しかし、ウォッカが取引を渋る直美に言うことを聞かせるために直美の父であるドイツのマリオ議員を殺害すると脅迫。組織に従わない直美の目の前(カメラの映像越し)でドイツにいる父をコルンに狙撃させると、直美は自分が従わなかったために父を見殺しにした罪悪感に打ちひしがれて号泣します。
キールは目の前で父を失った直美の姿から自分を生かすために一芝居打って死亡したイーサン・本堂の最期を回想し、何もできない葛藤から強く手を握りしめて耐えるしかありませんでした。これまでの映画と違い、過去にアニメで描かれたキールの背景を数瞬でもここで振り返るのは特別待遇感がありますね。
なお、エンディングにて狙撃されたマリオ議員の意識が回復したと報道されているため、彼は生還したようです。コルン…腕利きのスナイパーとはいったい……。
キールと灰原の面識は?
原作ではまだキールと灰原に面識はありません。
しかし、灰原はキールが水無怜奈がCIAの諜報員だということをコナンから聞いているので知っています(単行本58巻File.8『意外な容疑者』)。また、コナンから水無怜奈が再び組織に潜り込んでくれたおかげで奴らを潰すメドが立ったと聞いているほか、彼女が表向き人気アナウンサーという職業についていたため顔も記憶に新しく、今回の映画で初めて対面した灰原はキールを見て一目で水無怜奈=スパイと気づけたことでしょう。
対して、キールは初登場から組織へ戻るまでほとんどの期間を病院で過ごしているので灰原と面識はなく、そもそも『シェリー』の逃亡の件は組織内の情報しか知る由もないほか、『灰原哀』の存在自体知らない可能性が高いでしょう。
もしかしたら劇中に描かれていないだけで、コナンや赤井から『灰原哀』という少女について聞かされていてもおかしくはありませんが、コナンも赤井も灰原の存在は組織やその他の目からも隠したいと思っているので、わざわざキールに話すこともないように思えます。
したがって、灰原は一方的にキールの正体を知っているもののキールは灰原のことをただの少女としか思っていないのかもしれません。
ただ、キール視点では潜水艦で初対面した灰原が子供なのに盗聴器を仕掛けたり縄抜けしやすいような恰好で腕を差し出すなど、あからさまにおかしな行動をしたことから何かを察している様子。その後、灰原が探偵バッジを通してコナンと会話している様子を壁一枚隔てた廊下から聞き耳を立てていたことから、途中から江戸川コナンの関係者であることに気付いた可能性もなくはありません。(※なお、コナンの声が壁越しにキールに届いているのかは不明瞭なため、灰原がコナンの関係者と気づけたのかは怪しいところ。コナンの声が聞こえていない場合、単純に脱出の手助けをしただけかもしれません)
また、老若認証システムによってシェリー(宮野志保)と灰原哀が同一人物である可能性が浮上した段階では演技なのか純粋に疑問に思ったのか「子供時代のシェリーかしら」「つまりどういうこと?」と疑問を口にしていたので、演技でなければシェリーはベルズリー急行で死んだと思っている=灰原哀の正体も知らないということになります。
そのため、灰原からすれば一方的にキール=CIA諜報員と知っているものの相手が自分を知らないので盗聴器や縄抜けのギミックを仕掛けた際の心中はだいぶドキドキしたことでしょう。キールにしてみても目の前の少女がシェリーと知らない、またはコナンの関係者と知らないので、赤井に助けを求めるといった策を講じることもできずCIAとして一人で助けるほかなかったのかもしれません。
とは言え、結果的にベルモットとバーボンも味方だったので、三人の思惑が人知れず繋がって灰原を助けることができたので結果ヨシでした。
探偵バッジはキールが置いた?
ピンガとウォッカに拉致されて潜水艦に連れてこられた灰原が目を覚ますと、すでにベッドの上に探偵バッジが置かれていました。(※バッジを見つけた灰原は「誰が?」と疑問に)
ウォッカの口ぶりからして拉致後の監禁・拘束(世話?)はキールに任せていたっぽいので、灰原の身体検査をしたのはキールでほぼ間違いないでしょうが、キールは探偵バッジに交信機能があることを知らないと思われるため、ただのバッジだと思い没収せず置いておいたのでしょうか…?
これに関しては誰が置いたのか明確にされていませんが、おそらく艦内にいる味方はキールしかいなかったのでキールなのでしょう。
コナンがキールの前で探偵バッジを使用および取り出した描写は原作にありませんが、果たして…。
黒鉄の魚影の本当のMVPはキール?
映画『黒鉄の魚影』において黒の組織から灰原を奪還したコナンやいつもの阿笠博士の発明品がMVPなのは間違いありません。また、今回の映画に限っては赤井秀一やバーボン、さらにはベルモットまでもいい仕事をしています。
そんな中「本当のMVPはキール」という声が映画を見た方の意見として散見されます。
まさしくその通りで、今回の映画は冒頭から中盤あたりまでキールが折々に灰原のアシストをしているのです。冒頭のユーロポール職員の逃走は手助け失敗に終わりましたが、赤井への情報提供・灰原哀の盗聴器・灰原哀の縄抜け・潜水艦からの脱出方法・ジンの妨害などキールによって灰原は何度か助けられていますね。
しかし、残念ながらキールの活躍は視聴者しか知らない陰の功績ですので、登場キャラは誰もキールの頑張りを知ることはありません。
灰原にいたっては、盗聴器を仕掛けたことがキールにバレている・縄抜けしやすいような恰好を見逃してもらっていると気付いていたのか判断つかない描写でしたので、事件解決以後に灰原からコナンへ実はキールに助けてもらったと話したのかも怪しいところ。
人知れず標的を逃がそうと頑張った末に二度もジンに撃たれた(二回目は撃たれかける)キールには報われてほしいものです。
まとめ
- キールの正体はCIA(中央情報局)の諜報員だが、現在はFBI捜査官の赤井秀一と協力し組織に戻っている
- 『黒鉄の魚影』本編にて、キールは灰原哀が潜水艦から脱出できるように陰ながら助力していた
- 『黒鉄の魚影』視聴者から本当のMVPはキールであると絶賛されている
- キールと灰原哀の面識は無いが、灰原はキールの正体がCIA諜報員だとコナンから聞いている
- 潜水艦に監禁された灰原哀の下に探偵バッジを置いたのは状況的にキールである可能性が高い
黒鉄の魚影は、コナンと灰原のための映画かと思いきや、まさかのキール大活躍の映画でもありました。
キールのファンにしてみれば思わぬ活躍ぶりに歓喜したことでしょうが、作中キャラたちが誰もキールの活躍を知ることができないのはモヤモヤしてしまいますね。
原作でキールと灰原に少しでも接点があればもっと楽に助力できたのでしょうが、こうしたすれ違いも緊迫感があって面白い仕上がりだと思いました。
ここまで頑張ったキールには報われて欲しいところですが、原作でどうなるか注目です。
名探偵コナン シネマガジン2023 作者:青山剛昌 出版社:小学館 |
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