小学生男子がある日起きたら小学生女子になっていた──という物語「オレが私になるまで」。
主人公・藤宮明(アキラ)は小学2年生の頃に女の子になってしまい、女子をいじめていたことから女子に馴染めず、今度は自分が男子にいじめられる側になり母方の祖母が住んでいる地区に引っ越し転校しました。
学校で一人はつらい──。しかし、男子が苦手なったアキラは男子に混ざって遊ぶことができず、かといって女子と仲良くなるには勇気がいり、いつもビクビクと過ごしていました。
そんなアキラをいつも気にかけてくれていたのがクラスメイトの男子・佐原翔馬であり、佐原は何かとアキラに目を配りいつも助けてくれたのです。
そして、同じ中学校に進学した翌年、中学2年の夏祭りの日に、佐原はついにアキラに思いを告げます。
今回はアキラと佐原の告白の全容をご紹介したいと思います。
▼ オレが私になるまでの漫画 ▼
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オレが私になるまで
作家:佐藤はつき
出版:KADOKAWA ある日、男の子が朝起きたら女の子になってしまいました。すぐ戻ると思いきや、どうやらその様子はありません。変化する自分のココロと周囲との認識のズレに戸惑いながら、すこしずつ成長していく物語です。 |
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藤宮明と佐原翔馬の関係
引用元:佐藤はつき『オレが私になるまで』 出版:KADOKAWA
藤宮明と佐原翔馬の関係は同じ第二小学校出身のクラスメイトであり、中学でもクラスメイトになったのをきっかけに友達と呼べる関係になりました。
アキラは小学2年生の冬期頃に第二小学校に転校してきましたが、当時は性転換の壁やトラウマによって男子に苦手意識を持っていたため、佐原のことをあまり認識していません。
一方で、佐原は年度替わりの4月(3年生に進級した頃)には積極的に「放課後に一緒に遊ぼう」などと声をかける程度には歩み寄っていました。残念ながら男子に苦手意識を持つアキラは誘いを断り続けていたため、小学校での交流はそこまで多くないようです。
しかし、佐原はめげずに声を掛け続けており、宿泊研修においても重い物を運ぶのを手伝う気遣いを見せる他、菊池との喧嘩時にも仲裁に入り庇ってくれたことから、アキラは佐原に対し『いい奴』という印象を抱くようになりました。
アキラから見た佐原の印象遍歴
引用元:佐藤はつき『オレが私になるまで』 出版:KADOKAWA
アキラが転校してきた当初から何かと目にかけてくれていた佐原ですが、残念ながらアキラが佐原のことを正式に認識したのは宿泊研修でした。調理中に江梨花が「しょーま」と名前を呼んだことで、初めて彼の名前を知ります(苗字は知っていたのか不明)。
また、重たい段ボールを運ぶ際に佐原が手伝ってくれたことから彼が「悪い奴ではない」と実感。一方で、散髪したアキラが初めて女の子っぽい髪型で登校した際に、佐原は気恥ずかしさから「髪切ったんだ」とボソッと呟いて逃げたため、アキラは髪型が『似合ってない』と言われたと思い込みショックを受けてしまい、そのことを中学2年生まで覚えていた模様。
冬休み明けに石井と中曾根が付き合っていることを揶揄った菊池をアキラが諫めようと喧嘩に発展した際には、佐原は殴られそうになったアキラの前に躍り出て代わりに殴られ怪我を負ってしまいます。アキラは自分を庇ってくれた御礼として、バレンタインデーには御礼の義理チョコを渡しましたが、中学生になってもこの時のことは鮮明に覚えています。
中学進学当初、瑠海と喧嘩離れした際にも、佐原は江梨花とともに仲直りのきっかけを作る相談に乗ってくれており、結果的にほぼ江梨花が根回しをしてくれたものの、佐原もアキラを元気づけ応援するなど精神的な支えとなりました。
