陰気な見た目で周囲から怖れられてクラスに馴染めない黒沼爽子の三年間の高校生活を描く青春ラブコメ「君に届け」。
本編は、爽子と風早が交際し高校卒業するところまで描かれましたが、爽子のライバルである胡桃沢梅はその後どうなったのでしょうか。
今回は胡桃沢梅のその後と恋人についてご紹介したいと思います。
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胡桃沢梅のその後
引用元: 椎名軽穂『君に届け』 出版:集英社
くるみは家族が教師をやっていて他にやりたい事がないといった漠然とした理由と自然な流れで教師を目指していた一方で、今まで何かに正面突破したことがなかった経験から自分で決めた受験を越えられなければ自身や親に認められない気がして改めて教師になる道を選択。
爽子とは彼女の部屋で合宿勉強した際にくるみから謝罪しており、爽子もくるみがしてきた嫌がらせ悪い事だと認めつつも、自分も無神経だったと反省。くるみが爽子と友達になる資格がないと自責すると「友達は気づいたらなってる」と千鶴の受け売りを言って手を差し伸べて、くるみが抱えていた罪悪感を取り除きました。
その後、爽子に一緒に札幌の教育大を受験しようと提案し同じ大学を受験。卒業式では家族に爽子を「ただの親友」と紹介しており、卒業後には爽子と一緒に合格発表会場を訪れると不安と緊張から震える手を取り合い二人で掲示板を確認し、はれて大学に合格しました。
二人で学校に合格を報告に行った帰り校門で風早と合流すると、皆の合格祝いを龍の家でする流れになり、爽子はくるみと一緒に喜びたいと言って彼女も誘って一緒に龍の家へ。くるみはそこで再会したあやねと千鶴にこれまでのことを素直に謝罪すると、三者は和解。
一方で、爽子と同じ大学に通う手前自分の方が爽子といる時間が長くなると言って風早を揶揄うと、風早はくるみのキャラ変に困惑するのでした。
しかし、風早と二人きりになると今日の祝いの席に誘ってくれたことに対し謝意を示す他、爽子が自分から風早を取ったわけではなく風早が自分に爽子をくれたのだと言って感謝を述べ、恋愛ではなくともやっぱり風早のことは一生好きだと伝えました。
本編最終回では、大学生活の中で爽子と一緒にいる姿が描かれており、巻末の風早が爽子をお姫様抱っこする結婚式と思しき集合イラストにも写り込んでいます。
胡桃沢梅の大学生活
くるみは大学生活においてほとんどを爽子と一緒に過ごしています。
くるみの一日のルーティンは、
- 朝、大学に行って爽子と会う
- 爽子と一緒に授業を受ける
- 爽子と昼食を取る
- 学校終わりに爽子の家に行ってだらだらごろごろと過ごす
- 爽子の家で晩御飯を食べる(爽子の手料理)
といった具合で、晩御飯後は爽子の家にそのまま泊まったり帰ったりと自由気まま。くるみ曰く、矢野や吉田がいないため思う存分爽子に寄生できるとのこと。
自称、爽子が風早に電話する時間を与えているようですが、爽子がお風呂に入っている間に風早から電話がくると代わりに電話に出たりするので、風早に「毎日いない!?家帰ってんの!?」とツッコまれるほどです。
くるみと爽子の交流経緯
本編で描かれた通り、くるみと爽子は一緒の大学を受験した仲ですが一人立ちの際は別々で地元を出発しています。
二人の関係が急接近したのは大学入学後であり、くるみから勇気を出して爽子に声を掛けたのが始まり。実はくるみは爽子に誘われようと結構な勇気を振り絞り一人暮らしの炊事事情という話題を振りますが、鈍感な爽子には伝わらず。しかし、必死にご飯は適当なのを買って食べていることをアピールしていると、爽子がようやく作りすぎたご飯を食べに来ないかと誘ってくれたのです。
なお、素直になれないくるみが人数合わせに自分を使うなと意地悪な一言を喋ると、間に受けた爽子は無礼を謝罪。が、すぐ諦めた爽子に対してくるみは諦めるのが早いと一喝すると「もっと誘ってよちゃんと!わたし奥ゆかしいから何回か言ってくれないと行けないじゃん!」と猛烈アピール。結局来るのか来ないのかはっきりしないくるみの態度にパニックになる爽子でしたが、来る来ないの言い合いの末に半ば無理矢理爽子が「来て来て来て!」と言わされてようやくくるみの妥協点となり家に行く流れになりました。
