2004年にフジテレビ系で放送されたドラマ『アットホーム・ダッド』。
リストラされたエリート広告マンが専業主夫となり、家事・育児と向き合うホームコメディは、亭主関白だった男が「女の仕事」と見下していた日常に放り込まれ、隣の先輩主夫や家族との関係のなかで価値観を揺さぶられていく物語。働き方や夫婦の役割を笑いにしつつ描いた、今見ても色あせない作品です。
今回はドラマ『アットホーム・ダッド』についてご紹介したいと思います。
阿部寛主演『アットホーム・ダッド』|作品概要・あらすじ・各話・最終回ネタバレ
| 放送期間 | 2004年4月13日〜6月29日 |
| 放送局 | 関西テレビ制作・フジテレビ系列 |
| 放送枠 | 火曜22時枠(22:00〜22:54) |
| 話数 | 全12話(最終回は拡大放送) |
| 脚本 | 尾崎将也、旺季志ずか |
| 演出 | 三宅喜重、塚本連平、二宮浩行 |
| 音楽 | 仲西匡 |
ドラマ『アットホーム・ダッド』は、「リストラされた男が専業主夫に」「そして男は、家庭に入る」といった導入が用いられたエリート広告マンが専業主夫に転身する姿を描いたホームドラマ。
主題歌は、Jackson vibe「朝焼けの旅路」。
あらすじ
大手広告会社のCMディレクター・山村和之(阿部寛)は、「男は仕事、女は家庭」という考えの持ち主。妻・美紀(篠原涼子)と娘・理絵(安藤咲良)と暮らし、念願のマイホームも手に入れ、順風満帆に見えた矢先、会社を辞めざるを得なくなる。生活のため美紀が以前の職場へ復帰し、和之が専業主夫を引き受けることになる。隣家にはすでに主夫生活を送る杉尾優介(宮迫博之)がおり、和之は反発しつつも家事のイロハを教わりながら、家族のあり方を考え直していく──。
キャスト / 登場人物
■山村和之(阿部寛)
大手広告会社のCMディレクター。仕事と肩書きに誇りを持ち、「男は外で稼ぎ、家のことは妻がやる」という考えが染みついた典型的な亭主関白だった。念願のマイホームを手に入れた直後に職を失い、妻の復職に伴って専業主夫の道を歩むことになる。家事の失敗を繰り返しつつ、隣の優介に教わり、娘の世話を通じて家族の重みを実感していく。
■山村美紀(篠原涼子)
和之の妻で、理絵の母親。かつて出版社で働いていた経験があり、和之の失業をきっかけに職場へ戻る。家計を担う立場になり、仕事と家庭の両立に向き合いながら、変化していく夫との関係を見つめ直す。正社員として張り切る場面もあれば、夫婦の意思疎通のずれに悩む場面もある。
■山村理絵(安藤咲良)
和之と美紀の娘。幼い視点から両親の逆転した生活を受け止め、父親が家にいる日常を自然に受け入れる。熱を出して看病される回など、和之が「仕事より先に守るもの」を意識するきっかけにもなる。上海赴任の話が持ち上がったときには、家族の行く末を素直な言葉で映し出す。
■杉尾優介(宮迫博之)
山村家の隣に住む専業主夫。妻が外で働き、自分が家事・育児を担う生活をすでに定着させている。和之からは当初「情けない」と見下されるが、ゴミ出しから料理、近所づきあいまで実務で先輩の顔を見せる。取材を受けるなど主夫としての自覚も強く、和之の臨時意識との温度差が会話の妙になる。
■杉尾笙子(中島知子)
優介の妻で、人材派遣会社の社長。会社を切り盛りし、家庭では優介に家事を任せる形が成り立っている。山村家の役割逆転を、特別視しすぎず日常として受け止める大人の距離感がある。スペシャルでは出産に関わる展開も。美紀の復職後の心情とも、働く妻同士として響き合う。
■大沢健児(永井大)
和之や優介と関わるスポーツクラブのインストラクター。主夫仲間の輪や近所の集まりに顔を出し、和之の喜怒哀楽を横から見るポジションが多い。上海の話が周囲に広まるきっかけになるなど、情報の伝播役としても機能する。