アキラにとって小学校時代の佐原はそこまで仲良くない男子──という認識でしたが、こうした積み重ねの末に中学生からは『友達』と呼べるほどの関係性まで発展しています。
一方で、意図せず江梨花が佐原のことが好きだと発覚したので、アキラは江梨花を気遣い佐原とあまり仲良くしないように行動する他、江梨花と佐原をなるべく二人きりにできるように取り計らうようになりました。石井と中曾根のように江梨花が佐原とくっついて幸せになって欲しいと心からの行動でした。
後に、江梨花の親友の名取から『江梨花は小学生の頃から佐原が好き』と聞いたアキラは、思い返せば自分が佐原と話していると江梨花が入って来たことを思い出し『オレが佐原を好きになるわけないのに』とクスリと心の中で笑いますが、詩音など女子たちが佐原の人格を褒めた際には自分も菊池と喧嘩になった時に助けられたことを思い返し『転校したてのころ気にかけてくれたのも佐原だったし、きっとあいつなら江梨花をしあわせに…』と、佐原ならば江梨花を幸せにしてくれるという安心感を抱いていました。
しかしその一方で、佐原のことを無自覚に意識してしまったのか『トクン』と胸がときめくような感覚を一瞬覚えてしまいますが、アキラはそれがどういう意味の感情なのかわかりませんでした。
しかし、文化祭後に江梨花が佐原に告白失敗すると、報告を聞いたアキラは涙。一週間後、佐原から決闘王を誘われるも『江梨花をフったくせに、許せない…』と心象を悪く想うなどの変化を見せ、若干の苛立ちを覚えます。その反面、逆に佐原によそよそしいアキラを見兼ねた江梨花が「私はもう大丈夫」と歩み寄ったこと、そして、アキラ自身も別に佐原が悪いわけでもないことを理解していたので、佐原に対する態度を元に戻し再び遊ぶようになります。
クリスマスには九十九の家で集まりクリスマス会を開いていますが、アキラが九十九が参考にしたお菓子作りの動画を話題に出したのが災いし、葵がパソコンのショートカットアイコンをクリックするとAVが流れるというアクシデントが。アキラは元男の視点から男子の考えていることは理解しているつもりでいましたが、中学生男子の性への関心と自分の中の男性像に乖離を覚えたショックから、冷静になるために席を外します。
すると、先にトイレに行っていた佐原と階段で鉢合わせることに。すれ違い様に手があたった戸惑いから半身を逸らせると足を踏み外してしまうアキラ。咄嗟に手を差し伸ばす佐原ですが、この時、アキラは佐原が伸ばす手を前に男子たちにされた行為をフラッシュバックさせます。しかし、服を脱がした男子たちと目の前の佐原はまったく異なるものであると理解するアキラは『こいつは違う』と自分に言い聞かせて性転換後初めて自発的に男子の手を握ることができました。
一方で、佐原がアキラの手を引いて入れ替わるように下敷きになってくれたため大事には至りませんでしたが、起き上がった際に佐原が中々手を離してくれなかったので、アキラはやっぱり男子が何を考えているのか分からないと独白しています。
以上が小学3年から中学1年までのアキラの主観で見た佐原に対する印象の変化です。この頃、アキラは看護師の岡部に『私も男の子を好きにならなくちゃいけないのかな』と性について悩みを打ち明けているため、まだ佐原に対する感情がどういったものか理解していないことがうかがえます。
佐原から見たアキラの印象遍歴
引用元:佐藤はつき『オレが私になるまで』 出版:KADOKAWA
佐原から見ると転校したての頃のアキラは『いつもつまらなそうにしている女の子』という印象でした。