こうして爽子の部屋に初めて訪れたくるみは、以降、たまに野菜類などの差し入れのついでに訪問する回数が増えて入り浸るようになりました。爽子には料理を教えてもらうこともあり、くるみもそれなりに料理が出来るようになっています。
胡桃沢梅と赤星栄治の出会い
くるみと栄治の出会いはとある合コン会場での一幕。
急に空きが出たという理由で合コンに誘われるくるみと爽子。くるみは少し爽子を困らせたくて爽子が一緒なら合コンに参加すると述べると、爽子は彼氏が欲しいというくるみの本音を汲み取り参加を決意。うっかり爽子のやる気を引き出してしまったため、くるみは爽子に変な虫が寄ってこないよう気を引き締めることになります。
しかし、合コン当日、爽子は向かいの席のやたらスキンシップを取りたがる変な男にロックオンされます。男が占いと称して爽子の手に触れると、くるみは間に割り込み自分の手相を見て欲しいと爽子を救助。が、男が今度は頬っぺたを触ろうとしたため二人が恐怖を覚えて身構えます。
その時、二人を助けてくれたのが赤星栄治。
栄治はたまたま合コン会場の飲食店にいた爽子の従兄。友達と飲んでいた栄治は、爽子の存在に気づいてしばらく合コンを見守っていましたが、男のスキンシップがあまりにしつこいと思ったため注意にやってきたのです。
栄治は男の襟首を持ち上げて二人から引き剥がすと男側に口頭注意。ついでに、爽子とくるみを連れて店から立ち去るのでした。なお、くるみは助かったと思う反面、栄治が爽子の従兄であると知ると、「爽子の血筋」にやや意識します。
帰り道、彼氏持ちなのに合コンに参加している爽子に引き気味の反応を示す栄治でしたが、くるみは自分が誘ったと事情を説明。そして、改めて爽子がくるみを「親友」として栄治に紹介すると、感激するくるみ。
しかし、栄治が初対面から「梅」と下の名前で呼んだため「梅って呼ばないで!」とお約束の返しをしますが、栄治は再度「梅」と下の名前呼びでからかいます。栄治の意地悪な性格に本当に爽子の血筋なのか怪しむくるみでした。
くるみを助ける栄治
後日、爽子の家で栄治とご飯を食べることになったくるみは、差し入れを買って爽子の家に向かいます。
しかし、道端で合コンで絡んできた男を発見。男はくるみに気づき声を掛けてくると爽子の家を探していると告白。一気に緊張が走るくるみですが、爽子には彼氏がいるから諦めてほしいと忠告すると、男は「あんな顔してビッチだなんて…」と爽子を貶し恥じたため、くるみは爽子の名誉を守るために口論。
口論の最中にやってきた栄治は、くるみが爽子のために言い争っているのを見かけると、くるみに手土産を預けた後、爽子の自宅が特定されないように一人で男を送っていきます。内心、怖かったくるみでしたが、栄治に二度助けられる形になりました。
その後、爽子宅で合流すると念のために連絡先を交換しとこうと栄治が提案しくるみは承諾します。
くるみと爽子の関係の暴露
爽子宅での食事会中、合コンの一件でくるみに彼氏を紹介してあげようとする栄治は好みを訊ねます。
しかし、栄治がこれまでの彼氏の特徴を訊ねると、くるみはいないと回答。くるみの容姿で彼氏がいたことがないという意外な回答に少し驚く栄治でしたが、初めてならなおさら変な男を紹介できないと悩みます。
一方で、栄治が今までに好きになった男の特徴を訊ねると、くるみは「爽子の彼氏」と回答。思わず首を傾げる栄治ですが、くるみは淡々と爽子に対する嫌がらせの数々を打ち明けるのでした。
しかし、当の爽子が「くるみがいたから頑張れたことがいっぱいあった」とくるみを擁護するため、栄治としても何を言うでもなく笑って話を聞くだけにとどめており、青春時代真っ只中の恋愛のいざこざを「なんか懐いなそーいうの」と吐露する程度でした。
栄治の交際の申し出を断るくるみ
