漫画『るろうに剣心』に登場する駒形由美。
彼女はとある理由で志々雄一派に加わり志々雄真実にけして離れずに行動を共にしていますが、どういった理由で志々雄に身を捧げているのでしょうか。
今回は駒形由美の過去と志々雄との馴れ初め・最期についてご紹介したいと思います。
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駒形由美(こまがたゆみ)とは
引用元:和月伸宏『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』 出版:集英社
駒形由美とは、志々雄真実の身体の世話をする元遊郭一番の花魁だった女性。
志々雄に対して誠心誠意奉仕かつ敬愛しており、動機としては明治政府への憎悪から賛同し一派に加わっています。
加入前にはいろいろあったものの、今では志々雄は相思相愛となっています。
駒形由美の過去
駒形由美は、元々新吉原で一番の花魁で薩長閥の政府高官でさえ中々相手にできないほどの超人気者でした。
では、どうして花魁が志々雄と相思相愛の関係に至ったのでしょうか。
由美の出生
由美は元々の商家の娘です。
しかし、御一新前(明治維新の当時の呼称)に御用盗(※攘夷を大義名分として軍用金調達の名目で富裕な商家を襲う強盗行為)に両親兄弟から使用人まで丸ごと皆殺しにされたため、身の拠り所の無くなった由美は女衒に買われて吉原に売られてしまったのです。
犯人は分からなかったものの、唯一の手掛かりとして亡骸の全てが刀傷と同時に火傷も負っていたことだけが判明しています。
遊廓時代
明治十年晩秋、京都府新吉原に構える「赤猫楼」にて、由美は「華焔(はなほむら)」という源氏名で働いていました。
当時の階級は昼三(ちゅうさん)と呼ばれる遊女の最高位。「赤猫楼」で働いている間は、妹分であり新造の華火と、双子の禿のあかりとかがりを家族同様に可愛がっていました。
マリア=ルーズ号の事件を契機に政府には思うところがあり、薩長の政府高官でも相手にできないのではなく、単純に由美が自分たちを奴隷以下の「雌」として扱う政府を相手にしたくなく断っていたことが判明しました。
マリア=ルーズ号事件とは?
明治5年、横浜に停泊中のペルー船から一人の中国人苦力が脱走したことで、奴隷船としてのマリア=ルーズ号と虐待される苦力という実態が露見しました。
明治政府は裁判を通じて苦力を解放し世界に人道を尊重する国家としての面目を上げることになりますが、後日、ペルー側から日本にも遊廓における娼婦という名の奴隷が存在するという反撃があがり、その対応に苦慮した政府は「娼婦などは人にして人身の自由を奪われたもので、いわば牛馬に同じ。人が牛馬に代金を請求するわけにはいかないから無償で解放する」という人道からかけ離れた精神で解放令を出して辻褄を合わせたのです。
つまり、明治政府は娼婦を「人間」ではなく馬や牛と同等の存在だと定めたのです。
由美は辛酸を舐めつつも花魁であることには誇りを持っていましたが、明治政府が苦界に落ちても懸命に生きてきた娼婦たちを「女」ではなく「雌」と言い切ったことに腹を立て絶望しました。
そのため、遊郭では政府の相手を断っています。
志々雄真実との出会い
志々雄真実が遊郭を訪れたのは明治十年晩秋のことでした。
全国から集めた十本刀の終結の場として京都に留まる志々雄一派(志々雄、宗次郎、方治)は「赤猫楼」に投宿、そして「赤猫楼」で働く花魁・華焔こと駒形由美と出会いました。
初対面時には帯刀を止めない志々雄一派に「股の刀の方は自信ないのかい?」などと下品に煽り、変な格好をした客には変な格好で丁度いいという理由で両兵庫を崩し今のような着崩れした格好で接客。また、到底接客業とは思えないくだけた姐さん口調で捲し立てるなど、本編での志々雄との関係を連想できない態度でした。
加えて、志々雄は遊廓に投宿しながらも十本刀の到着まで華焔(由美)に仲居働き同様の身の回りの雑務しか頼まなかったため、いくら楼主に大金を積んでも宴会やお遊びで大金をばら撒いてくれなければ遊女の懐には一銭も入らないと意見するなど物怖じせず気が強い部分を見せています。