実は佐原がアキラに執拗に声を掛け続けていたのは『外で遊べば元気になる』と思っての行動であり、さまざまな場面でアキラに気を配っては助けていました。しかし、当初は元気づけるための行動であったのは確かですが、3年生以降からアキラが瑠海をはじめとした女子たちと段々と打ち解けて仲良くなったのを見ると、次第に明るくなっていくアキラを気が付いたら目で追うようになっていました。
中学進学後、瑠海と喧嘩したアキラが佐原純子(佐原の叔母)の家に厄介になった際には、叔母の家にご飯を食べにきたのにアキラがいたので驚くと同時に赤面顔。そのため、この頃にはアキラを意識していることがうかがえます。
後日、幼馴染である江梨花に連絡して協力してもらうと以降は役に立てなかったので、何かの役に立ちたくて胃に優しいと聞いたコンソメ(固定タイプ)を差し出す謎の行動をとりますが、アキラにコンソメキューブの使い方を聞いて慌てて手を引っ込めることに。しかし、アキラは佐原が引っこめようとした手を掴んでコンソメを受け取り感謝を伝えると、佐原は照れくさそうにして立ち去ります。なお、アキラの手が触れたせいか、やや前傾姿勢でおかしな歩き方で立ち去るという行動をしたため、アキラから不思議そうに見られることに(アキラは意味を理解していない様子)。
その後も学校ですれ違うことがあれば佐原の方からこれまで以上に声を掛けことが増えていき、調理実習の際にはアキラが九十九に対して言った「(料理が好きなのは女子だからではなくて)私が好きだから好きなんだよ」という台詞を立ち聞きしていたのか、後片づけ中に「かっこいいな、さっきの」と伝えています。
1年時の文化祭で男女逆転シンデレラをやることになった際、アキラの発案で女性役を演じる男子たちにメイクをしようとなった時には、女子からそのことを伝えられメイクに消極的であったもののアキラがメイクを施すとなると食い気味で「俺も!やっていいよ!」とアピール。
一方で、文化祭後に江梨花をふってしまったためにしばらくアキラから『江梨花をフった奴』という色眼鏡で見られてしまいギクシャクした関係になってしまいますが、懸命に歩み寄った末にこれまで通りの関係に戻ることができました。
九十九の家で行われたクリスマス会では、たまたま階段でアキラとすれ違うとアキラが足を踏み外したため、身を挺して下敷きに。その際、アキラの手を掴んでいましたが、佐原は起き上がった後もしばらくアキラの手を握り続けていたため、アキラは困惑。この時、佐原はアキラに何かを伝えようと口を動かしますが、転倒の音を聞いて女子たちが廊下に出てきたので結局何も言うことができず手を離してしまいます。
2年時には、野木がアキラに友達を紹介したいと半ば強引に迫っているのを見かけたので仲裁に入りますが、アキラが「大丈夫」とライン交換を受け入れたので、流れに乗じて佐原もアキラとラインを交換します。
別日には、遅刻してきたアキラの頭に花びらがついていることに気付いた佐原は「頭に花びらがついている」と教えますが、アキラは自分で中々取れなかったので「どこ?とって?」と佐原に頼みます。意図せずボディタッチのチャンスが到来し緊張する佐原ですが、恥ずかしさから臆してたじろいでいる隙に瑠海が花びらを取ってしまいチャンスを逃してしまいます。
一方で、アキラが3組の八木沢から拓朗を紹介され連絡先を交換した際、江梨花らが関係を煽っている中、一人だけ「そんな別にすぐじゃなくていいじゃん!そんなことより今は勉強だろ」と正論風に真顔で話題を変える一面も。一方で、佐原の言動を得てこの話題から逃げられると思ったアキラは佐原の腕に触れながら「佐原の言う通りだよ!今は勉強!」と男子との交流を断る口実を作りうまく回避しますが、佐原はアキラが触れた箇所を擦るようなしぐさをしたため、アキラに『触られるの嫌だったかな』とあらぬ誤解を与えてしまう結果に。