食事会の帰り、くるみは栄治と一緒に夜道を歩きますが、爽子が連休中に帰省することになったため「初めて爽子がいない休日」を過ごすことにどこか空虚な目をしていました。
くるみの様子から栄治は彼女が依存型であると見抜くと、くるみは当時ストーカーのように風早を毎日目で追いかけていた自分が気持ち悪かったと告白。また、爽子が女の子でよかった、爽子が運命の人なんじゃないかと思っている事、爽子がいなければダークサイドの人間になっていたと心の内を曝け出します。
くるみは今でも爽子に対してどこまでだったら許してくれるのか試している節があり、自分の暗い部分を自覚していました。
しかし、このことを栄治に打ち明けると、栄治は「つきあうか、梅。安心しろよ、許してやるから。ためしてみ?」と交際を切り出すのです。
栄治からの交際の申し込みにくるみは一気に目が覚める感覚に陥ります。が、くるみは正気を取り戻すと赤面しながらも「わたしのこと誰だと思ってるの」と交際を断るのでした。
胡桃沢梅と赤星栄治の関係の進展
交際を断ったくるみですが、後日、栄治は諦めず強引にデートに誘います。
くるみが交際を断った理由はそもそも栄治のことを何も知らないことと、今までモテてきたプライドによるものですが、素直になれないくるみと強引な性格の栄治はわりと相性がいい模様。
食事中に栄治が「うめー」と感想を漏らすと、くるみは栄治にさんざん下の名前で呼ばれた慣れから思わず名前を呼ばれたと思い返事をするという天然をかまして赤面。しかし、栄治がくるみの反応を可愛いと述べると、顔ではなく反応を可愛いと言ってくれた栄治を意識することに。
素直になれないくるみは栄治が女性に対して可愛いと言いなれているチャラい印象を抱いていることを突きつけますが、栄治は自分が今くるみを口説いている立場にあると告げると、くるみは戸惑いながらも口説かれている自分の方が優位に立っていると自尊心を保ちます。
しかしデート後、爽子の家を訪れると、爽子にデートの感想を聞かれても赤面し奇声を上げて帰るという奇行を演じてしまうのでした。一人になったくるみは、これまで数知れず告白を断ってきたことや、風早への片想いとの時と違う自分の胸中に戸惑いを覚えます。
くるみのオーバーヒート
栄治のことを意識しすぎて寝不足になるくるみ。
爽子は、授業中眠さで限界をむかえたくるみを学内の休憩スペースに連れて行くと、栄治に連絡。連絡を受けてきた栄治はくるみと合流するなり、爽子には先に帰るように促します。
会話中、栄治がくるみに「今日は何?梅んち招待してくれんの?」と述べると、くるみは断固として断ります。まさかの体目当ての可能性を危惧するも、栄治はくるみを見て「つるぺただな…」と一蹴。そのため、くるみは自分のチャームポイントは鎖骨とかくるぶしと抗議しますが、栄治は「普通に可愛いくせに」と告げ、くるみをドキッとさせるのでした。
「梅はね、大変かわいいです。目がかすむくらいじゃね?」
その後、くるみは爽子の家を訪れて爽子に「栄治がひどい」と相談しますが、くるみから一連のやり取りを聞いた爽子はどこがひどいのか困惑。しかし、くるみは言われ慣れていない言葉にどんな顔をしていいのかわからないと赤面します。
一方で、次のデートは爽子が帰省する連休になるため、今までさんざん邪魔をしてきた爽子と風早の一日を潰したくないという思いと、唯一の相談相手である爽子の不在による不安に押し潰されて思考がオーバーヒートするのでした。
なお、くるみの栄治の呼び方は「えーじ兄ちゃん」に固定されたようです。
くるみの自覚
GW初日、くるみは栄治と二度目のデート。
くるみは自分が粘着質で重たく怖いしつこい性格であると牽制しますが、栄治は大したことないとあっけらかん。今回はデートしたことがないくるみに合わせて、栄治はただ買い物を楽しみながらくるみの好みを知っていく緩やかなスケジュール。そのため、くるみは栄治が意地悪という第一印象を崩し本当は彼が優しいことに気づくのでした。