■岩崎真理江(川島なお美)
近所の主婦仲間の一人。スイーツや井戸端的な会話の中心にいて、和之の主夫生活や海外赴任の噂をいち早く反応する。和之が周囲の目を気にする要因にもなる。
■倉本冴子(滝沢沙織)
ひかり幼稚園の教員。スポーツクラブ講師の大沢健児と交際しているが、園の保護者に人気の健児との関係が仕事に響かないよう、交際を公にしていない。二人で会う場は主に冴子の自宅で、教材づくりを健児に手伝わせることもある。
■上田聡(中村繁之)
美紀が復職した出版社の編集長。仕事を任せる上司として美紀を支え、職場での信頼関係が描かれる。車で送り届けたりと、仕事以外の接点も物語に登場し、和之が主夫として家にいる一方で、美紀の社会での居場所を示す存在でもある。
各話の展開
■第1話「男子厨房に入る 専業主夫誕生」
CMディレクターの山村和之は、念願のマイホームを手に入れ、妻・美紀と娘・理絵との生活に満足していた。しかし、会社を辞めることになり、美紀が以前の職場へ復帰。当面は和之が家を守る逆転生活が始まる。隣には妻が働き、夫が主夫をしている杉尾優介がおり、和之は最初その生き方を見下していた。が、引っ越しや近所付き合いのなかで杉尾一家と関わり、不本意ながら「専業主夫」の入口に立つ。亭主関白だった男が、初めて家庭の内側に追い込まれる回である。
■第2話「主夫は一日にして成らず」
主夫初日の和之は、ゴミ出しや理絵の身支度で大混乱。リボン一つで戸惑い、幼稚園バスに遅れそうになる。洗濯機や認印など、これまで意識していなかった家事の連続にへこたれる。また、優介から助言を受けるが、プライドが邪魔をして素直に学べない。就職活動用のパソコン画面をにらみつつも、目の前の家事は進まない。美紀の不在が、どれだけ日常を支えていたかを思い知る導入の失敗談となる。
■第3話「主夫の心妻知らず」
家事は一向に上達せず、皿洗いでズボンをびしょ濡れにし、不精ひげも伸び放題。美紀はそんな和之に不満を募らせる。和之の側も、妻の働き方や外出に神経を尖らせ、疑心暗鬼になる。一方、優介は笙子の遅い帰宅に付き合い、夫婦のすれ違いを抱える。もんじゃ焼きの提案など、コミュニケーションの試みも描かれる。慣れない役割のなかで、夫婦がお互いの「見えない苦労」に気づけないもどかしさがテーマの回となる。
■第4話「老いては主夫に従え」
幼稚園の手作り袋づくりで、和之はミシンと悪戦苦闘する。「手作りじゃなきゃダメ」という要求に、元エリートの手が追いつかない。そこへ美紀の母親が訪れ、居座られることへの警戒も生まれる。くわえて、理絵が幼稚園で問題を起こし、親としての対応も試される。主夫業に育児・親族関係が重なり、和之の負担は増す一方だった。家庭内の「当たり前」が、実は高度なスキルの積み重ねだと痛感させられる。
■第5話「産みの母より育ての主夫」
隣の笙子が妊娠し、仕事との両立に悩む。産休が取りにくい現実のなか、優介に頼らざるを得ない状況が生まれる。優介も手放しでは喜べず、主夫としての責任がさらに重くなる。和之は二人の様子を見て、自分の立場や夫婦の役割を重ねて考える。出産・育児を前にした主夫家庭の不安と、支える側の覚悟が描かれる。
■第6話「苦しいときの主夫頼み」
幼稚園の劇「シンデレラ」の台本にクレームがつき、和之が書き直しを引き受ける羽目になる。現場の事情や保護者の意見に振り回されつつ、父親として関与する。美紀も仕事と家庭のあいだで悩み、「今のシンデレラは王子も仕事も欲しい」といった価値観の変化が匂う。和之が「頼られる主夫」になりつつある一方、夫婦の理想像のズレも見え始める。
■第7話「出る主夫は打たれる」