ある日には、帰り道にゲームの話題になると佐原からアキラに何かやっているゲームはあるかと質問。アキラが決闘王のスマホゲームをやっていると答えると、自分もやっているといってフレンド登録を申し出ます。しかし、アキラは江梨花に気を遣ってテスト終了後ならと先送りにしてしまいます。
江梨花の提案で花火をすることになった当日(実際は花火と称し日をずらしてアキラへの誕生日サプライズ)、花火の前に葵に誘われて葵とアキラと佐原の三人でカードショップに赴くと、佐原は勇気を出して「こうやってたまにふたりで遊ばない…?」と誘いますが、アキラはこの時何も答えらず、若干気まずい雰囲気に。
しかしその夕刻、みんなで花火をやる最中、江梨花はすでに佐原がアキラを好きだと知っていたためアキラに対し「あたしもう本当に翔馬のことなんとも思ってないからさ、だからあいつと仲良くしてやってよ」と背中を押すと、アキラも江梨花への遠慮を少し止めて佐原と『友達』として距離を縮めていきます。
中学進学からアキラへの態度が隠しきれなくなった佐原ですが、残念ながらアキラには伝わっていないようです。
【中学2年生、7月24日】お祭りで佐原からアキラへ告白
引用元:佐藤はつき『オレが私になるまで』 出版:KADOKAWA
中学2年生の7月24日、アキラ・瑠海・葵・江梨花・佐原の五人でお祭りに行くことになります。
アキラは佐原純子の理髪店で浴衣の着付けをしてもらうと、江梨花が佐原を連れて来て一緒に記念写真を撮ります。その際、江梨花は佐原をアキラの隣に押し付けて感想を煽るものの、照れているのか表情が硬い佐原。
夏祭り会場に到着すると小学校の恩師である桝川先生と偶然再会。皆で記念写真撮影(葵が撮影する)をしますが、この時、アキラは『みんなと同じ学校を選んでよかった』と幸せを実感します。
桝川先生と別れた後、一同は祭りを楽しんでいると、アキラは鼻緒の擦れによる痛みを覚えて人混みの中で立ち止まります。同じく、アキラを心配して立ち止まる佐原。結果、二人は皆とはぐれてしまうことに。アキラはラインで瑠海たちと連絡を取り合流場所を決めますが、ここで佐原は勇気を振り絞り「もう少しこのままふたりで店回らない?」と提案します。
不意に無言になるアキラと、固唾を飲んで返事を待つ佐原。
結果、アキラは佐原の提案を受け入れたのか二人きりで出店を見て回る姿が。その最中、夜空に花火が上がるとアキラは自分の心臓がいつもより大きく鳴っていることに気付きますが、それが花火のせいなのか場の空気のせいなのかまだ把握しきれていない様子。
ですが、アキラは視界に入るカップルたちを横目に『今の自分たちは周囲からどう見えているのか』とこの状況を意識し始めます。
そんな中、野木と八木沢の男女4人の姿を見かけたため、慌てて佐原に教えます。見つかって揶揄われる前に隠れようとしますが、アキラは人混みに押されて佐原ともはぐれそうになると、佐原の方から『はぐれないため』という名目で手を差し出してきました。
アキラは照れながらも佐原の手を取り手を繋ぐと、二人は人混みの中を無言で進んでいきます。そんな中、アキラの意識を巡るのは『今の自分たちは周りにどう見えているのか』という再確認でした。
告白
野木たちに見つからないように人気のない離れた場所に移動したアキラと佐原。
鼻緒で足を痛めたことからアキラは「慣れない恰好で出かけるもんじゃないね」と苦笑しますが、佐原は「そんなことはないよ」と首を振り、改めて浴衣が似合っていると褒めます。しかし、佐原は照れくさかったのか即座に「ごめん、今のキモかったよな」と訂正。すると、アキラは顔を赤らめながらも「ううん、嬉しい」と素直に喜んで見せました。