一方で、優しい人は優しい人を好きになるというくるみの持論から、くるみは栄治になぜ自分に交際を申し込んだのか訊ねます。しかし、栄治の答えは「梅が全然自分を守っていないから」という予想外なもの。くるみは可愛いしか取り柄のない自分を守るために壁を作ってきたわけですが、栄治には自分で自分を攻撃しているように見えていました。
栄治視点では、合コンや道端で男に絡まれた時などくるみはいつも爽子のことは守っていても自分のことは守っていないように見えていたのです。
栄治の告白に、くるみはいつの間にか自分が高く積み上げてきた壁の上まで彼が登ってきていることを自覚するのでした。
ストーカー事件
デート後、栄治と別れたくるみは帰り道のコンビニに合コンで爽子に絡んだ男がいることに気づきます。
男は以前爽子の家を特定しようとうろついていた前科があるため、くるみは一応栄治に連絡を取り近所で男を見かけたことを報告。その際、自分のことも心配してくれる栄治の優しさにきゅんとするくるみ。しかし、くるみは自分は大丈夫と言って電話を切ってしまいます。
栄治との通話後、くるみはしばらく向かいのファミレスで男の様子を探ることに。くるみは自分は男のターゲットではないという慢心から軽率にも窓側の席で向かいのコンビニを監視していましたが、栄治のことを考えてボーっとしている間に男を見逃してしまうと、いつの間にか男はくるみに気づいてファミレスに来店し隣に来ていました。
男は強引にくるみの隣に座ると、何と目的はくるみであると告白。また、男は合コンの際にくるみが爽子を守るために割り込んできたことを自分を奪い合おうと必死でアプローチしたと解釈しており、彼氏持ちの爽子から彼氏のいないくるみに鞍替えしたと言い、くるみは自分が男のターゲットと知り青褪めます。
男はくるみの前で爽子をビッチ扱いし栄治をチンピラと貶したため、くるみは恐怖心を抑えながらも反論。
しかし、男がくるみに迫ったところで助けに来てくれたのはやはり栄治でした。実は、栄治は以前男を送る際に学生証をコピーさせて男の個人情報を押さえており、今回は度が過ぎたため二度目はないと警告。また、警察が来るまで足を踏んで抑えながら熱々のドリアを食べさせるという拷問にかけるのでした。
その後、栄治は泣いているくるみに対し焦っていたため電話で「すぐ向かう」といいそびれたことを謝罪。対して、くるみは本当は来てほしかったけど「大丈夫」と言って栄治を試したことを打ち明け、人の気持ちを試そうとする自分の最低な行動を謝ると、次はちゃんと素直に「助けて」と言うと反省し涙。
素直になったくるみは本当は怖かったこと、今日は帰らないで欲しいと大泣きするのでした。
そんなくるみに対して栄治は「オレは呼ばれたと思って来たけどね」と全然平気な素振り。加えて、くるみの試しは下手くそであると言ってのけると、試そうが利用しようがそこはどうでもよく、くるみが一緒にいたいと思うなら帰らないと伝えます。
栄治の優しさに触れたくるみはようやく自分の気持ちに素直になれるのでした。
栄治からの告白
ストーカー撃退後、不安なくるみは栄治を家に招待することに。くるみの部屋は必要最小限のモノばかりでシンプルな配色。栄治が気になったのは、どう見てもくるみの趣味ではない人形ですが、人形はくるみの顔をイメージした爽子の手作りと聞かされます(卒業式の日に爽子が渡した人形)。
栄治が人形について訊ねると、くるみは笑いながら「ひどいでしょ!超いらない」と述べるものの、こうして大事に置いていることから栄治は素直ではないくるみの本心を察します。
くるみ曰く家に来るほどの友達はおらず、かと言って上っ面の友達を部屋に入れる気もなく、内面・趣味・好みを悟られたくないとのことで、これまでに部屋を訪れたのは爽子と栄治の二人のみ。
二人きりになったくるみは、栄治の好みや嫌いなものなど細かいことが気になると打ち明けます。一方で、栄治は意外にもくるみが自分に興味を持ってくれていることを知って少し照れ気味。