再就職が決まらず憂鬱な和之。優介が主夫として取材を受ける場で写真を勧められるが、「臨時のつもり」と断る。その延長で「家事は会社の仕事に比べれば大したことない」と口にし、近所の主婦・真理江の反感を買う。町内のたこ焼き屋台当番を押し付けられ、笙子と険悪な優介と組んで特訓する羽目に。美紀の正社員化の話も出て、稼ぎと発言権をめぐる夫婦げんかに発展する。主夫を軽く見たツケが回ってくる回となる。
■第8話「主夫老い易く 学成り難し」
理絵が「お受験したい」と言い出し、和之と美紀は驚く。真理江の息子が受験すると聞いたのがきっかけだった。当初は公立で十分と考えていた和之も、周囲の話に揺れ、塾や模擬面接の世界に足を踏み入れる。カッコ悪いところを見せたくないと、優介と面接練習まで始める。教育熱と見栄、親子の本当の希望が交錯するなかで、主夫として子どもの進路に向き合う重さが描かれる。
■第9話「金の切れ目が主夫の切れ目」
値段を見ずに買い物する和之に、優介は呆れる。家計簿もつけず、「仕事が決まれば金の心配はなくなる」と楽観的だ。理絵の誕生日に高価なおもちゃを安請け合いし、家計の現実が突きつけてくる。美紀には在宅でできるバイトの話も舞い込む。稼ぎがない立場での支出感覚と、夫婦の金銭感覚のズレがテーマ。主夫継続の前提にある「お金」の問題が正面から扱われる。
■第10話「主夫に暇なし」
家事に慣れた優介がスーパーのパートを始め、和之も誘われる。時間を持て余し、自分で使える金が欲しい気持ちはあるが、スーパーで働く自分には違和感がある。美紀の出勤日に理絵を優介に預けると、理絵が姿を消す騒ぎに。慣れたつもりの育児・預かりの油断が、一気に緊張を生む。暇と責任、外で働くことへの抵抗が同時に問われる回となる。
■第11話「良薬 主夫に苦し」
和之が以前手がけたCMが大きな広告賞を受賞する。授賞パーティーには業界関係者が集まり、再就職の光が見える。近所でも話題になり、普段とは違う扱いを受ける。一方で正式な仕事はすぐには決まらず、主夫業との二足のわらじが続く。優介は認められた和之を羨み、和之自身も「戻るべき男」としての焦りと、今の生活のあいだで揺れる。能力の再評価が、かえって心を複雑にする展開となる。
最終回
■第12話「立つ主夫、後を濁す」
最終回は、山村和之(阿部寛)が専業主夫として積み重ねてきた日常と、「再び働く自分」への欲求が正面からぶつかる回となります。
物語は、和之のもとに突然舞い込んだ大きな仕事の話から動き出すことに。内容は上海への長期赴任を伴うCM制作で、期間はおよそ五年。待遇も仕事の規模も申し分なく、リストラ以降ずっと「臨時」だと思い込んできた主夫生活から抜け出す、まさに本命の案件でした。面接先では担当者や上層部までが頭を下げるほどの熱の入れようで、和之は会社を出たあと思わずガッツポーズをし、その足でスポーツクラブへ向かい、隣の主夫・杉尾優介(宮迫博之)と友人の大沢健児(永井大)に喜びを伝えます。
一方で、妻の美紀(篠原涼子)はちょうど正社員として本格的に働き始めた時期だったため、張り切る美紀の顔を見ると、和之は上海の話を切り出せないでいました。自分が復帰すれば美紀は仕事を手放さざるを得ない可能性が高く、理絵の学校や友人関係も変わることに。家庭の都合と自分の欲求が交差する中で、和之は沈黙。しかし、話は本人の意思とは別に広がり、健児をきっかけに近所の主婦たちへ伝わると、ついには美紀の耳にも入ってしまいます。美紀は、和之が大きな決断を一人で抱え込んだことへの不満を示すように「まず自分に相談してほしかった」と責めますが、和之が本当にやりたい仕事に巡り合えた事実自体は祝福。自分のキャリアや理絵の生活を思い、悩んだ末に、家族で上海へ渡る方向にも気持ちを傾けます。