というのも、小3の頃、アキラが髪型を変えた際に佐原に『似合わない』と言われた(アキラの勘違い)と思っていたからです。アキラが当時のことを話すと、佐原は「言ってない」と必死に弁明。アキラは佐原にそう言われたと言い張りますが、佐原は言ってない証明として、小学時代にアキラに声を掛け続けていた理由や瑠海たちと遊ぶようになって明るくなっていくアキラを気が付けば目で追うようになったことを伝えると、その流れで「俺、藤宮のことが好きだ」と告白をします。
その瞬間、アキラの鼓動がうるさいくらいに高鳴ると、江梨花が佐原を好きと打ち明けた時のことや文化祭で告白し失恋した時のこと、そして、「あたしもう本当に翔馬のことなんとも思ってないからさ、だからあいつと仲良くしてやってよ」と言ってくれた江梨花の笑顔を走馬灯のように想起させるのでした。
返事
佐原はアキラに告白すると「返事はすぐじゃなくていいから」と言って、現在地を皆に教えてから自分は立ち去ろうとします。
しかし、佐原がスマホを取り出したところアキラは「待って…」と言ってスマホを操作する佐原の腕を掴みます。操作を止めて固唾を飲んでアキラを見やる佐原。アキラはただ連絡するのは待ってほしいと伝えようとしただけですが、アキラが佐原の腕を掴んだためこの場ですぐ返事をするような空気感に包まれてしまい、静寂が続く気まずい雰囲気に。
また、佐原も返事を待っているような表情を浮かべていたため、アキラは今の自分がどんな表情をしているのか不安になります。
アキラの中で、佐原はいつも自分を助けてくれる『いいやつ』であることは揺るぎない真実です。もしかしたら自分の知らないところでも助けてもらっているのかもしれないと思ったアキラは『もらってばかりだからみんなにも、佐原にも返していかないと…』と思い、佐原に恩を返そうと決意します。
しかし、アキラが『いけ…』と自分を鼓舞したところ、不意に浮かんできたのは島崎奈々の姿でした。今でもアキラの悔恨とトラウマになっている彼女に言われた言葉が脳裏をよぎると、先ほどと打って変わってアキラは曇った表情に。
すると、アキラは佐原から手を離して「ごめん」とただ一言伝えることしかできませんでした。
アキラの返事を聞いた佐原は「あっ…そか…俺のほうこそごめん」とアキラを気遣いお祭りを台無しにしたことを謝罪します。一方で、告白できたことに関しては「言えてよかったよ、ありがとう」と懸命に清々しい思いを伝えます。
一方で、アキラは『悪いのは自分だ』という自罰の念に苛まれていたため「…帰るね」と逃げるようにその場から立ち去ってしまいます。佐原は「あっふ…(あ、藤宮)」と最後まで声を掛けることもできず、消沈するようにその場で立ち尽くすのでした。
こうして佐原の告白は失敗に終わってしまいます。
アキラが佐原の告白を断った理由
引用元:佐藤はつき『オレが私になるまで』 出版:KADOKAWA
アキラが佐原の告白を断った理由は明確に描かれていません。
しかし、お祭りから逃げ帰ったアキラはベッドに塞ぎこんで『もしオレがはじめから女の子だったら…』と思案しながら佐原と手を繋いで歩いている場面を回想していることから、佐原へ向ける好意あるいは抱く感情には気づいている節があるため、自分が元男だという事実を隠しているから断ったのでしょう。
また、返事をする直前に島崎奈々から言われた言葉を想起させているように、罪の意識が消えていないのも告白を断った要員の一つだと考えられます。
アキラが抱えている問題は突発性性転換症候群という性別の転換と過去に女の子をいじめていた自罰の念であるため、異性と交際するとなればまず性別の告白が必須であり、それに伴い女の子を虐めていた過去を話す必要もあります。また、仮にそれらの問題を滞りなく解決できたとしても男性が苦手というトラウマも関わってきます。
したがって、アキラが佐原からの告白を断ったのは『突発性性転換症候群』と『自罰の念』の二つの問題が理由です。
女の子であれば告白を受けていた?