なお、自身の生い立ちについて志々雄に語ったことから、投宿直後には志々雄は自分が彼女の家族を殺害したことに気が付いていますが、由美はこの時点で知りません。
弘原海鮫兵団の事件
弘原海鮫兵団(わだつみこうへいだん)とは、大網元の倅が金をばら撒いて作った若い軍属たちの一団です。
西南の役の戦勝祝いに吉原の全楼を制覇する目的で志々雄一派が投宿する「赤猫楼」にもやってくると、兵団長・一ヶ瀬鮫男は華焔を指名。しかし、華焔(由美)が拒んだため客ではなく主人であれば断れなくなると考え華焔の身請けを半ば強行するのです。
一方で由美はマリア=ルーズ号事件を引きずっていたため、明治政府関係者は誰であろうとお断りであり、今回の身請け話も断るつもりでした。
また、元々相場の値で買われるつもりはなく、自身の身請け金は最低でも相場の四倍を出さなければ納得しないという気丈ぶり。なお、相場の四倍と定義しているのは彼女が家族同然に可愛がっている華火・あかり・かがりの三人の身請け金を含めているためでした。
志々雄に身請け金を明かした際には「一人ならなんとか這い上がれる身のくせに小娘三人引き上げようとして結局は苦界から抜け出せない。馬鹿か、お前」と核心を突かれており、その際に由美は吉原の遊女が短命な理由や華火たちが明治になって売られた可哀想な子であることを踏まえた上で、悪いのは「時代」なのか、それとも「明治政府」なのか、はたまた「幸せを願うコト」自体なのかと訴えますが、志々雄は悪いのは「弱さ」と更なる現実を突きつけました。
「所詮、この世は弱肉強食」
強ければ生き、弱ければ死ぬ──というのがこの世の摂理であり、今の国の在り方や由美たち遊女の境遇も「弱肉強食」の結果であると告げるのです。
由美が「赤猫楼」を留守にする最中で、弘原海鮫兵団が再び「赤猫楼」を訪れると、世話を任された華火が上着の釦を繕おうとした表紙に胸ポケットに入れられていた数枚の絵──「戦艦・煉獄」──を見てしまいます。
華火自身はただの大きな船という認識でしたが、弘原海鮫兵団にとって「煉獄」は最重要中核戦力であったため、華火から情報が漏洩する可能性を危惧し殺害を実行。また、西欧では日本文化流行で市松人形が人気を博していることから、華火とともに弘原海鮫兵団の世話を行っていた双子の禿は西欧人への手土産として生きたまま拉致されてしまうのです。
由美が「赤猫楼」へ戻った頃にはすでに華火は息絶えているばかりか、金銭さえ積めば思いのままに動く楼主の意向の下、華火の死は自殺として処理されるばかりか、双子の禿の捜索もされないままとなりました。
志々雄一派への加入
由美が助けを求めた相手は志々雄でした。
華火の死、そして双子の禿の誘拐に気づいた由美は弘原海鮫兵団と繋がる楼主を避けて「強い」と思われる志々雄に助けを懇願しますが、志々雄は断ります。華火が殺害されたのは「弱い」から──、双子が攫われたのは「弱い」から──、由美が泣いているのは「弱い」から──と突き放すと、ちょうど十本刀が京都に到着したため赤猫楼を発つことになりした。
「所詮、この世は弱肉強食」
しかし、志々雄の言葉を反芻する由美は亡くなった華火や誘拐された禿の笑顔を想起させると、今度は志々雄相手に「その強さを今夜一晩私に売って頂戴」と交渉に出ます。
売買事であれば善悪もないため志々雄も話を聞く姿勢を見せますが、肝心の志々雄は金も体も欲していないため由美が提示できる対価がありません。
そこで由美が考え至ったのは『自分の命』でした。
由美が提示した対価は「好きな時に好きなように自分の命を奪ってよい」という条件であり、極悪人である志々雄は死ねば地獄行きが決まっているため、由美は自分が一緒に地獄について行ってあげると自らの全てを売り出すのです。
由美の条件と心意気を買った志々雄は吉原一の花魁を侍らせて地獄行きも悪くないとして提案を受け入れると、弘原海鮫兵団二十艘二百人相手に集結させた十本刀の初陣を発令。十本刀は弘原海鮫兵団の雑兵を蹂躙し、志々雄は元凶である一ヶ瀬鮫男を終の秘剣・ 火産霊神 ( カグヅチ )の業火で屠るのでした。
その斬って焼く太刀筋を目の前で見た由美は、当時家族を殺害した御用盗が志々雄真実であることに気づきますが、復讐しても返り討ちに遭うのが目に見えているほか、志々雄が謳う「弱肉強食」に共感してしまった心根から復讐心はそこまで湧いてこず、仇討ちはしませんでした。