栄治は普段、誰に対しても意地悪いことを言って困らせたり傷つけたりする人ではなく、くるみの前でだけは気持ちがコントロールできなかったと言います。また、くるみと一緒にいる時はシンプルに楽しいと伝えます。
そして、くるみに向けて「オレ、梅すきだわ」と告白すると、くるみは驚いたように口を開けて硬直。くるみは会ったばかりなのにと戸惑いますが、栄治は今回の告白で答えを聞いて終わるつもりではなく、この告白が始まりの合図だと言います。
くるみは自分に好かれたら大変だと警告しますが、栄治は笑いながら困らせてほしいと答えるのでした。
くるみの懺悔
くるみの部屋に置いてあった中学の卒業アルバムに目を通すくるみと栄治。風早の写真を見つけて手が止まると、くるみは再び当時の自分の悪行を栄治に語ります。
もし、当時の自分のままだったらストーカー男に爽子の家を教えていたかもしれない。それくらい爽子が嫌いで最大の敵であり、自分から近づいて嫌がらせをしたと打ち明けると、同時に爽子が羨ましかったと告げます。
そして、当時の風早を好きだった気持ちが辛くて忘れたかった反面、忘れたくない思いもあってか夢に見るまで反芻したことを白状。自分だけの気持ちが形になるのは夢の中だけだと語ります。
くるみは今までこの後ろ暗い気持ちを隠していましたが一人で抱えるのが辛くて泣くこともあり、今回、初めて栄治に対して打ち明けると堰を切ったように泣いて謝罪してしまいます。
しかし、栄治はくるみの抱える後ろ暗い気持ちを聞いても彼女を嫌う事をせず、もう十分だから自分を許してやれと慰めます。また、もし自分で自分が許せなくてもオレが許してやる、オレは梅が正しいから好きなわけじゃないと言ってくるみに寄り添うのでした。
初めてのキス
ストーカー事件以来、未だに一人で外を歩くことに抵抗を覚えるくるみでしたが、この日、栄治は食材の買い出しに付き合うためにわざわざ家に足を運んでくれました。
買い物後、栄治が帰ろうとするとくるみは栄治が帰ることに困惑。一方で、栄治も段階的にくるみに慣れてもらおうと考えていたため、家に上げてもらえることに困惑。
くるみがご飯を手作りしてくれるというので、栄治は期待して待機しますが、待っている間寝落ち。しかし、くるみが栄治の肩を揺すって起こそうとすると、栄治は寝惚けているのかくるみに迫りキスを交わすのです。
一瞬時が止まりますが、栄治はふと我に返ると目の前で硬直するくるみを見て寝惚けて間違えたと狼狽えながら謝罪。一方で、くるみは「間違えた…?誰と~~~~」と号泣。栄治は慌てて痛恨のミスだと弁明しますが、くるみは「ミスってなに~~~」と更に泣き始めたため、収拾がつかなくなるのでした。
二人の初めてのキスは、まさかの栄治の失態に終わってしまいます。
気まずい関係
キス以来くるみは栄治を避けるようになりラインや電話も無視。数日間、栄治と連絡を取らない状態を続けていました。
一方で、自分ばかり栄治のことを考えてしまう悔しさから栄治にも自分のことを考えて欲しいと思い、爽子に栄治の動向を探るように頼み、爽子はくるみと栄治の窓口を務めることに。しかし、事情を聞いた栄治からも今後もくるみの状態を教えてほしいと頼まれると、ダブルスパイの立ち位置に奮起。
ある時、爽子から情報を得ている内にSNSで栄治について何かないか検索していたくるみは栄治の友達のSNSを発見。傷心中の栄治を慰める名目で彼らが近く飲み会を開き、その中にかつて栄治を振った女性がやってくることを知ったくるみは爽子にお願いして店を特定し潜入することになりました。
しかし、店に潜入し衝立を隔てた隣の席で聞き耳を立てていたくるみと爽子は栄治に見つかってしまうと、流れで同席することに。が、栄治がくるみのことを「従妹の友達」と紹介したことで、くるみは対抗心から以前の「くるみ」を演じて席にお邪魔することに。