上海行きが現実味を帯びた際、和之は美紀、理絵と三人で思い出の海へ出かけます。そこは、かつての二人にとって特別な場所であり、理絵にとっても父と母の空気を感じられる時間に。貝殻を家族に見立てて海へ流す理絵の無邪気な仕草や、何気ない三人の会話の中で、和之の優先順位が静かに入れ替わることに。和之は、大きな案件も、海外での肩書きも、今目の前にある美紀と理絵の笑顔には勝てない──そう自覚しました。
同時に和之は、美紀が本当は仕事を続けたいという気持ちを抱えていることにも向き合います。リストラ直後は生活のための復職だった彼女が、今は自らの意思で働き、正社員として前を向いている──、その意欲を犠牲にしてまで自分だけが「男として戻る」選択をするのか──、そういった考えが巡り、和之は上海赴任を断る決意を固めます。熟考の末、和之は東京で次の仕事が見つかるまで主夫を続けるという選択をしました。
その後、和之は真理江に呼び出されると、三人で岩崎家へ。真理江は主婦仲間や子供たちを集め山村家への送別会をサプライズしていました。
乾杯の音頭を取る優介を遮るように、その場で婚約発表し共働きを宣言する健児と冴子。送別会あらため婚約発表の場となり、改めて優介が乾杯の音頭を取る言い出しづらい雰囲気の中、美紀から上海出張取り止めの話を切り出すことに。こうして、送別会あらため婚約発表は、山村家の残留祝いおよび婚約発表の場──、結果として「和之の主夫続行」を祝す場に変わり、優介たちと笑顔で乾杯する山村家でした。
和之の主夫続行後、再び主夫として忙しない日々を送る和之。朝食中に携帯を見る美紀を注意すると、理絵から「なんかパパがママみたい」と言われる始末。一方で、和之は就職活動を平行しており面接の予定も。美紀からは髭をそることを忘れないでと忠告を受ける和之。隣の家では、順調にお腹が大きくなっている笙子と、自身のホームページに心配主夫からの相談が送られてきて得意げな優介。カリスマ主夫と囃し立てられ調子にのる優介ですが、笙子が自宅で子供を出産したいと切り出すと噴き出してしまいます。
婚約後、朝食を作る健児とダメな部分は指摘しつつ褒める冴子。お互いにご飯を食べさせ合うラブラブぶりを描きます。真理江は翼の受験まで五カ月をきっていることから、意気込み十分で、翼も気合が入ることに。美紀と笙子は途中まで一緒に出社すると、その道すがら、出産や正社員の話で互いを支え合います。
そして、和之と優介は、理絵と亮太を送る傍らで、和之は杉尾家の自宅出産を心配。優介は和之が心配しても仕方ないと返しつつも、糠漬けの作り方の話題にシフトし、和之も真剣に糠漬けの話題を受け入れます。それぐらいできないと主夫とは言えない。優介の謳い文句に和之は返事をしつつも、「こんな生活いつまで続くのかな」と悪態づきますが、その表情はどこか清々しいもの。優介に「主夫を選んだくせに」と言われると、笑顔で「失敗したよ」と返すのでした。
その後、送迎バスがやってきたため、走り出す和之たち。その姿をもって物語は終了しました。
まとめ
以上、ドラマ『アットホーム・ダッド』の紹介でした。
ドラマ『アットホーム・ダッド』は、リストラをきっかけに役割が逆転した夫婦を通して、「誰が稼ぐか」「誰が家を守るか」だけではない家族の形を描いたホームコメディです。阿部寛演じる山村和之の不器用な成長と、宮迫博之演じる杉尾優介の先輩主夫としての存在感が噛み合い、笑える失敗話と、静かな決断の両方が印象深い作品でした。
最終回で和之が大きな仕事を前に上海出張を断る展開は、「復帰=正解」と単純化しない着地になっており、主夫を臨時と見ていた男が、家族の笑顔を基準に決断する──、その過程が1話から丁寧に作り込まれていました。
2004年当時の空気を感じつつ、共働きや役割分担を考える今の視聴者にも届きやすい一本ではないでしょうか。
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ドラマ「アットホーム・ダッド」 | |