それどころか、今の境遇は本を正せば志々雄が原因であるためその始末をつけるために身請け金として三人分を要求するしたたかさを見せており、自ら志々雄についていく意志を見せるのでした。
一度全身を焼かれた志々雄は一瞬ですが地獄に立った感覚を覚えており、その時に寂しさは感じなかったものの一人で往くのはウンザリという思いから、自身が再びそのような局面に立った際には由美の命を頂くことを宣告。
その際、由美は志々雄の条件を受け入れますが、心中めいたつまらない死に方であれば断るとして「その時が来れば華やかに鮮やかに殺して欲しい」と返しました。
この由美の発言が志々雄に響いたらしく、志々雄はようやく源氏名ではなく本名を訊ねると、彼女の名前を聞くなり「俺から離れるなよ」と言い放ち接吻を交わすのでした。
これが志々雄との出会いと由美が志々雄の側を離れない経緯となります。
由美の旅立ち
志々雄と十本刀が弘原海鮫兵団を殲滅したことで、双子の禿は無事に取り戻されました。
その後、華焔(由美)が志々雄に相場の三倍の身請け金を要求した通り、志々雄は相場の三倍の金を支払うと、由美はその金で双子の禿を苦界から救い出し、華火の墓を建てるのでした。
通常、遊女が死ぬと遺体は菰に巻かれて三ノ輪の浄土宗浄閑寺(通称「投げ込み寺」)に運ばれた後に墓地の穴に投げ込まれて終いですが、由美は方治に金と手紙を託し、方治が代理人として寺の住職に金と手紙を渡して華火の弔いと禿の面倒を住職に頼みました。
由美自身は弔いに赴いていませんが、方治に託した際には「あたしより先に吉原を出ちまうなんて、姉と妹、順番が逆だよ」と涙で目を潤ませており、方治は住職に手渡すついでに華火の弔いに立ち会い、華火が人並みに経と線香をあげてもらえたことを後に彼女の姉女郎である由美に伝えています。
また、双子の禿については別れが辛くなると考えたのか、禿たちに別れの挨拶をしないまま由美は姿を晦ましました。
駒形由美の最期
比叡山にある志々雄のアジトでの最後の決闘にて、剣心は天翔龍閃を放ち志々雄真実に相当なダメージを与えますが、志々雄の苦しみ方が急変。
曰く、志々雄は全身火傷の後遺症で本来ならば15分間以上の戦闘ができない身体になっているとのことで、志々雄は天翔龍閃のダメージと自身の身体の後遺症による急激な体温上昇によって嘔吐しもがき苦しみ始めたのです。
そして、由美は剣心と志々雄の間に割って入ると「これ以上志々雄様を苦しめないで」と剣心に命乞いをしますが、剣心が刀を下げた刹那、志々雄は由美もろとも剣心を無限刃で貫き致命傷を与えるのでした。
その際、由美は左胸(心臓に近い位置)を無限刃で貫かれてしまったため、即死こそ免れたものの死に直結する致命傷を負ってしまいます。
愛の形
志々雄の不意打ちを受けた剣心は膝をつきつつも、その怒りは愛する女性を裏切ってまで勝利をもぎ取ろうとする志々雄の性根に対して向きましたが、志々雄曰くこれは「裏切り」ではなく、誰より駒形由美という人間を理解している志々雄なりの当然の行いでした。
由美はこれまで十本刀のように戦力や参謀として役に立てないことを歯痒く思っていましたが、今回志々雄の最大の目的の障壁となる緋村剣心を斃す一番大事な場面で志々雄の役に立てたことが「嬉しく」てたまりませんでした。
志々雄真実にとって「闘い」が全てであり、由美ができるのは身体の世話しかなかったものの、こうして自身の犠牲一つで緋村剣心に決定的な一打を与えることができたことに歓喜していたのです。
そのため、剣心の怒気とは裏腹に、志々雄は崩れゆく由美を抱き抱え、由美もまた幸せそうな表情を浮かべると「勝って下さいませ、志々雄様。由美は一足先に地獄でお待ちしております」と別れの言葉を交わしました。
また、方治が「最期の最期で幸せを手にしたか…」と述べた際に、剣心が「死ぬコトのどこに幸せがある」と嘆いていましたが、由美は死んで幸せを手にしたわけではなく志々雄についていくことが幸せであったと語られています。
志々雄が由美を殺した理由
過去篇で描かれた志々雄と由美の約束通り、志々雄はその時が来たため由美の命を奪いました。