その際、過去に栄治を振ったとされる幸と隣同士になると、くるみは自分と似た低身長の巻き毛という容姿から栄治がそういった趣向を持つと勘繰り、幸に対し「くるみ」として遠回しに嫌味な会話を仕掛けます。しかし、幸はくるみの嫌味な会話に気づかず全乗っかりするほど純粋な人間性を持っており、くるみが栄治を振ったことに対して斬り込んでも栄治が気まずくならないように全てカバーしてくれたと打ち明けたため、幸のヒロイン性と自分を比較し消沈。また、くるみは幸が自分が絶対に勝てないタイプ──爽子と同じ属性を持っていることを悲観し後ろ暗い気持ちに陥ります。
くるみは爽子と席を外すと、この気持ちを打ち明けるとともに、自分の嫌味・意地悪・対抗心で起こした気持ち悪い部分を栄治が好きになるわけはないとネガティブ思考になりますが、心配して追いかけてきた栄治が爽子とバトンタッチ。
栄治はくるみを連れて店の外に移動すると、まず毎日くるみのことを考えていたことを伝えた上でキスの件を謝罪。くるみは初めてのキスは雑に終わらせたくなかったという気持ちが強かったようで、やはり栄治が間違えてキスしたことに怒っていました。しかし、栄治はくるみが初めてなのは知っていたため本来はくるみの気持ちが100%自分に向いてからキスをしたかったと釈明すると、そういう意味で「間違えた」と言ってしまったと三度謝罪。
しかし、くるみが好きだからキスを交わしたのは間違いでないと告白します。
一方で、くるみはいずれ栄治は「いい子」を好きになる。自分は「いい子」とは真逆の悪役で、今日も栄治に黙って飲み会に潜入し覗き見していたことを悲観します。しかし、栄治は自虐的なくるみに対し「オレが思うより梅はオレが好きだと思って嬉しかった」とフォロー。
また、むしろ爽子に情報を流してくるみの反応を見て試していたのは自分の方だと打ち明けると、自分も好きな子には好かれたいし好きな子と付き合いたいと考えていると考えていたことを吐露するのでした。
爽子の後押し
栄治に連れられて席に戻されたくるみ。しかし、栄治とくるみの関係性が栄治の友人たちにバレたため、幸はくるみと席を代わって栄治の隣にしようとします。
しかし、くるみは栄治に好きと言われた恥ずかしさから意地を張ってしまうと、これまで誰かを傷つけることしかしてこなかった手前、幸の行為を断り席の譲り合いとなってドリンクを零してかけてしまう失態を犯すはめに。
くるみはすぐに気持ちを切り替えて幸の服を吹いて弁償代を差し出しますが、栄治に気まずさから金で解決するのは良くないと注意を受け心を見透かされてしまいます。しかし、ここでまたくるみの悪癖が暴走。くるみは意地悪心から皆の前で栄治にキスをされたと特大のカミングアウトという爆弾を投げつけると飲食代を置いて逃げるように店を出て行ってしまうのでした。
くるみを追いかけようとする栄治を引き止めたのは爽子。爽子は、くるみの「絶対に追いかけてこないで」という捨て台詞を鵜吞みにして栄治を引き止めると、飲食代を置いて自分がくるみを追いかける役を務めます。
爽子は夜道でくるみを捕まえますが、くるみが栄治が追いかけてくれなかったと悲観したため爽子は「いや、むっず」とくるみの難解さにツッコみ。その反面、仮に栄治が追いかけてきていたらまた意地悪なことを言ってしまったに違いないとして、本当はこれ以上栄治に嫌われることをしたくない──栄治のことを大好きになってしまったと爽子に思いの丈を打ち明けるのでした。
栄治のことを好きなのに意地悪なことばかりしてしまう。そのせいで、今回の飲み会でも自分から全部壊してしまったことを後悔していました。
これで栄治との関係が終わったと涙するくるみですが、爽子はようやくくるみから恋愛相談を受けたと感極まると、くるみから改めてこれまで一人で抱えていた悩みを聞いた上で「くるみはカンが悪い」と正面から指摘。爽子曰く、くるみのカンは体感で七割近く外れており、基本くるみは可愛いが本当にくるみが可愛いのは本人が可愛いを意識していない時であり、くるみの感覚は周囲と少しずれていると言います。
つまり、爽子が言いたいのはくるみがいろいろ考えている細かいことはそんなに問題ではないため、くるみが今大事にしているものを大事にすればいいというアドバイスでした。