お祭りから逃げ帰った後にアキラが『もしオレがはじめから女の子だったら…』と独白しているように、もし突発性性転換症候群ではなく初めからアキラの性別が女であれば佐原の告白を受けていた可能性は高いでしょう。
あるいは、突発性性転換症候群であったとしても男の時に女子を虐めていなければ自罰の念に苛まれず、告白の瞬間に前向きな返事をしていたかもしれません。
とはいえ、佐原と手を繋いだ際にドキドキしていたのは『場の空気』と後に分析しているため、告白時点でアキラが佐原に本当にときめいていたのかどうかは不明です(佐原なら江梨花のことを幸せにできると思った際に『トクン』と佐原のことを意識しているのは事実。が、好きかどうかの自覚はなく、アキラ自身も「?」とその時の感覚を不思議に思っている)。
一方で、佐原がアキラを気に掛けたきっかけはアキラが人を寄せ付けずつまらなそうにしていたからなので(女子を虐めていたアキラが突発性性転換症候群に罹り加害者から被害者の気持ちを理解できるようになった結果なので)、もし初めから女の子として佐原と出会っていれば告白に至るような間柄になっていなかったかもしれません。
そのため、正規ルート以外ではそもそも告白まで関係が進まないと思われるので、何れにせよ夏祭りでの告白が成功することはなかったと思われます。
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オレが私になるまで 4
作家:佐藤はつき
出版:KADOKAWA ずっと前、あなたが少年少女だったころを思い出すような。叙情の新鋭・佐藤はつきが描くやわらかい青春群像劇。 |
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告白までの裏事情
実は、アキラの知らないところでアキラと佐原をくっつけようとする働きが周囲で行われていたようです。
終業式を終えた日、瑠海は江梨花に二人(アキラと佐原)の関係を推し進めようとと頼まれたことをアキラに打ち明けます。事の発端は6月末、江梨花は『翔馬がアキラのこと好きだから』と言って瑠海・葵・詩音・夏美に協力を頼み、瑠海たちはなるべくアキラと佐原を二人きりにしようと気を遣っていたのです。
そのため、告白を断ったことでアキラと江梨花の関係がこじれたので、瑠海は事情を話してアキラに謝罪しています。
また、町内清掃に参加した際には、八木沢から拓朗を紹介した際に江梨花に『佐原くんが狙ってるから』と怒られたことを打ち明けられており、自分が余計なことをしたせいで佐原が焦って告白に踏み切ったのではないかと罪悪感からアキラに謝罪しています。
もし、八木沢が拓朗を紹介して佐原を焦らせていなければ、アキラと佐原はゆっくりと関係を結んでいき付き合えていたのではないかと落ち込んでいました。そのため、アキラは仮に八木沢がいなくても「佐原とは付き合えていない」と答えて彼女を気遣いました。
アキラの知らないところで皆動いていたようです。
告白を断った代償
引用元:佐藤はつき『オレが私になるまで』 出版:KADOKAWA
アキラは佐原からの告白を断ったことで日常に様々な変化をきたすことになります。
- 江梨花と疎遠
- 佐原たち男子と疎遠
- 佐原への嫉妬心
お祭りの途中までは『みんなと同じ学校を選んでよかった』と幸せの絶頂に立っていたアキラですが、お祭り後では告白を断ったことで生じる交友関係の変化によってその関係性に亀裂が入り、再び現実を突きつけられるように自罰の念に苛まれることになります。
①江梨花と疎遠
お祭りの次の週の登校日、アキラは江梨花に誘われてトイレに立ちます。
その際、アキラはお祭りの日に先に一人で帰ったことを謝罪しますが、江梨花はアキラが佐原に告白されたと悟っていたので先に帰ったことを咎めることはしません。しかし、アキラが「断った」と返答すると、なぜ断ったのか詰め寄ってきます。