志々雄は一度臨死体験で地獄を見ていますが、志々雄のいうその時というのはおそらく地獄に堕ちるような状況=死が迫るような窮地に陥った状況のことだと予想されます。そして、由美は志々雄との契約時に自身の命を支払っており、命を捧げる際にはつまらない死ではなく「その時が来れば華やかに鮮やかに殺して欲しい」と願っていました。
そのため、剣心に追い詰められた志々雄が逆転できる一手として由美の命が消費されたとあれば、由美自身も本望であり、志々雄もまた由美の抱く葛藤(志々雄の役に立ちたいという想い)を知った上で愛に応えたということだと思われます。
剣心にはわからない二人だけの愛の形がそこにはありました。
由美のその後
志々雄との死闘から一ヵ月後、警察に出頭した方治は獄中で自害しました。
その際、方治が見た今わの際の光景として地獄が描かれており、先に死亡した志々雄と由美が連れ添って方治を地獄で待っていました。
由美は約束通り先に地獄で志々雄を待っており、志々雄も約束通り吉原一の花魁を侍らせて地獄行きを実現。そして、志々雄は由美と方治を連れて閻魔相手に地獄の国盗りを目指すのでした。
まとめ
駒形由美の過去と最期のまとめ
- 駒形由美の過去
- 由美は商家の娘の出自
- 御一新前に御用盗に両親兄弟から使用人まで皆殺しにされた後、女衒に買われて吉原に売られてしまう
- 「赤猫楼」で新吉原一番の花魁となる
- 源氏名は「華焔(はなほむら)」、階級は昼三(遊女の最高位)
- マリア=ルーズ号事件をきっかけに明治政府を良く思っていない
- 妹分の華火、双子の禿のあかりとかがりを可愛がっていた
- 弘原海鮫兵団に華火を殺害され、双子の禿を誘拐される
- 金銭のやり取りで楼主が弘原海鮫兵団と結託したため、「赤猫楼」に投宿していた志々雄に助けを求める
- 由美は志々雄相手に商談を持ちかけると「好きな時に好きなように自分の命を奪ってよい」と命を代価に志々雄を一晩買う
- 地獄行きに付き合うと述べる由美の交渉を受け入れた志々雄は十本刀の初陣として弘原海鮫兵団を殲滅する
- 志々雄の太刀筋(斬って焼く)が家族を殺害した犯人の切り傷と一緒だったため、由美の家族を殺害した長州派維新志士が志々雄だと気付くものの、復讐はせず「弱肉強食」に共感し約束通り志々雄に命を捧げて一派に加わる
- 自身の生い立ちは本を正せば志々雄に責任があるとして相場の身請け金の三倍を請求し、その金で双子の禿を苦界から救い出し、浄閑寺の住職に禿の世話と華火の弔いをお願いして由美は吉原から姿を晦ます
- 駒形由美の最期
- 比叡山にある志々雄一派のアジトでの最終局面にて、志々雄が剣心に与えられた傷と後遺症の熱でもがき苦しめた際、由美は両者の間に割り込み戦いを止めようとする
- 志々雄は剣心が引き下がろうとした瞬間に由美ごと剣心を貫く
- 由美は左胸(心臓に近い位置)を無限刃で貫かれてしまうが、志々雄の最大の障壁となる剣心との戦いに貢献できたことを喜び、最期は志々雄の勝利を願いながら幸せそうに息を引き取る
- 死亡後、生前の約束通り地獄にて志々雄を待っており、志々雄と再会すると方治も必ず遅れてやってくると述べてを待っていた
- 方治合流後は同じく地獄に堕ちているだろう宇水を探しながら志々雄の地獄の国盗りに付き従う
志々雄一派のほとんどは維新政府に恨みを抱いている人物の集まりですが、由美は当時の女性を代表するような典型的な被害者でした。
また、由美の家族を殺害したのが当時長州派維新志士の影の人斬り役を務めていた志々雄であったことが判明しましたが、由美が新政府に拉致された妹分たちを取り返すために頼った相手が仇である志々雄だったり、志々雄の「弱肉強食」に共感し復讐しなかったなど過去篇では多くのことが明かされました。
過去篇を読んでからもう一度本編での由美の最期を見ると志々雄と由美の愛の形が理解できるのではないでしょうか。
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るろうに剣心 裏幕―炎を統べる― 作者:和月伸宏 |
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