爽子に気付かされるまでくるみの心の中はゴミでいっぱいでしたが、爽子に自分の大事にしたいものを考えていいと言われるとようやく一つの答えに辿り着きます。
爽子の後押しを受けたくるみは栄治に謝る決心をつけると、後程、爽子には結果はどうであれ話を聞いて欲しいとお願いし、爽子もくるみの話を聞くと約束し送り出すのでした。
胡桃沢梅と赤星栄治の交際
爽子の後押しを受けたくるみは栄治に電話を掛けて「今すぐ…会いにきてほしい」と連絡すると、自宅で栄治の到着を待ちます。
チャイムが鳴ると急いで玄関ドアを開けるくるみですが、栄治はストーカーの件があったため注意。しかし、くるみがポロリと涙を零したため栄治は慌てて怒ってるわけじゃないと弁明しますが、くるみは一先ず栄治を中に入れた後、これまでのこと全てに対し謝罪します。
謝りたいことが多くて謝りっぱなしのくるみですが、栄治は誰も気にしていないと言って謝罪を止めさせると、今回はちゃんとくるみの口から「来て」と連絡してくれて嬉しかったと伝えます。
くるみは自分が抱えるわだかまりを簡単に消してくれる栄治にさらに惹かれていきます。
二度目のキス
栄治のためにコーヒーを淹れるくるみ。部屋で並んで座る二人ですがくるみは中々本題を切り出せずにいました。
しかし、くるみが緊張して震えていると、栄治はくるみの手を取って「梅が眠くなるまでいつまでも待つよ」と寄り添います。また、今までのように素直じゃないことを言っても構わない──素直じゃないくるみのことも好きだと述べると、くるみの緊張が少し和らぎます。
栄治の言葉に甘えたくるみは彼に目をつぶって欲しいと頼むと、栄治は望まれるままに目を閉じて待つことに。くるみは恥じらいながらもゆっくりと栄治との距離を縮めていくと、直前で気合いが入り思わず目を閉じてしまいますが、逆に栄治はくるみの表情を見て見たくて入れ違いで目を開けてしまいます。
すると、くるみは再び目を開けてしまい栄治と目が合うことに。くるみは驚いて距離を取りますが、気を取り直してもう一度栄治に目を閉じさせて再挑戦。
今度は絶対に目を開けないことを約束させると、くるみは赤面しながらも「す・き」と告白しながら栄治に口づけするのでした。キスを交わす最中、両者は目を開けて目を合わせると、栄治が半ば押し倒すようにくるみにキスを返します。
またまた約束を破った栄治に「ずるい」と怒るくるみでしたが、栄治が「ちょうどいーでしょ?」と述べると、くるみは「わたしよりずるくてちょーどいい」と栄治の意見に賛同し笑顔になります。
この日、二人はコーヒーをおかわりしながら朝まで喋り明かすのでした。
二人の願い事
翌朝、コンビニに朝食を買い出しにいく二人。
その道すがら、手を繋ぐことに赤くなっているくるみに対し栄治はあるお願いをします。栄治の願いとは名前で呼ぶことであり、これまでくるみが「えーじ兄ちゃん」と呼んでいたため「兄ちゃん」を無くして「栄治」と名前だけで呼んで欲しいというものでした。
くるみは改めて「えーじ」と敬称を取って名前を口にすると、直前まで優位に立っていた栄治はくるみの可愛さに照れてしまいます。
一方で、くるみに何かして欲しいお願いはないか訊ねると、くるみは少し考えた上で「わたしのこと一生好きでいてほしいくらいかな」とさらりと口にします。栄治は笑って了承すると、そこらへんの男(ストーカーの男)より全然しつこいから大丈夫とくるみの不安を解消させてあげますが、くるみは「それ、一途って言うんだよ」と微笑むのでした。
なお、後にくるみは「えーじくん」呼びに定着しており、甘える時は「えーじぃ」と呼び捨てになるそうです。
交際の報告
くるみは栄治と付き合うことになったと爽子に報告すると、爽子は「よかった」と泣きながら祝福。くるみもつられて泣いてしまいます。
栄治と交際して一ヵ月経過してもくるみと爽子の関係性に変化はなく、相変わらず爽子の家に入り浸る生活を送っていましたが、栄治が泊まりにくると連絡を寄越せば爽子に「ちゃんと自分は可愛いか」などと確認を取るなど、今までのような後ろ暗さから解放されたドキドキな日々を過ごしています。