佐原のことが好みじゃないからか、それとも自分に気を遣って断ったのか──。
江梨花の詰問にアキラは『私なんかじゃ佐原には釣り合わないっていうか…』と自分を卑下し言葉を濁してしまうと、そのままの意味で受け取った江梨花は「じゃあ、翔馬に選ばれもしなかった私はなんなの?」と愕然。江梨花が二人の仲をくっつけようとしていたのは佐原がアキラのことを好きだと気付いていたからであり、江梨花自身もアキラになら──と苦渋の想いで佐原のことを割り切ろうとしていたのです。
一方で、アキラは突発性性転換症候群を隠しているため断った理由を正直に伝えることができません。そのせいで、江梨花への言葉を間違えてしまい、この一件から江梨花と言葉を交わすことがなくなってしまうのでした。
アキラは、自分がもっと気を付けていれば佐原と江梨花がくっついていたかもしれないと自分を責め続けることになります。
佐原たち男子と疎遠
お祭り後、アキラは佐原に加えてその友人である菊池や九十九とも気まずくなってしまったので、以前のように一緒に遊ぶことはなくりました(佐原の叔母の理髪店にも気まずくて行けないのか、浴衣の返却は瑠海に任せた模様)。
学校で佐原と顔を合わすと傷心中の佐原が目頭を押さえて離れるコマが描かれています。菊池と九十九も佐原を気遣い寄り添っているため、以前のようにアキラたちとカードゲームをすることもなくなり、基本的にアキラたちとは挨拶するくらいの距離感を保つようになりました。
一方で、夏休み明けにアキラと瑠海がダイエット目的で葵の誘いを受けてバドミントン部の練習に参加した際には、気まずいながらも同じバドミントン部の菊池とは普通に話せるまで戻った様子。
九十九とは同じ修学旅行の班になっていますが、葵や瑠海が九十九と話しているコマはあるものの、アキラと九十九が喋っているコマは今のところ描かれていません。
佐原への嫉妬心
佐原の告白を断ったのはアキラですが、お祭りの告白から一ヵ月後、アキラたちがダイエット目的でバドミントン部の練習に参加していると体育館の半分を使う卓球部の中に佐原の姿を確認します。
しかし、アキラは佐原が一年生女子・二宮結愛から猛烈アプローチを受けている場面を目撃すると衝撃のあまり硬直してしまいます。佐原もバドミントン部の練習に参加しているアキラの存在には気づいていたようですが、一瞬チラっと見ただけで声はかけない模様。アキラは佐原が自分に気付きながらも一年生女子にいいようにされているのを見て苛立ちを覚えてしまうのでした。
告白から一ヵ月しか経ってないのにもうほかの女とイチャイチャするって…、私がどれだけ…、背だってあの子よりオレのほうが高いし──と嫉妬心まるだしの感情を抱くアキラ。その一方で自分が断ったのだからイラつく意味が分からないと冷静を装います。
しかしながら、瑠海にはアキラがバドミントン部に入らない理由は『佐原の彼女を見るのが嫌だから』と指摘されると、告白を断った自分が佐原にとやかく言う資格がないと分かっていても悔しさを感じている、佐原に年内くらいは引きずって欲しいと思っていることなど、本音を吐露。
修学旅行編では、売店で佐原とばったり遭遇するも、佐原がダルねこのご当地キーホルダーを手に取っているのを見て二宮結愛へのお土産だと邪推しており、そのことを瑠海たちに話すと葵から「嫉妬やん」と軽く笑われてしまいます。しかし、アキラには自覚がないのか嫉妬ではないと否定しています。
なお、佐原はアキラに誤解されていると察したのか、翌日にダルねこのご当地キーホルダーはプレゼントではなく自分で集めているだけだと弁明。そのため、アキラは自分で決めつけた想像に怒っていたことを反省しています。
アキラと佐原のその後は?くっつく可能性はある?
引用元:佐藤はつき『オレが私になるまで』 出版:KADOKAWA
現時点でアキラと佐原がくっつくのかは不明です。
現在(記事執筆時点では第72話)は修学旅行編の二日目の真っ只中ですが、依然としてまともに口を聞いているシーンはなく、佐原は失恋の傷が癒えていない様子で、アキラは気まずい空気感と罪悪感に加えて佐原が一年生女子と仲良くしているのを目撃してから嫉妬心も含んでいる微妙な距離感にいます。
しかし、修学旅行二日目には佐原の方から誤解を解くために話しかけており(売店で購入したグッズは一年女子のプレゼントではなく自分が集めているものと弁明)、アキラも佐原への偏見を反省しています。
そのため、早ければ修学旅行編か二年生の間には会話する程度には関係修復できそうな印象です。
一方で、中学1年の6月の保健の授業後に、アキラは女子の生活に馴染んて行く中で『全部を受け入れたら男子を好きになるんだろうか。それとも…』と独白しており、その対象は男子にとどまらず女子も含まれています。
また、アキラが瑠海に対して『好きな人いないの?』と訊ねた際には、瑠海が「私はいないよ。アキラはいないの?」と返すと、アキラの瞳の中に瑠海の姿が描かれる演出があります。このような演出から中学1年6月までのアキラの中では『好きな人』として瑠海の存在が浮上しているようにもうかがえます。
ですが、同年の文化祭後には『転校したてのころ気にかけてくれたのも佐原だったし、きっとあいつなら江梨花をしあわせに…』といった具合に佐原に対しての評価を固めている他、佐原のことを思った際に『トクン』とときめくような描写が差し込まれているため、無自覚ではあったものの少なくともこの時期から佐原へ何か特別な感情が芽生えたのは事実です。
クリスマス会の際に階段で足を滑らせたアキラを助けようと手を伸ばす佐原の手を掴んだアキラが、苦手としてきた男と区別するかのように『こいつは違う』と佐原の手を受け入れていること、佐原に関しては徹頭徹尾『悪い奴ではない』『いい奴』と印象を抱いていることから、アキラにとって佐原は男子の中では一番の存在だと言えます。
女子の一番が瑠海だとすれば、男子の一番は佐原ではないでしょうか。
問題はアキラが今後自身の性自認を『女』として受け入れるのか『男』として受け入れるのかであり、『女』と受け入れれば佐原を好きに、『男』と受け入れれば瑠海を好きになるかもしれません。
一方で、本作はアキラが女子高生になるまでの話──と前置きされているため、アキラのトラウマの根源である島崎奈々の再登場が高校編で描かれるのではないかと予想されていることもあり、本編中にアキラの交際は描かれない、もしくは高校編で交際に踏み切るということも考えられます。
アキラの進学先はまだ未確定ですが、万が一、佐原も同じ高校へ進学できればアキラと佐原が付き合う可能性もあるかもしれないですね。
まとめ
以上「アキラと佐原の告白の結末」のまとめでした。
小学2年の冬季に転校してきたアキラは、性転換と過去の自分への自罰に加え男子へのトラウマを抱えていたため女子以上に男子と話すのが苦手でした。
そんなアキラを元気づけようと声を掛け続けていたのが佐原であり、佐原は瑠海たちと仲良くなったアキラがだんだんと明るくなっていく姿を見て気が付けば目で追いかけ好きになっていました。
しかし、中1の夏祭りの際に佐原からアキラに告白したところ、アキラは告白を受けそうな雰囲気を醸し出していたものの、過去のイジメによる自罰的感情とトラウマによって告白を断ってしまいました。
とはいえ、仮に告白を受けた場合でも『病気』のことは伝えることになるでしょうし、アキラと佐原が交際するには問題が多そうですね。
▼ オレが私になるまでの漫画 ▼
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オレが私になるまで
作家:佐藤はつき
出版:KADOKAWA ある日、男の子が朝起きたら女の子になってしまいました。すぐ戻ると思いきや、どうやらその様子はありません。変化する自分のココロと周囲との認識のズレに戸惑いながら、すこしずつ成長していく物語です。 |
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オレが私になるまで 4
作家:佐藤はつき
出版:KADOKAWA ずっと前、あなたが少年少女だったころを思い出すような。叙情の新鋭・佐藤はつきが描くやわらかい青春群像劇。 |
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