なお、爽子は恋するくるみの顔を間近で見ると可愛すぎて一瞬気を失う模様。
一方でくるみは栄治が家に泊まりにくることが決まると、部屋掃除に部屋着の準備に布団干しなど徹底して準備を済ませるものの、一人で待っているとドキドキして死にそうという理由から当日は爽子の家まで迎えに来てもらう始末。ドキドキしているくるみにキュンときた爽子は、くるみを落ち着かせるためにお茶を勧めてリラックスさせるのでした。
くるみと栄治のその後
爽子宅からくるみの家に移動する道中に銭湯に立ち寄る二人。
くるみは女風呂で偶然幸と再会すると飲み会の席の一件を謝罪。湯船につかりながら幸はくるみが去った後も栄治がくるみの惚気話をしていたことを打ち明けるほか、くるみは幸の恋愛事情を聞いて共感しすっかり意気投合。幸に栄治について相談した末、今夜覚悟を決めるのでした。
そして、くるみの部屋で栄治と二人きりになると、いよいよくるみは大人への階段に踏み込むべく勇気を出して服を脱ぎます。恥ずかしいため目を瞑って欲しいと言われた栄治はワクワクしながら待機しますが、次第にくるみのすすり泣く声が聞こえてきたため冷や汗。
罪悪感に駆られた栄治は途中で目を開けてくるみに服を着るように促すも、くるみが泣きながら「なぜ!?胸がないから!?胸がないからドキドキしないとでも!?」と反抗するため困惑。しかし、泣くほど自分のために頑張ってくれたくるみの心中を察すると、栄治はくるみを抱き締めけしかけてしまったことを謝罪し服を着させます。
くるみは自分が子供過ぎてがっかりさせたのではと落ち込みますが、栄治はくるみの手を自身の胸に宛ててドキドキしていることを伝えると、くるみはようやく栄治もドキドキしていたことを知ります。こうして、くるみの暴走を止めた栄治は一先ずコーヒーを淹れて落ち着かせると「梅、急ぐなよ。ちょっとずつでいーじゃん。梅もオレもちょっとずついろいろ慣れよ」と長い時間をかけて好きでいようと寄り添います。
加えて、栄治は以前くるみが『一生好きでいてほしい』と言ってくれたことが幸せだと告げると、くるみは嬉し涙。くるみは改めて栄治といると気持ちが軽くなっていくと自覚します。また、栄治と付き合ってからは殺風景だったくるみの部屋には少しずつ別の色の置物が増えていきました。
こうして、気持ちを伝えるのが苦手だったくるみは栄治との出会いを経て自分の意地悪で気持ち悪い部分や重たい部分を気にしなくなり、今ではドキドキやワクワクで困ってしまう楽しい時間を過ごせるようになったのです。
なお、くるみと栄治の様子を見ていた爽子は「このふたり結婚するっ!!」と内心ガッツポーズを決めています。
ラストでは、風早が札幌にやってきて爽子・風早・くるみ・栄治の四人でダブルデートするなど、くるみは完全に罪悪感から解放されて恋愛を楽しめるようになりました。
まとめ
「君に届け」本編ではライバルとして登場した胡桃沢梅ですが、受験中に爽子やそのグループに謝罪し和解しており、大学進学後には一緒の教育大学に通う爽子と親友になっていました。
スピンオフ作品のサブタイトル「運命の人」は、くるみにとって爽子であり、爽子と出会ったことで色々な悩みから解消されており、栄治という好きな人にも出会うことができました。
くるみ曰く運命の人は一人ではないそうで、同性は爽子、異性は栄治となりました。
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君に届け 番外編~運命の人~
作者:椎名軽穂 / 掲載:別冊マーガレット
高校を卒業した爽子たち。くるみの前に‘運命の人’が――!? 高校卒業後、同じ大学に進学したくるみと爽子。気乗りしない合コンに爽子を誘って参加したくるみですがそこでおかしな男に絡まれてしまいます。そんなピンチを救ってくれたのは「えーじお兄ちゃん」。どうやら爽子のイトコらしいのですが…。
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